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二日酔いの朝には

ちょっと短め


 そして翌朝……いえ、もう日もすっかり昇って昼近くなった頃。

 流石に昨日の今日で全快とはいきませんが、珍しく朝寝坊した甲斐もあり、ルグの体調もかなりマシになっていました。


 

「あ、おはよう……大丈夫?」


「ああ、おはよう。だいぶマシになった。まだ少し頭痛いけど」



 屋敷の厨房ではルカが一人で動き回っていました。他に人の気配はなし。どうやら二人以外の皆は既に出かけたか屋敷内の他の場所にいるのでしょう。



「朝ご飯……食べられる、かな?」


「悪い、あんまり食欲ない……」



 昨日の夕食は結局全部吐き出してしまいましたし、それ以前にちゃんとした食事を摂ったのは昨日の昼。彼の身体はエネルギーを欲しているはずですが、それはそれとして胃腸はまだ本調子ではなさそうです。

 こういう時に無理に食事をしても具合を悪くするばかり。

 ルグも水だけで済ませるつもりで、食事をする気分ではなかったのですが、



「あの、ね……お粥なら、食べられる……かな、って」



 しかし、厨房の様子を見るに、ルカは彼のために朝食の準備をしていたようです。

 そうなると、ルグとしても無碍にはできません。



「無理そうなら……食べなくても、いい……けど」


「ああ、いや、貰う。いただきます」



 もう皿に盛るだけで出せるようにしてあったようで、ルグが食堂の席に着くと同時に湯気を立てるスープ皿が運ばれてきました。

 お粥というとコメや麦をそのまま用いた種類が多いのですが、ルカが今回用意したのは千切ったパンをスープでトロトロになるまで煮込んだパン粥。料理屋などではあまり目にしないメニューですが、赤ん坊の離乳食や病人食としては一般的ですし、消化に良く喉を通りやすいので今のルグでも食べ易いでしょう。



「お? ……美味い」


「そ、そう……? ほっ……よかった」



 最初の一口を口に運ぶまでルグには匙が妙に重く感じられていましたが、二口目は普段通りに、三口目以降は匙に羽根でも生えたかのように軽々と粥を掬い出しました。

 パン粥のベースになっているのは他の皆の朝食用だったトマト味の野菜スープ。

 スープ自体は昨晩のうちにリンが仕込んでおいた物で、ルカは細かくしたパンを加えて煮ただけですが、この場合は下手に手を加えないのが正解でしょう。元々のトマトの酸味が煮溶けたパンのとろみと甘みでまろやかになり、食欲がなくてもスルスルと胃に落ちていきます。


 

「……全部食べてしまった」



 ルグとしては半分も食べられるか不安だったのに、食べ進めるごとに食欲がみるみる回復し、結局は全部綺麗に平らげてしまいました。

 つい先程までの不調はどこへやら。二日酔いの頭痛も意識しなければ分からないくらいに治まっており、鉛のように重かった気分もいつの間にか上向いています。



「ご馳走さま。ええと、その、美味かったよ、ありがと」


「えへへ、お粗末さま……でしたっ」



 残さず食べてもらえたのが余程嬉しかったのでしょう。彼が食べる様子を眺めていただけなのに、ルカもいつになく上機嫌で、ニコニコと笑みを浮かべていました。



日常回(?)はとりあえず今回で一区切り。

次回からは本格的に迷宮都市行きの話を進めていきます。

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