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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
五章『奇々怪々怪奇紀行』
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いざ、第三迷宮へ!


 結論から言うと、レンリ達は無事に第三迷宮に入ることができました。



「いやぁ、話の分かる人で……っと、人じゃなかった。融通の利く神様で良かったね」


『ええ、まあ、良かったですけれど……これはあくまで今回だけの特例ですからね。他言無用でお願いします』



 ウルとコスモスがやったのと同じように、ゴゴから神様に頼んでもらったのです。

 とはいえ、レンリ達が直接顔を合わせて話したわけではありません。

 そもそも、相手は顔どころか肉体がない精神的存在です。

 厳しい修行を積んだ高位の神官であれば神託という形で神の声を聞くことも不可能ではありませんが、そうして聞ける声というのはほとんどが断片的で解釈の難しい情報ばかり。流暢に会話をするのは難しいと言わざるを得ません。


 ……まあ、抜け道、裏技、反則もないわけではないのですが。

 依代となり得る特殊能力者に憑依することで、神が肉の身体を持つ人間と同じように活動することは不可能ではありません。

 もっとも、それは世間の人々や神殿関係者でも大半は知らない秘匿情報。そんな風に神様と直に話せることが知られたら、混乱は必至です。我欲まみれの俗人や熱心すぎる信徒が押しかけてきて、何をしでかすか分かったものではありません。

 もちろん、レンリ達だってそんな風にして直接話す手段があるなど知りません。それ以前に、そんな特殊能力者が学都にいない現状では、その手段で神様と直に会話をするのは不可能です。

 

 しかし人ならぬ迷宮、神の創造物である迷宮達であれば、わざわざ肉体を介して会話をするまでもなく意思疎通をすることが可能です。

 離れた場所にいる者達が思念を飛ばしあって意思疎通をする、遠隔念話テレパシーというマイナー魔法がありますが、その魔法を使っている様子に似ているでしょうか。やり取りをしている間、この場にいるゴゴは口を一切開いていませんでしたが、どうやら念じるだけで相手との意思疎通が成立していました。

 ちなみに、コスモスが交渉をした際には、ウルがやり取りの内容を逐一口頭に出して通訳の役割を果たしたのですが、ゴゴには神様の発言内容をレンリ達に詳しく教えるつもりはなかったようです。第三迷宮への入場許可を得られたという結果と、それ以外のほんの少しの言葉だけを端的に告げるのみでした。

 ちなみに、その少しの例外、なんだかとっても困った顔をしたゴゴを介して神様から告げられた大変ありがたいお言葉は、



『ええと……お礼は不要ですが、どうしてもと言うのでしたらお供え物として食べ物、できれば甘いお菓子などを所望します。この子に渡して頂ければ、後は郵送で送ってもらいますので……だそうです』


「え、郵送って……できるの? 天国とかに送るわけ?」


『いえ、あのですね……ご想像にお任せします』



 ……という、なんとも神秘的な威厳に満ち満ちた内容でした。







 ◆◆◆







 そして、翌日。

 レンリ達は改めて第三迷宮に向かう転移装置の前に立ちました。


 昨日、そのまま向かうこともできたのですが、予定外の出来事が立て続けに起きたために当初の意気込みがすっかり萎えてしまっていましたし、遠回しに催促されたお供え物を買いに行く必要も出てきてしまいました。

 とはいえ、神様の好みなど分かるはずもありません。

 神学書や教典を紐解いたってそんな記述はないでしょう。

 ゴゴを街に連れ出して人気のある菓子店を片っ端から巡り、店内の商品を全種類制覇するつもりで買っていきました。当然、それだけの量を両手で持ちきれるはずもないので、早い段階で大きめの辻馬車キャリッジを捕まえて購入した品をどんどん詰め込んでいくような形です。

 最終的には座席も荷物入れもぎっしり埋まり、それこそ菓子店を開けるくらいの量になったでしょうか。足りないよりは多いほうがいいだろうという判断です。ゴゴもその判断を支持していました。

 最終的に、料金を先払いした馬車ごとゴゴに託して別れたので、レンリ達はその後の行き先は知りません。どうやって「郵送」したのか追求する気もありません。

 まったく気にならなかったと言えば嘘になりますが、昨日は買い物を終えた時点で少なからず疲れていましたし、触らぬ神に祟りなしという言葉もあります。しかも、今回の場合は比喩ではなく本当に神様が相手。好奇心から迂闊な真似をして天罰でも下ったら困るというわけです。

 実際にはゴゴが保冷剤と共に品物を梱包した後、郵送料を支払って鉄道で一駅の街の指定の住所に送っただけ。それほど深刻に気にするような話ではないのですが、まあ詳しい事情を知らない以上は無理もないでしょう。



 ともあれ、今はこれから挑む新たな迷宮に意識を切り替えねばなりません。


 これより挑むは、第三迷宮『天穹海』。

 その名の通り、その大部分が水で構成された海洋迷宮。

 もしかしたら、いえ間違いなく、今回も一筋縄ではいかないでしょう。



「二人とも、準備はいいかい? 手筈は覚えてるね?」


「ああ!」


「う、うん……!」


「迷宮に転移したら、最初は小さな島の砂浜に出るらしい。その辺りに強い魔物はいないはずだけど、まずは周辺警戒を忘れずにね」



 レンリの最終確認に、ルグとルカも力強く頷きました。

 気合は十分。装備も万全。可能な限り情報も集めてあります。

 ……まあ、それは昨日もそうだったのですが、流石に二日連続でお預けを喰わされることはありません。気合が空回りするのは一回だけで沢山です。



「よし、それじゃ出発だ!」



 こうして、三人は元の予定よりも一日遅れで第三迷宮に転移し……、








「「「……? っ!?」」」


 何かの手違いか、あるいは情報の間違いか。転移先の出現位置が何故か海中だったという予定外のアクシデントを受けて、早速大ピンチに陥るのでありました。



「いしのなかにいる」よりはマシだからセーフ

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