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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
七章『終末論・救世機関』

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さて、そろそろ解決編といこうじゃないか


「ふむふむ、『説明会のお知らせ』ね。一応、話をする意思はあるってことか」


 レンリは自室で届けられた招待状の中身を確認していました。

 彼女は知りませんが、シモンに届けられたのと同じ物です。

 さして長い文章でもありません。ほんの十数秒で表面を読み終え、裏面に記載されていた場所と時間についても目を通しました。



「どんな術式が使われてたんだろ? 機密保持には便利そうだけど、手元に残ってないんじゃ分析もできないしなぁ。あとで聞いたら教えてくれないかな?」



 どういう技術が使われているのかは不明ですが、表裏の確認が済んだ瞬間には手元から手紙が消えてなくなっていました。手紙にあった「読み終わった時点で消滅する」というのは冗談ではなかったようです。



「時間は今日の正午からか。ずいぶん急な話だけど、まあ色々聞きたいこともあるし……それに、ちょっと文句も言いたいし」



 説明会とやらの時間は本日正午から。

 今からだと、もう二時間そこそこしかありません。

 場所は市内の高級料理店の個室を借り切って行うようです。


 急ぎの話ではありますが、マイペースなレンリも流石に昨日あんなことがあった直後に迷宮に入ったり研究に没頭したりという気にはなれません。幸い大きな怪我はありませんでしたが、ルカやルグも戦いで疲れが溜まっているはずです。



「そうそう、ルカ君達のところにも同じ物が届いてるってことでいいのかな?」


『ええ、そっちは今ちょうど別の我が届けたわ』



 レンリに手紙を届けた配達人はヒナでした。

 シモン宛の物だけは途中で会ったライムに託しましたが、それ以外のルカやルグの自宅にはそれぞれ分身を向かわせたようです。



「一人で大丈夫だった? ほら、何かトラブルとか」


『ええ、大丈夫。理由は後で一緒にってことでまだ我も聞かされてないんだけど、あるじさまが「もう大丈夫だから」って』


「ふぅん?」



 昨日までの様子を鑑みればヒナが一人で行動することには問題がありそうですが、それはもう解決した、らしい。理由が分からないままでは一抹の不安も残りますが、ヒナの能力は一晩明けても強まったまま。もう首輪やらロープやらで抑えることは物理的に不可能ですし、今は信じるしかありません。


 結局、謎はほとんど謎のまま。

 考えを進めようにも必要な材料が足りぬまま。

 ここに来てまた更に分からないことが増えました。


 だがしかし。

 いえ、だからこそ。


「さて、そろそろ解決編といこうじゃないか」







 ◆◆◆







『皆様、ようこそいらっしゃいました。お待ちしていましたよ』


 正午ちょうど。学都の北側にある高級料理店『黄金柳』の個室には、現在学都にいる迷宮の秘密を知る者達が勢揃いしていました。


 まずは迷宮そのものの化身であるウル、ゴゴ、ヒナ。

 以前から秘密の一部を知っていたシモンとライム。

 最近になって知ったばかりのレンリ、ルグ、ルカ。



「ああ、私のことはお構いなく。一人でお酒飲んでるから。いや、昨日も昼から飲んで夕方には寝ちゃったから何も見れず終いでさ。そんなに凄いなら是非とも描いてみたかったんだけど」



 そして、オマケとしてエルフの姉のほうであるタイムも付いてきていましたが、こちらは純粋に人のお金で飲み食いするためだけに来たようです。一応、迷宮の秘密の一端を知っているメンバーには入るらしいので律儀にも招待状を送られたようなのですが、真面目な話にはあまり興味がないのでしょう。


 個室の大テーブルには豪勢な料理や飲み物がずらりと並んでいます。

本来は高級店らしく給仕係やソムリエが食事中に客の周りに控えているのですが、密談が終わるまでは店員も入ってこないようにと事前に何かしらの指示をしておいたようです。



『さて、それでは何からお話しましょうか? なんでも遠慮なく聞いてくださいね。それとも、先に乾杯からしたほうがよろしいですか? お店の方にお願いして年代物ビンテージのワインを出してもらったんですよ』



 もちろん、集まった面々には聞きたいことが山ほどあります。

 昨日の怪物について。その目的や生態など。


 ウルやヒナが急激にパワーアップした理由。また、基本的に人間を無視していた怪物が、ウルやヒナにだけ積極的に攻撃したのは何故か。


 ヒナが「もう大丈夫」になった理由。


 そもそも、どうして神様がここにいるのか。


 細かく挙げていけばキリがありませんが、主な疑問点としてはこの辺りでしょうか。少なくとも、これらの疑問が解消されるまでは楽しい食事会とはいきません。



「では、俺からいいだろうか? 単刀直入に聞くが、あれと同じ生き物がまた学都や他の場所を襲う可能性はあるのだろうか?」



 最初に挙手をして尋ねたのはシモン。

 彼にはこの街を守る職務上の責任があります。防衛上の観点からしても、昨日と同じ事態が再度起こり得るのかは真っ先に確認すべき事項です。


 そして、その問いに対する答えは以下のようなものでした。



『この街で同じようなことが起こる可能性は……一応、ありますね。ただし、他の土地で同じようになることはまずあり得ませんし、この土地でも確実にそうなるとは限りません。現れるにしても、次に出るのは何十年とか何百年後かもしれません』


「ふむ。楽観はできぬが、今日明日にでもまたすぐに再発することはない、という理解で構わぬだろうか?」


『ええ。そもそも、アレの正体というのがですね――――』




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