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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
四章『響楽紅蓮劇場』

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幕間『幕間』

※タイトルミスに非ず


 良かれと思ってした判断が、振り返ってみれば悪手でしかなかった。


 今回の一連の事件は――この日に、もしくは前日からの丸一日に起こった混沌たる出来事を「事件」と称することが適切かはともかく――要するにそういった判断ミスの積み重ねによって、ここまで拗れてしまったのでしょう。

 それも、一度や二度ではありません。流石に百や二百とはいかずとも、細かなすれ違いや誤解を含めたら、十や二十には軽く届くでしょう。

 誰も彼もが絶妙のタイミングで次々と悪手を繰り出し続けるものだから、結果的にバランスが崩れることなく、途中で何らかの決着に至ることもなく、異常事態が続いてしまっている。意図せず続いてしまっている。


 実は誰か分かりやすい真犯人、黒幕がいて事件の全てを把握して裏から操っていたのだ! ……などという真相、伏線なきどんでん返しは無いけれども、むしろ、そうであったほうが救いになったかもしれませんが、残念ながら全ては純然たる偶然によるものでしかありません。


 ただ、間が悪かっただけ。

 ご都合主義ならぬ不都合主義とでも言えば、意外としっくり来そうです。もっとも、そんな言葉遊びではなんの慰めにもならないでしょうけれど。

 本人達は至って真剣であっても関係者の多くは、それも、より真剣に解決に取り組んでいる者ほど判断が裏目に出てしまった。道化としての役割を強く負ってしまったということになるのでしょう。皮肉にも。喜劇的にも。


 あるいはベストを尽くそうとせず、最善手ならぬ次善以下の手で妥協していれば、無理をせずなぁなぁで済ませていたら、こんなややこしい事態にまでは至らなかったのでしょう。

 もちろん、今となっては後の祭り。

 こんな論評も俯瞰した立場から、劇に例えるなら観客席から見ていたからこそ分かることで、舞台上の役者自身に分かろうはずもありません。台本も進行表も与えられず、決死とまではいかずとも、必死のアドリブでどうにか凌ぐしかなかった彼らには。

 それに今となっては、仮定の話をすることに、過程の話をすることにさしたる意味はありません。最早、引き返す道はどこにも残されていないのですから。どんな結末が待っていようとも、もう前に進む以外の選択肢はありません。


 この喜劇の終幕はもうすぐそこまで、手を伸ばせば届く位置にまで来ています。

 そうなれば、哀れな道化達も晴れてお役御免となるのでしょう。

 真相を知って、自分達が道化であったと自覚して、もしかしたら安堵や自嘲をして笑うかもしれませんし、あるいは逆に怒るのかもしれません。道化というのは滑稽な仕草で他者を笑わせる誇り高い職業ではあるけれど、能動的に笑わせるのはともかくとして、意図せず笑われることを決して良しとはしないものです。ましてや、本人に道化の自覚がないなら、なおさらのこと。まあ、もしかしたら、笑うでも怒るでもなく、別の違った感情を抱く道化もいるかもしれませんが。

 

 偶然の上に偶然が積み重なって、古代の地層のように堆積してきた今回の事件。

 意図なき偶然の産物だからこそ、ある種奇跡的とも言えるバランスが成立していたからこそ、一度均衡が崩れたらそこから先はあっという間。連鎖的に全てが崩れてめちゃくちゃになるまで、ほとんど時間はかかりません。


 

 さてさて、それでは、レディースアンドジェントルメン。紳士淑女たる観客の皆々様。

 最終幕の結末まで、どうか、もう束の間お付き合い下さいませ。



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