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ルカと儲け話


「ど、どうし……よう……?」


 レンリ達と別れた後、帰路に着いたルカはとても困っていました。

 何しろ、元々彼女には冒険者として活動するつもりなど全くなかったのです。


 冒険者として課される義務を果たさなければ、せっかく見つけた共同住宅アパートメントに住めなくなってしまうので講習には出ましたが、そんな義務なんてそうそうあるものではありません。

 当分の間は部屋にこもって、内職でもしながら細々暮らせればそれでいいと思っていたのですが、



『そうだね、専属で護衛をしてくれるなら日当は金貨一枚……いや二枚出そう。なに、今すぐに返事を聞かせてくれとは言わないから、ゆっくり考えて決めたまえよ』



 先程、別れ際にレンリが護衛の報酬として提示した金額が、かなり良かったのです。経済状況に不安のあるルカとしては、かなり魅力を感じました。


 金貨二枚といえば、一般的な労働者の十日分程度の稼ぎにも匹敵します。

 実力と実績を併せ持った一流の冒険者であればもっと稼ぐこともありますが、まだ一度も依頼を受けていない新人に払う額としては極めて破格です。

 迷宮なんて休まず潜るものではありませんから、単純に毎日金貨二枚の稼ぎが安定して得られるとは限りませんが、月に二、三回も護衛をすればかなり生活は楽になるでしょう。

 他の兄弟も(主に非合法な)仕事を探しているはずですが、まだ人の伝手も土地勘もない学都アカデミアで一から稼ごうとしたら、安定収入なんて望むべくもありません。



 しかし、当然のことながらリスクもあります。

 昨日から丸一日身近で接しても気付かれませんでしたが、今後何かの拍子にレンリ達にルカが件の強盗の一味であることを気付かれないとも限りません。もし当局に通報されでもしたら大変です。


 総合的に判断すれば、ハイリスクハイリターン。

 迷宮内で例の『知恵の木の実』やお宝を入手する可能性を考慮すれば、リターンは更に大きくなるかもしれませんが、決定打になるほどではありません。


 結局、ルカ一人では答えを出せず、家族に相談してから判断することにしました。







 ◆◆◆







「へえ、レンちゃんの護衛ね。いいじゃないか!」


「ルカ、止めときなさい! そのレンリってあの時の子でしょ? なんとなくだけど、ロクなことにならない気がするわ」


「別に、ルカ姉の好きなほうにすればいいんじゃない?」



 帰宅したルカが夕食の席で相談すると、そんな返事が返ってきました。

 ラックは賛成、リンは反対、レイルは中立を表明しています。



「あ、お金は……一日、金貨二枚くれる、って」


「へえ! それは気前のいい話だね!」


「一日二枚!? それって騙されてるんじゃ……いや、でもギルドを通せば報酬の支払いで不正はできないし……いや、でも流石に……」


「ルカ姉、貰える物は貰っておいたほうがいいと思うよ」



 報酬の話をしたら賛成が二人、保留が一人になりました。

 やはり高額の報酬は魅力的なようです。


 ちなみに今日の彼らの食事は、市場の店でタダ同然で貰ってきたクズ野菜や肉の端切れで作ったスープだけ。これでも食べられるだけマシですが、食べ盛りの若者としては、もっと腹に溜まる物が食べたいところでしょう。



「そ、そういえば……鹿のお肉、おいしかった、よ」


「ああ、狩りでもしたのかい。そりゃ、良かった」



 正確にはルカはお相伴に預かっただけですが、剣角鹿ソードエルクのお肉は実に食べ応えがありました。しかも、迷宮で狩った獲物なので当然お値段無料です。

 ルカ的にはグロテスクな解体過程が問題ですが、護衛の仕事を請ければ今後は迷宮内で食料を得て持ち帰り、食費を浮かすことができるかもしれません。



「そ、そうね……とりあえず一度だけお試しで請けてみて、問題なさそうなら続ければいいんじゃない?」


「う、うん……じゃあ、そうする、ね」



 最終的には反対派だったリンも消極的賛成に回り、ルカは護衛依頼を請けることに決めました。




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