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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
五章『奇々怪々怪奇紀行』

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秘密の作戦会議


 大陸横断鉄道の食堂車は料理が美味いことで評判です。

 大陸各地で停車する度に各地の新鮮な食材を頻繁に補充し、それを腕の良い料理人達が最新鋭の調理設備で仕上げるのだから、何を頼んでもまず外れがありません。


 春頃にレンリ達が乗った『グランニュート号』の食事はとても素晴らしいものでしたが、今回の帰省旅行で乗っている、この『フライングゴリラ号』の提供する料理も決してそれに劣るものではないでしょう。

 特に、レンリに「チーズは飲み物」とまで言わしめた、大きなチーズ塊を火で炙って溶かしたものを肉や野菜やパンに絡めて食べる料理は絶品でした。

 料理人の腕はもちろんとして、主役となるチーズの質が相当に良かったのでしょう。周囲のテーブルを見渡せば、同じ種類のチーズを肴に酒類を楽しんでいる乗客も多く見られました。普段はそれほどお酒を嗜まないレンリも、釣られて赤ワインを一本頼んでしまったほどです。



『我にも一口貰えませんか?』


「お、イケる口だね。ほら」



 体質的にはアルコールを摂取しても全く問題ないのですが、現在の容姿の関係上、ゴゴは堂々と飲酒ができません。なので、堂々とではなくこっそりと、ワインとチーズの組み合わせを堪能していました。普段は良識ある彼女も、こと飲食の分野に関しては自分に甘い不良幼女になってしまうようです。今は旅行中ゆえの高揚も幾分あるでしょうか。



「キミらもどうだい?」


『お酒って初めて飲むの。どれどれ……うぇ!? あんまり美味しくないのよ……』


「……ん。わたしも、お酒は……あんまり」


「俺は酒はいいや。背が伸びなくなる」



 他の三人も勧められましたが、ウルとルカはお酒の味自体が苦手なために一口ずつのみ。ルグは、アルコールは成長に悪影響を及ぼすから、という理由でチーズを肴に牛乳を飲んでいました。




「ふぅ、食べた食べた」


「うん……おなか、いっぱい」



 最後に、食後のデザートとしてアイスクリームを添えたアップルパイを、五人で三ホールも食べて周囲を驚かせ(誰がどれだけ食べたかの内訳は語らぬが華でしょう)、楽しい夕食の時間はお開きと相成りました。






 ◆◆◆








「じゃあ、今夜は頑張りたまえ」


「せ、せっかく……忘れてた、のに」


 さっきまでは食事に集中することで意識を逸らしていた、なるべく考えないことで問題の先送りを図っていたルカですが、とうとう就寝の時間がやってきてしまいました。レンリは、もはや面白がる姿勢を隠そうともしていません。



「おやおや、ルカ君。そんなに慌ててどうしたのかな? 別に、これまでだって近くで寝るくらい何度もあったじゃあないかね」


「それは……そう、だけど……そうじゃなくて……」



 迷宮内で何日も過ごすとなると野営は当たり前。

 ルカがルグのすぐ近くで眠ることなど、これまでにも何度もありました。だから、今更意識するようなことではない……とはいきません。

 これまで、迷宮内での休息の際にはレンリや同行したライム達が常に一緒で、二人きりということはありませんでした。そもそも地面にゴロ寝が基本で、寝具といえば毛布や寝袋程度しかない迷宮と、清潔なベッドの並ぶ一等客室とではワケが違います。とても同列には語っていいものではありません。



「ははは、ルカ君が何をそんなに気にしてるのか分からないなぁ」


『ふふふ、さっぱり分かりませんねぇ』


『あはは、我も全然分かんないのよ?』



 なんとも白々しい態度です。もちろん、別室の三人組は当然そんなことは理解した上でルカが狼狽する様を楽しんでいるのですけれど。

 現在、ルグは一人で手洗いに行っているので秘密に気を遣う必要もありません。



「まあ、マジな話さ、こうしてキミ達だけで二人きりになれる機会ってあんまりないだろう? 告白する良いチャンスじゃないか」


「こ……こ、こく……む、無理っ。…………無理、だよ」


「いやいや、何が無理なものかね」



 いいえ、本当はルカにだって今夜が絶好のチャンスだということぐらい分かっているのです。

 普段からちょくちょく顔を合わせてはいても、ルカとルグが二人だけで一緒にいる時間というのは決して多くはありません。

 今回は、ならば、滅多にないほどの好機。

 レンリ達がこうして唆しているのだって、面白半分での行動なのは否定できないにしても、十分な勝機があると見ているからこそでもあるのです。



「彼はストイックというか、しっかりしてる癖にお子様っていうか、きっと恋だの愛だのって感覚がピンと来てないんじゃないかな? でも、別に感情のない木石ってわけじゃないんだ。一度、異性として意識させれば、そこから先はすんなり進む……ような気がしなくもない」


「気が、する……だけ?」


「いや根拠薄弱なのはその通りだけど、そんなに外れてない自信はあるよ」



 本人に聞くわけにもいかないので最も肝心な部分の確信はないのですが、まあ、それは仕方がありません。それでもレンリやゴゴ達は、告白を実行すれば少なくとも半々以上くらいの勝算はあると見ていました。

 根拠はあくまで彼女達の勘ですが、現状では主に友情に類するそれだとしてもルグがルカに対して何がしかの好感を抱いているのは間違いありません。多少の願望が混じっているのは否定できないにせよ、そんなに的外れな予想とも言えません。



「まあ、一気に告白というのが難しいとしてもだ。それでも二人でじっくり話す良い機会なのは確かなんだし、ちょっとでも今以上に仲良くなれたら、それで良しとしておこう。分かったかい、ルカ君?」


「それくらい、なら……なんとか」



 別にレンリが許す許さないの問題ではないのですが、若干ハードルを下げられたおかげもあってか、ルカはその部分には疑問を抱くことなく素直に首肯しました。

 告白は流石に難しくとも、二人で話して今より少しでも仲良くなるだけなら。

 ルカとしても彼と二人きりになるのが嫌なはずもなく、落ち着いて考えてみればそれ自体はむしろ嬉しいくらいなのです。無理に何かしようと気負うから困っていたわけで、普通の会話だけなら絶対不可能と言うほどの困難ではありません。そう考えると、ルカもちょっぴり勇気が湧いてきました。



『おっと、ルグさんが戻ってきたみたいですよ』



 客室のドアを少しだけ開けて通路の足音を聞こえるようにしてあったのですが、ルグが戻ってきたらこれ以上この話題を続けることはできません。秘密の作戦会議はどうやらここまでのようです。



「じゃあ、ルカ君、健闘を祈っておくよ」


「う、うん……!」



 最後の最後でハードルがガクッと下がり、引き換えに現実味が出てきたせいか、ルカもいつもに比べると少しだけ前向きです。











 

「ああ、そうだ、最後に一つアドバイス。ここの客室は防音性能もかなりのものなのだよ。列車自体の振動もあるし、ちゃんと鍵を閉めれば他の部屋の物音は全く聞こえないんだ」


 最後に、レンリはちょっとしたアドバイスを送りました。

 いえ、正確には助言というよりも、あまり上品ではない類のジョークでしょうか。



「えと……それが?」


「いや、ほら。万が一にも良い雰囲気になって行き着くところまで行っちゃっても、こっちの部屋には何も聞こえないし何してるかも分からないから安心して励みたまえってことさ」


「……? …………っ!?」



  最初、ルカは発言の意図が分からずに首を傾げていましたが、言葉の意味を理解すると同時に顔を真っ赤にしてしまいました。


 夜は、まだまだ続きます。



修学旅行の夜みたいな感じのやつ

皆、旅行ということでいつもよりテンションが上がっているようです

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