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意外な再会

「……おや?」


『あー、やっと見つけたの!』


 レンリが見つけたのは、レイルと一緒にロノに乗って道を進むウルの姿。ウル達の側もほとんど同じタイミングでレンリ達に気付きました。

 空を飛んでくればもうちょっと早く合流できたかもしれませんが、ロノが助走をつける為の広いスペースが道中に見つからず、また飛び立つことが出来ても着陸可能な場所にルカ達がいるとは限らなかったので、ここまでわざわざ地上を歩いてやってきたようです。

 まあ、飛ぶより遅いとはいえ、正確な居場所が分からなかった状況からロノがルカの匂いを探りつつ進んできたにしては、かなりの好タイムと言えるでしょう。



「よっ、ルカ姉。そっちの兄ちゃんと姉ちゃん達も久しぶり」


「レイル、ロノも……ウルちゃんと、お散歩してた、の?」


『クルルル』


「うん、ちょっと違うけど大体そんな感じ?」



 レイルは素早く地面に降りると、ルカの下へと駆け寄りました。ただでさえ小柄なレイルにとってはかなりの高さがあるのですが、まるで滑り台でも降りるようなスムーズさで危なげな様子は全くありません。落下した時に備えて咄嗟に身構えていたルグも、出番がなかったことに密かに安堵していました。

 ロノも同様にルカに近寄って頭を下げています。ルカがふわふわの羽毛を優しく撫でると、気持ち良さそうに鳴きました。身体は大きいけれどまだ幼いロノは、そうやって家族に甘えるのが好きなのです。



「なんというか、珍しい組み合わせだね?」


『さっき、そこで会って乗せてもらったのよ』



 乗り降りに慣れていないせいか少し遅れましたが、ウルも地面に降りてきました。

 先程、大袈裟な因縁アピールをして一人立ち去ったにも関わらず、そう間もない再会。それは置いておくとしても、意外な組み合わせでの登場をレンリも不思議に思っているようです。


 何故、前言を翻してまでウルがわざわざやってきたのか?

 その理由は勿論決まっています。



『くんくん……口元から漂う甘い匂い。さては我のいない所で美味しい物を食べてたと見たの!』


「ははぁ、さてはオヤツでもたかりに来たのかい? そこで売ってるチュロスはなかなかイケたよ。チーズ味も悪くないけど個人的にはシナモン味がオススメかな」


『おお、それは要チェックね……ち、違うのっ! そうじゃないのよ!』



 ウルの思考が一瞬にしてオヤツ一色に染まり、危うく用件を忘れてしまうところでしたが、ギリギリのところでどうにか本題を思い出したようです。



『えっとね、この子が匂いで場所が分かるかもしれないって言ってて、あの子とサイコロのお兄さんが一緒にいるかもしれなくて、空から落っこちるのを見たらしくて、だから教えてあげようと思ったの』


「え……なに?」



 幼児の喋りにありがちなことですが、話そうと思っている情報や時系列をキチンと整理せず、雪崩のように口にしてしまったせいで、結果相手に伝わりにくくなっています。



『まあまあ、姉さん、ちょっと落ち着いて。ほら、チュロスでも食べながらどうぞ』


『おお、これはありがたいの。もぐもぐ……えっとね、もぐもぐ……この子が昨日、あの子とサイコロのお兄さんが一緒にいるのを見たらしくてもぐもぐ……』



 ゴゴが気を利かせて購入してきたチュロスをウルの口に突っ込むと、ちょうど良い早さにまでペースダウンしました。姉の操縦法に関しては知り尽くしているのでしょう。



『くるる……きゅう……くるるるる……』


「うちの兄ちゃんとロノが昨日の昼過ぎに飛んでる時に、もぐもぐ……あの空の船からルカ姉が探してる姉ちゃんが落っこちたんだって。で、もぐもぐ……兄ちゃんはその姉ちゃんと一緒にどっか行っちゃったんだけど、ロノなら匂いで場所が分かるから……今も、もぐもぐ、兄ちゃんとその姉ちゃんが一緒にいるかは分かんないけど、もしかしたら追えるかもよ」



 レイルとロノもルカにチュロスを貰って買ってもらったらしく、食べながらウルの説明に補足を入れてくれました。基本的に肉食なはずの鷲獅子グリフォンですが、甘い物も意外と嫌いではないようです。人間用の量では体格に対して小さすぎるので、最初の一口で食べ終わってしまいましたが。



「お兄ちゃん……が、一緒に?」



 説明の仕方はともかく、これは今日一番の重要な手がかりには間違いありません。ルカとしては、どうしてそこで自分の兄が唐突に出てくるのかサッパリ分かりませんでしたが、



(もしかして、意気投合して観光案内でもしてるのかな?)


 

 ……みたいな、牧歌的な想像を漠然とするばかりです。

 まあ、街の案内というのは、ある意味正しいかもしれませんが。


 まさか、自分の兄が記憶を無くした少女を連れて悪の組織から逃げ回っている(つもり)……だなんて夢にも思わず、俄かに現実味を帯びてきたスターとの邂逅を前に、ルカは期待に胸を膨らませるのでした。

 


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