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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
七章『終末論・救世機関』

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アレとかコレとかソレとか


 いざという時の最終手段だった師匠達への連絡が出来ない。

 更に、ウルが行方不明になっている。

 そして、目の前には依然増殖と再生を繰り返す怪物が。

 戦力としてライムが加わったのだけは好材料ですが、全体としてはあまり良い状況とは言えなさそうです。



「ウルのことも心配だが、今は後回しにせざるを得ぬか……」



 シモンとしても本当は即座にウルの捜索に協力したいところではありますが、必死に怪物の増殖を押しとどめている戦線を長く離れるわけにはいきません。

 幼い子供が行方不明となれば、本来、騎士団としては多くの人員を割いて捜索や聞き込みに当たるべきですが、ウルは普通の子供ではありません。迷宮達とのテレパシーでも連絡が取れないということは、ただ単純にいなくなっただけではないと考えるべきでしょう。

 ウル達はほとんど不死身のような体質ですし、どこか人目につかない場所で怪我や病気で動けなくなっている、という心配がない点だけはまだしもの救いかもしれませんが。



「まあ、さっさと目の前のコレ……今更だが、アレとかコレとかソレだと言いづらいな……とにかく、さっさと片付ければウルを探せるようにもなるであろう」


「ん。早めに終わらせる」


「そういえば、訓練や試合以外でお前と共闘するのは意外と珍しいな。ここは一つ、俺達のチームワークを見せてやるとするか」


「うん」



 ライム一人でも千人力。

 戦力的にはシモンも同等。

 しかし、息の合った二人のチームワークは単純な足し算にとどまりません。それぞれが単独で戦った時の何倍、何十倍、何百倍もの強さを得たと言っても過言ではないでしょう。



「いくぞ、ライム。手始めにあの一番デカい奴からだ!」


「ん、アレをやる!」


「アレ……って、え、本当にアレやるのか?」


「やる」



 三十体近い怪物の中でも一番大きい個体。

 直径にして100mに迫るであろう不気味な球体に、しかし、二人は怯むことなく駆け寄ると大きく跳躍。シモンは片手に長剣を、もう片方の手に短剣を握りしめた二刀流。ライムは左右の拳に強力な雷撃魔法を溜めています。更に二人とも空中で全身を勢いよく回転させ……。



「「喰らえ!」」



 元々が千人力の使い手が二人で二千人力。

 それぞれが両手を使うから二千の倍で四千。

 そこにいつもの二倍のジャンプが加わり八千!

 更に、いつもの三倍の回転が加われば八千の三倍で二万四千!!

 ……という、まったく全然これっぽっちも非の打ちどころのないパーフェクトな戦闘理論により、実に二万四千人力もの威力の攻撃が『ソレ』の巨体を大きく破壊しました。



「……アレ、絶対おかしいと思ってたのだがな。師匠リサがそう言っていたから場の勢いでやってしまったが、なんで本当に威力が増すのだ? 自分でやっておいてなんだが、いくらなんでも物理的におかしくないか?」


「大丈夫、結果オーライ」



 偉大な勇者の教えに間違いなどあろうはずがありません。

 事実、一際巨大だった『ソレ』の肉体はその九割以上が消し飛び、僅かに残った箇所も雷撃の影響か黒焦げの状態で細かく痙攣しています。


 とはいえ、これまでの戦いで『ソレ』が異常な再生能力を持つことは判明済み。

 一見、瀕死にしか見えないほどのダメージを負っていても、完全に倒しきる前に気を抜いたら折角与えたダメージが無意味になってしまいかねません。元が大きい個体だっただけあって、僅かに残った肉片もちょっとした小屋くらいの大きさは残っています。これを再生されるより前に細かくバラバラにするだけでも一仕事でしょう。



「おっと、早くトドメを刺さねば。コレが何なのかは分らんが、どうやら、かなり損傷した状態からでも再生されかね――――は?」



 トドメを刺そうとしたシモンの手が止まりました。

 ついでにライムやルグや、周囲で戦っていた他の人々の手も止まりました。

 緊迫した戦いの最中にそのような隙を晒すなど普通は考えられませんが、今回に関しては彼らがそうなってしまったのも無理はありません。何故なら……。



『ぷはぁ、やっと出られたの! なんか、今すごくビリビリしたけど……あっ、シモンさん、ナイスタイミングなの。囚われのヒロインを助けるヒーローっぽく我を助けて欲しいのよ! なるべく急ぎで!』



 いったい、何がどうなってそうなったのやら。なんと、瀕死の怪生物の肉片から行方不明だったはずのお子様ウルがにょきにょきと生えてきたのです。



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