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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
五章『奇々怪々怪奇紀行』
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休みの終わり:今後の課題と目標について


 そして、年が明けました。


 休暇とは名ばかりで、普段と変わらぬ、あるいは普段以上に忙しなく動いていた者。

 逆に、ここぞとばかりに遊び、怠け、しっかりと英気を養った者。

 その過ごし方は各々違えど、時間は誰にとっても等しく流れます。


 慣れ親しんだ故郷への名残はあれど、もしくは旅先への新鮮な興味は未だ尽きずとも、いつまでも居残るわけにはいきません。

 冬の休みはもうお仕舞い。

 そろそろ、学都での日常に帰る頃合でしょう。







 ◆◆◆







「まあ、帰って少ししたら、今度は迷宮都市に出かけるのだがな」


「ん、楽しみ」


 首都からの帰りの馬車内で、シモンとライムはお茶を楽しみながら寛いでいました。

 王族専用の馬車というだけあって車内は広々としており、保存用の魔法道具によって軽食や飲み物の類も完備。年始の帰省ラッシュでぎゅうぎゅう詰めの、一般の長距離馬車とは比べ物にならないほど快適な環境です。



 サプライズと言うには大掛かり過ぎる武術大会を終えた後、シモンは当初の帰郷の理由である年始の行事に出席し、連日開催される宴席や茶会に顔を出し……と、大会の疲れを癒す間もなく忙しく過ごしていました。

 スケジュール間に僅かに空いた時間も、大会後にそのまま王宮敷地内の山で山篭りを始めてしまったライムやガルド、その他少なくない数の大会参加者達と合流して一緒に修行をしていたので、こうしてゆっくり過ごすのは本当に久しぶりです。



「とはいえ、あれはあれで充実していたと言うべきか」



 二人とも肉体的には非常に疲れていましたが、精神的にはそれほど消耗していない、むしろ心地良い充実感すら覚えていました。


 勿論、大会での敗北が悔しくないわけではありませんが、その経験を上手くモチベーションへと繋げられたおかげでしょうか。「ああしていれば勝てた」とか「こうすれば負けなかった」とか、そんな言い訳のしようもない、する気にもなれない完敗だったのも今後の為にはかえって良かったのかもしれない……かどうなのかは、これからの彼ら次第ではありますが。


 学都での迷宮探索や日々の鍛錬に手を抜いていたつもりはありませんでしたが、それでも知らず知らずの内に疎かになっていた部分や偏っていた部分、稽古の内容が惰性的になっていた面もあったのでしょう。

 今回の負けやその後の修行は彼らにとって良い刺激になったようです。

 自らを見つめ直したことで、いくつもの目標や課題が生まれました。


 特に大きな目標としては、ガルドへのお返し……恩返しでしょうか。

 あの自由な気風の豪傑が来年の大会に出場してくれるとは限りませんが、それがどこであれ次に会った時には今回と逆の結果にしてみせる。それこそが彼への最大のお礼と言えるでしょう。無論、簡単ではありませんが。



「よし、帰ったら早速組み手でもするか?」


「うん。負けたほうが何かおごり」


「うむ、望むところだ」



 強くなるための方法は無数にありますが、近い実力の好敵手と本気で競い合うほど効果的な手段はなかなかないでしょう。すぐ近くに格好の修行相手がいるのだから、それを活かさない手はありません。


 こうして、なんとも忙しく殺伐とした、されど当の本人達にとっては非常に充実した冬の休みは終わりを告げました。



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