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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
七章『終末論・救世機関』

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レッツゴー宝島


 ぷかぷか、と。

 ゆらゆら、と。

 『デストロイ号』は波を切って進みます。


 前へ、前へと。

 上へ、上へと。

 空高く飛ぶように。


 まあもっとも、当のレンリ達の視点からしてみれば、天に向けて方向転換した前と後とで大した違いがあるわけでもありません。見えている景色こそ変わりましたが、体感的には先程までの(現在は背後で巨大な壁のように見えている)海と同じです。



「遠目では気付かなかったけど、この辺りは結構流れが速いみたいだ」



 あえてさっきまでとの違いを挙げるとすれば、海流の流れの速さでしょうか。ルカが漕ぐまでもなく、『デストロイ号』はどんどんと先へ流されていきます。

 当面の目標である小島に向かうには好都合ですし、体力の温存にもなるので今は特に問題というほどではないのですが、今後、目指す方向と海流とが食い違った際には何かしらの対策を考える必要があるでしょう。


 また、注意すべき現象はそれだけではありません。

 ほんの十数mほど離れた海面をよく観察すると、流れの向きがまったくの真逆。自然界の海でもちょっと距離を離れると海流の向きが違ってくることはままありますが、これほどの短距離間で極端に違うことは稀。

 これは恐らく、何かしらの予定変更やアクシデントで引き返す時のために用意されたルートということなのでしょう。今の流れに強引に逆らって進もうと思ったら大変ですが、これなら横に少し移動すれば楽に引き返すことができそうです。


 とはいえ、じっくりと海面を観察しなければ流れの向きの違いには気付けません。レンリ達が気付けたのも、偶然自分達の船と逆方向に流れる流木を見つけたからこそ。

 上手く海流を利用すれば流れに任せて楽に進めるかもしれませんが、うっかり気を抜くと変な流れに乗って知らぬ間に逆戻りしたり、迷宮内で迷子になったりする危険も考えられます。

 現状、魔物の脅威は『デストロイ号』の威力で排除できていますが、それでも迷宮は迷宮。油断をすれば手痛いしっぺ返し喰うことになりかねません……が、まあ油断しないという点に関しては、ルカの臆病さやルグの生真面目さも役に立ちます。


 そのまま周囲の警戒を続けながら流れに任せて進み、方向転換から十分足らずで目的地の小島に無事辿り着きました。



「おお、これはなんというか……すごいね!」


「ああ。これを島って言っていいのか分からないけどな」


「なんだか、面白い、形……だね」



 休憩すべく上陸した小島は、見事なまで球形をしていました。

 円形ではなく文字通りの球形。球の直径は大きく見積もって50mほど。土や砂で出来た巨大なボールに、草や木や『モノリス』が生えているのです。


 海上においては海面が常に『下』として重力の向きが変わるのと同じように、この島では足を着いた地面が『下』になり、球体のどこにいてもいきなり海に落ちることはなさそうです。

迷宮前半の島々と違って、これは間違いなく迷宮ならではの特殊な地形。ルグが「島」と言っていいのか迷うのも当然というものでしょう。



「よいしょ……っと」


「船は砂浜に置いておけば大丈夫かな。うん、その辺りにお願い」



 周囲の海流が島の一部に接しており、そこから上陸できました。元が釣り船の『デストロイ号』には錨などないので、流されないようにルカが持ち上げて砂浜に置いてあります。



「じゃあ、とりあえずは島の探検と、それで問題なければ食事休憩といこうか」



 小さい島にしては不自然なほど木々が繁っていますし、そもそも球形では反対側に目線が届きません。流石の『デストロイ号』も陸上では性能を発揮できないので、付近に魔物がいるかどうかの確認は大切です。

 いかにも迷宮らしい迷宮だった第二迷宮と違って、「浅い」や「深い」というような区別はしにくいものの、現在いる辺りはまだまだ迷宮の低層か精々中層に差し掛かった程度。そこまで強い魔物がいるとは思えませんが、壁や床で区切られていないだけに強い魔物が迷宮の「浅い」場所までやって来る可能性も一応ないではないのです。



「ついでに果物か何か探そうか。肉ばっかりだとバランスが悪いしね」


「やれやれ、相変わらずレンは食い物のことばっかだな」


「そりゃあそうさ。だって私だよ?」


「なるほど。すごい説得力だ」



 まあ強力な魔物がいる可能性もゼロではないというだけで、ほとんど無視できる程度のもの。三人も用心はしていますが然程の緊張感はありません。

 それに魔物がいたらいたで、別に馬鹿正直に戦う必要はないのです。

 魔物除けの効果もある『モノリス』の近くまで逃げてくれば安全ですし、なんなら魔物が入ってこられない安全圏内からルカが石ころでも投げれば一方的に倒すこともできるでしょう。最悪でも『モノリス』の転移機能を使って逃げることはできます。


 だから島内の探索もどちらかというと食料調達が主。

 第三迷宮全体の傾向なのでしょう。

 ここまで来る以前の島々と同じように、この小島にも食べられそうな果実がそこかしこに生っています。あまりにフルーツが豊富すぎて『知恵の木の実』が混ざっていても見分けるのが大変ですが、全部食べてしまえば同じこと。レンリなら島中の果物をぺろりと平らげてしまいそうです。


 それに、時には食料以外の嬉しい物が見つかることもあります。



「おや、宝箱があるね」


第三(ここ)に来てからは初めてか。珍しいな」



 迷宮といえば宝箱。

 宝箱といえば迷宮。

 迷宮内では濃密な魔力が凝集して現実に存在する物質として具現化し、地面からにょきにょき生えてくることがあるのです(そう、たとえば旬のタケノコのように!)。食料の豊富さに反比例するかのように宝箱を見ることが少ない第三迷宮ですが、このように宝物がまったくないわけではありません。

 冒険者の中には運良く高価な武具や魔法薬、金銀財宝を得て一攫千金を手にした者もいます。もちろん、ゴミ同然のガラクタや金銭的価値のないジョークアイテムを引き当てるほうが確率的には遥かに大きいのですが。

 特にこの神造迷宮では、創造主の趣味なのか『伝説の魚屋にしか抜けない出刃包丁』や『材料を放り込むだけで自動的に微妙な味の料理が出来る大鍋』のような謎のジョークアイテムが多く出現します。ちなみに前者の包丁はずいぶん前にルカが手に入れた品ですが、実際には誰にでも普通に使えました。


 まあ、そんな事情はレンリ達も分かっているので今更過度の期待はしませんが、それでも宝箱を開ける瞬間というのは多少なりともワクワクするものです。


 役に立つ物が入っていれば良し。

 役に立たなくても、皆で笑えるような物ならそれはそれで良し。

 最初からそう割り切っていれば、何が出ても落胆せずにいられます。



「鍵はかかってない、と。さて何が入っているのかな?」



 さて、そうして開けた宝箱の中身はというと……。



『ぐうぐう、すやすや、ZZZ…………おや、どこかで見たような皆さんなのです。ええと、おはようございます?』


「ああうん、おはようモモ君。元気そうで何よりだよ」



 なんと、以前に会った桃色髪の幼女が入っていたのです。



そういえば少し前に読者の皆さんに伺った件ですが、何人かの方にご回答頂いた結果、どうやらレンリはちゃんと頭が良い風に見えているらしいと分かって安心しました。頭は良いけど色々残念なうちの子を今後ともよろしくお願いします。

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