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送別会②



 送別会の開始から三時間以上が経過。

 本日の主賓であるシモンとライムは、列車の時間の関係で翌朝に早起きしないといけないので酒量を加減していますが、他の面々はお酒もだいぶ回っていい感じに気持ち良くなってきていました。



「ありがたや、ありがたや」


「それは?」


「何をしてるんです?」



 コスモスが手を合わせて何かを拝んでいるのが、ライムやアリスの目に留まりました。視線の先では、リサが離れた席でこちらの世界の友人達とお酒を飲んでいるようです。

 子供達の手前もあって普段はそれほどお酒を飲むわけではないのですが、リサはかなりアルコールには強いほうです。律儀に日本の法律に従って二十歳になるまではこちらの世界でも飲まなかったのですが(※この世界の多くの国での飲酒可能年齢は十五歳から)、初めてお酒を飲んだ日に付き合ったアリスは物の見事に潰されてしまいました。よっぽど頑丈な肝臓を持っているのでしょう。


 

「ふむ、お二人もご一緒にいかがですか?」


「何を?」


「おや、見て分かりませんか? 巨乳を拝んでいるのです。ご利益にあやかれないかと思いまして」



 最高に狂った理由でした。

 そんなの分かるはずがありません。



「いや、そんなの分かるはずがないでしょうに」


「贅沢」


「そうですよ。貴女も充分あるじゃないですか」



 アリスとライムの薄型低反発コンビからすると、コスモスだって充分以上にスタイルがいいのですから、自然と反発を覚えてしまいます。低反発ではありますが。

 持てる者が更なる向上を望むのは必ずしも悪徳ではないのですが、持てない者達にとっては嫌味に感じられてしまったようです。



「でも、見てくださいよアレ。ヤバいですよ?」


「……ヤバいですね」 


「ヤバい」



 しかし、コスモスとしては嫌味のつもりは毛頭ありません。

 純粋にリサのスタイルに羨望を覚えているのです。

 二十代後半という人間としては肉体の最盛期にあって、彼女のアレは大変アレなことになっていました。子供を産んでスタイルが崩れるどころか、より美しさを増したかのようです。



「ほら、二人とも拝みましょう。ほんの少しでもご利益に与れるかもしれませんよ? おお、ありがたや、ありがたや」


「「…………」」



 単に大きいだけでなく形状や張り、身体全体としてのバランスも完璧で、同じ女性として彼女達は畏敬の念すら抱いていました。その想いが高じて、とうとう新たな宗教を生み出すまでになったとしてもおかしくは……いえ、おかしくはあるのですが、きっとアルコールが彼女達の思考回路に影響を及ぼしていたのでしょう。







 多少距離が離れていたとはいえ、なおかつお酒が入っていたとはいえ、三人分の視線を受けて気付かないリサではありません。



「あれ、三人ともどうしたの?」



 それは不思議にも思うでしょう。

 なにしろ、三人もの人間が(※種族的な意味での人間は一人もいませんが)自分に向けて両手を合わせ、真剣な表情で祈りを捧げているのです。


 まさか自分の胸が信仰対象になっているとは露知らず、リサはキョトンと首を傾げています。

 なお余談ですが、勇者としての彼女は割とガチで信仰対象というか、宗教的な意味では最高位の聖人扱いをされています。公には勇者は元の世界に帰っていなくなったことになっているので、幸いにも誰かに面と向かって拝まれるようなことはないのですが。


 ともあれ、本人に見つかって我に返ったアリスとライムは、



「い、いえ、なんでもないですよ!?」


「……ん、なんでもない」



 大変愉快な慌てぶりを披露し、それを間近で見ていたコスモスは狙い通りの展開に大いに満足していました。



今回で番外編は終わりと言ったな?

アレはウソだ。

多分、次こそ終わるんじゃないかなと思います。

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