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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
七章『終末論・救世機関』

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ノープロブレム&ニュープロブレム


 第三迷宮の試練は実に順調に進んでいました。



【朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足なのなーんだ?】


【リンゴが五個あります。四人で均等に分けるにはどうすればいいでしょう?】


【木の上に鳥が三羽います。猟師がそのうち一羽を弓で撃ったら残りは何羽?】


【いま何問目?】



 エトセトラ、エトセトラ……。

 こんな具合の問題が刻まれた石板が一つの島に一つ設置されているわけですが、ほとんどは子供向けのナゾナゾのような内容。

 まだ迷宮の最初のほうなので難易度が低く、またランダムで変わる問題の引きが良いという幸運もあったのでしょうが、なんと今日一日で九問目まで連続正解。一度の失敗もなし。いくら全100問とはいえ、このままでは二週間足らずで制覇されてしまいかねません。



『なんで、こんなにポンポン答えられるのよ。一問くらい間違ってくれてもいいじゃないの……』



 島と島の移動に関しては船で海を渡るという、それだけ聞けばとても大変そうなものですが、ヒナの能力で海流を操作しているので何もせずとも安全かつスムーズに、そしてかなりのスピードでなされています。

 移動中も特に大きな振動や音は出ないので乗っていても分かりにくいのですが、普通の人が陸の上を全力疾走するくらいの速さは軽く出ていました。

 

 とはいえ、移動の補助に関してはヒナも納得して手伝っているのです。

 問題は……なるべく試練を長引かせたいヒナにとっての問題という意味合いですが……あまりにも簡単に、まったく悩む素振りすらなく一瞬で問題を解かれてしまうこと。

 つい最近まで年単位で暇を持て余していたヒナは、趣味と実益を兼ねて攻略者向けの問題を頑張って考えていたのですが、こうも簡単に解かれてしまっては張り合いがないというものです。



「いや、なんでって言われてもね。どれもどこかで見たような問題ばっかりだし」


『な、なんですって……!?』



 ヒナの敗因は、自分一人の力で頑張って問題を考えたという、まさにその点。

 研究開発の分野には「車輪の再発明」という言葉があります。

 すでに世間に知られている知識や技術の存在を把握していないがために、多大なコストや時間を投じて同様のモノを一から発明してしまうこと。当然、そうして作られた新しい「車輪」など人々には見向きもされませんし、投じたコストを回収することなど夢のまた夢。


 今回のヒナの問題は、実際に何か形のある品物を開発したわけではありませんが、まあ似たようなものでしょう。頑張って頭を使って考えた結果、本人はオリジナルのつもりでもどこかで見たような問題ばかりになってしまった、と。

 クイズやナゾナゾに限りませんが、オリジナリティとは一人で考えたからというだけで勝手に発揮されるものではありません。多くの場合、むしろ関連分野の先行研究や作品を知り尽くしてこそ独自色が出てくるのです。



「多分、そこそこ品揃えの良い本屋さんに行けば、こういう問題を集めた本とか置いてると思うよ。今度一緒に行く?」


『え、ええ、お願いするわ……』



 レンリ達にしてみれば試練が簡単なのに越したことはないのですが、見るからに落ち込んでいるヒナが哀れに思えてきたしまったようです。なるべく長く一緒にいるために試練を長引かせたいという気持ちも、まあ見ていれば分かります。

 そのせいか、ついつい問題の難度を上げる手助けを申し出てしまいました。

 これで今後はもう少しくらい歯応えが出てくることでしょう。








 ◆◆◆







「一日で九問か。なかなか順調なんじゃないかな」


『でも、明日からはこうは行かないわよ。たくさん本を読んで、今夜のうちに新しい問題をいっぱい考えるもの。だから、ね』


「はいはい、分かってるよ」



 迷宮から外に出てきたのは、まだ日が沈みきっていない夕方。

 もうちょっと頑張れば今日中にもう二問か三問くらいはクリアできそうでしたが、問題の作り直しをする前に進めてしまうのもヒナに悪いかと、早めに切り上げてきたのです。それに、この時間であればまだ営業している書店もあるでしょう。



『じゃあ、いつものコレを』



 街に出る時には首輪にリード。

 皆、もうすっかり慣れたものです。

 職務質問にも慣れ、というかパトロールをしている兵士達のほうが慣れてしまい、あるいはシモンが何かしらの指示をしたか、兵士間での情報共有などもあったのかもしれません。最近ではもう「そういうもの」としてスルーされることが多くなってきました。



「それじゃあ、本屋に行こうか。ついでに私も何か――」



 そうして一行は大型書店がある商業区に足を向けようとしたのですが、



「あれ……なにか、聞こえ……ない?」


「ん? そういえば、なんだか街が騒がしいような」



 その前に街の西側、『新市街計画』の予定地の辺りを起点とした、騒動の気配を感じました。現在地である街の中心部は一見平穏ですが、よくよく見れば兵隊達が大急ぎで西へと走っていく姿もそこかしこに。

 市壁で隠れていて見えませんが、何かが燃えていると思しき煙も立ち上っていました。更には木材や石材を力任せに砕くような破砕音まで。どうやら、ただの火事や事故ではなさそうです。



「ただの火事とも違うみたいだし、どうしたんだろう?」


『ええ、何かしら……って、ウルお姉ちゃん!?』









◆◆◆◆◆◆




《おまけのタピオカチャレンジ》


挿絵(By みてみん)


◆「タピオカチャレンジ」を知らない方のために説明しておきますと、最近ツイッターで流行ってるネタでして、要するに手を使わずにカップを支えてタピオカドリンクを飲めるかどうかという

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