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聖剣談義


「聖剣って造れるものなの?」


「いや、それが分からないんだよ。困ったことに」


 ルグの質問を受けてレンリは困った風に笑いました。

 努力を重ねてある程度近付くことはできたとしても、本当に道がそこまで続いている保証はないのです。

 まあ、研究の副産物として魔剣製造のノウハウや諸々の有用な知識などは増えましたし、何も悪いことばかりではありませんが。



「ところで君達、聖剣と魔剣って何が違うのか知ってるかい?」


「う、ううん……知らない、けど?」



 まず第一に、使用できる魔法の種類に制限がある魔剣と違って、使い手たる勇者がイメージ出来るほぼありとあらゆる魔法の発動が可能である点。魔力効率や操作精度一つ取っても、既存の魔剣や魔杖とは桁違いの性能を誇ります。


 そして、剣とは言っても形状が一定ではない点。

 世間に知られる聖剣のイメージは、この特性が特に有名でしょう。

 持ち主の意のままに自在に体積や重量を増減させ、瞬く間にどんな形状にも変形。更には、例え初めて使用する武器に変化させたとしても、触れた瞬間に使い方を完璧に把握し達人以上の技量を発揮できるのです。


 更には、自在に出したり消したりもでき、特に下準備なども不要な点。ただでさえ極めて丈夫なのに、仮に破損しても使い手さえ無事であれば無限に代わりを出せるのです。

 更に更に、同時に数百以上も出現させることが可能な点。本来の担い手である勇者以外には無条件で使いこなすことはできませんが、仮に軍勢の全てに装備させたら、それだけで最強の軍団が出来上がるでしょう。

 聖剣自体が半独立した自我を有しており、安全装置として機能したり、武器・兵器の知識を取り入れて自己進化をする点も挙げられます。



「他にも細かい違いは色々あるけど、聖剣ってのはそんな凄まじいシロモノなのさ。私の造る魔剣なんて比べるのすらおこがましいよ」



 自分で比べ物にすらならないと断言しているにも関わらず、レンリの表情はどこか嬉しそうです。世の様々な分野のマニアにはよくあることですが、例え自分の手に入らない名品であれ、そのスペックについて語るだけで楽しいのでしょう。






「実を言うと、この間の剣もその人造聖剣の試作品でね」


「ああ、だからか。どうりで似てると思った」


「おや? 『似てる』ということは、ルー君も本物の聖剣を見たことがあるのかい?」


「うん。俺がまだ三歳かそこらくらいの頃に、住んでた村が多頭竜ヒュドラに襲われてさ、その時に勇者さんに助けてもらったんだ」



 十数年前、召喚された勇者が各地を巡っていた頃に、ルグは勇者の聖剣によって命を救われたことがあったのです。その衝撃的な体験は忘れようはずがありません。



「じゃあ、もしかしたら私の爺様とも会ったことがあるかもしれないね。うちの爺様は勇者殿のお付きをしていたんだよ」


「そういえば、勇者さんを迎えに来た人達の中に一人だけ浮いてる爺さんがいた気がする」


「ああ、多分それだよ。人の縁というのは面白いものだね」



 どうやら、レンリとルグには意外な縁があったようです。



「そういえば、ルー君は私に聞きたいことがあるとか言っていなかったかい?」


「ああ、大丈夫。あの時のレンの剣のことを知りたかっただけだし」



 そして、ルグが抱いていた疑問も既に解決していました。



「最初はてっきり、レンも勇者なのかもって思ったんだけどさ」


「ははは、それは光栄だ。まあ、本物の勇者殿や聖剣にはまるで及ばない紛い物だけどね」



 「紛い物」と謙遜してはいますが、レンリはかなりご機嫌です。

 本物を知る人物に似ていると言われたのが嬉しいのでしょう。



「うん、言われてみればそれもそうか。よく考えたら、そんなに似てない気もしてきた」


「おいおい、いくら本当のことでも、そうはっきり言わないでくれたまえ」



 ルグの素直な意見にレンリを苦笑を返します。

 未熟なのは元より百も承知なので、仕方が無いと感じる部分も多いようですが……、



「それによく考えたら勇者さんのほうが、ずっと美人で優しくて胸もデカかったし……うん、やっぱり全然似てないな!」


「おいおい、いくら本当のことでも、そうはっきり言わないでくれたまえ!?」



 こう何度も念入りに否定されると、いくらレンリでもそれなりに傷付くようです。


 

「まあ気にするなって。勇者さんほど綺麗な人なんて他にいるわけないんだからさ。レンもそこそこ可愛いと思うよ?」


「そうかい、そりゃどうも。君もなんだか変な方向にこじらせてるなぁ……」







 ◆◆◆







「そういえば」


 聖剣や勇者云々の話題が一段落したところで、レンリはおとなしくお茶を飲んでいたルカに話を振りました。



「この間、ルカ君が食べた『知恵の木の実』だけど、あれは結局どういう効果があるのか分かったのかい?」


「え……ううん、わからない……けど?」



 迷宮を出て二日経ちますが、結局あの時の実の効果は不明のままです。

 ルカ自身も、あの一件はほとんど忘れかけていたのですが、



「そうか、だったらこれから調べにいかないかい? この後、まだ時間はあるかな?」


「う、うん……大丈夫、だよ……?」



 ルカの疑問は「一体どうやって調べるのか」というものでしょう。

 世間的にはそれなりに有名な方法があるのですが、これまで神造迷宮に関心を持っていなかった彼女が知らなくても無理はありません。



「この間、聖杖の入口あたりから本棚が沢山あるのが見えたろう? あの大図書館にいる『司書』に調べてもらうのさ」



聖剣の詳しいスペックは前作をご参照ください。

なお、武器として使用される機会は滅多にない模様。

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