表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
388/1048

好きだから


「お前が好きだ」


 ルグは、はっきりと告げました。



「俺はルカのことが好きだ」


「え、な……っ!?」



 聞き違えようもない真正面からの告白。けれどルカとしては、正直、嬉しさを感じるというよりも、あまりにも急なことで混乱するばかり。



「ああ、駄目だな。謝りに来たのにこれじゃ順番が違う」



 彼もその戸惑いを察したのでしょう。

 そもそも、ルカを探していた目的は彼女に謝るため。

 ルグとしても気持ちが先走ってしまい、上手く言葉が出てこないようです。彼も、慣れないことで緊張があるのかもしれません。


 

「えっと……最近、どうしてた?」


「皆と、遊びにいったり……楽しかった、けど」


「そっか。こっちもそこそこ楽しかった」


「そう……なんだ」



 話題を変えてみるも、互いによそよそしさが隠しきれていません。

 相手がいなくても楽しんでいたという言葉も、ともすれば相手がいなくても問題なかったという風にも解釈できてしまいそうですが……、



「でも、『そこそこ』じゃ駄目なんだ。これじゃ足りない」


「足りない……って?」



 確かにルカがいなくても、レンリや他の皆と過ごしていても『そこそこ』楽しかった。けれどそれは、相手がいなくても構わないなどという意味では断じてありません。 



「ルカがいないと、何をしていても、美味しい物を食べても、本当に心から楽しめないんだ。レンや皆にはなんだか悪い気もするけど」



 この数日、ルグの頭の中には常にルカのことがあり、そのせいで何をしていても心から楽しむことが出来ていませんでした。


 彼女を傷付けてしまった罪悪感ゆえ?

 たしかに、そういう理由もないとは言えません。

 だけど、決してそれだけではなく……。



「離れてみて、今会って、やっと分かった。これが『好き』ってことなんだな」



 好きだから。



「俺を好きになってくれて、ありがとう」



 特別な人だから。



「それと、本当にごめん。ごめんなさい。お前に酷いことを言った。あれじゃ怒られて当然だ。許せなくても仕方ないと思う。でも……」



 一緒にいたい。

 すぐ近くにいて欲しい。



「それでも俺を許してくれるなら、どうか俺とずっと一緒にいて欲しい」



 不器用な、けれど彼らしい真っ直ぐな想い。何度も失敗して、大きく遠回りをしたけれど、ルグはようやくこの答えに辿り着いたのです。



「わたし、も……っ」



 ルカは、彼女自身も気付かない間に目から涙を零していました。

 悲しいから泣いているのではありません。

 嬉しいから。

 好きだから。

 心の中で静かに燻っていた怒りも今や消え、あるのは暖かい愛しさばかり。



「好き……大好き……っ!」



 想いが通じた嬉しさゆえか、感極まったルカは彼を思い切り抱き締めて――――、

 


















「ぐえ」


 ルカは、カエルが潰れたような音を聞きました。

 はて、今は真冬だけどこんな時期に冬眠していないカエルがいるのだろうか?

 それに、なんだかやけに音が近かったような……と不思議に思ったのは一瞬のこと。



「ル、ルグくん……?」


「……ぐぅ」



 ほんの一瞬とはいえ、手加減を忘れたルカが思い切り抱き締めたら、ルグの身体はひとたまりもありません。息はしているので一応死んではいないようですが、白目をむいて泡を吹いています。どうやら完全に失神しているようです。



「ル、ルグくん……しっかりして! 気をたしかに……っ」



 つい数秒前までのロマンチックな雰囲気はどこへやら。気絶した彼をお姫様だっこの形で抱えたルカは、大慌てで医者を探して夜の街を走り回る羽目になったのでした。


 めでたくもあり、めでたくもなし。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ