第二の試練①
ゴーレム戦から三日後。
充分な休養を経て万全の体調に戻ったレンリ達は、第二迷宮に入って間もない、低層部の広間にてゴゴに出会いました。
「おや、今日は雰囲気が違うね」
『はは、分かりますか?』
普段のゴゴとの違いは、レンリ達もすぐに感じ取れたようです。
殺気や敵意とは違って暴力性を伴わない、しいて言うならば無色透明の純粋な戦意。
平和な市井に暮らす人々にとっては馴染みのない感覚です。
学都に来たばかりの頃ならば、そのような意識を向けられても気付かなかったかもしれません。迷宮で積んだ経験や日頃の鍛錬が、そういった曖昧なモノへの感性を鋭く研ぎ澄ませていたのでしょう。
そして、守護者が目の前に現れて、そのような意思を向けてくるということは用件は一つ。皆、あえて言葉にされるまでもなく、ゴゴの目的を察していました。
『調子はどうですか? もし不調であれば日を改めても構いませんが』
「ご心配なく。絶好調だよ」
「同じく」
「わたし、も……大丈夫」
『そうですか、それは良かった』
これは武芸者同士の立ち会いではなく、あくまで一方がもう一方を計る為の試しの場。
もし三人が不調であればゴゴは本気で日を改めるつもりでしたが、どうやらその気遣いは無用のようです。
戦闘の邪魔になる荷物は即座に手放し、突然の攻撃にも対応できるように意識を引き締めています。ゴゴには不意打ちなどする気はありませんが、そういう可能性も視野に入れて行動するように用心するのは決して悪いことではありません。
「ふむ、それでは俺達は見学に回るとするか」
「ん、そうする」
そして、これが一番大事かもしれませんが、試練の性質上シモンとライムには引っ込んでいてもらわないといけません。保護者ポジションの二人もそれは分かっているので、三人の荷物を回収すると邪魔にならなさそうな壁際まで移動しました。
厳密には試練での助っ人自体は可能なのですが、守護者の能力は相手をする全員の総力に合わせて上限が引き上げられるので、下手に手出しをされると勝ち目が全く無くなってしまいます。第一迷宮の時は、最初ソレを知らずに酷い目に遭いました。
まあ、第二の試練に関しては、元々試される側の勝ち目など無いのですが。
『さて、これから皆さんは我と戦うことになりますが、勝負中の我の出力限界は現在の皆さんの総力を合わせた二倍に設定されます』
第一のウルとの試練では全く対等の力量を持つ相手と戦いましたが、今度は倍の力を持つ者が相手です。
筋力、スタミナ、魔力、技量、その他諸々の全てが倍。
人数で勝っているとはいえ、普通に考えれば勝てるはずがありません。
『準備はよろしいですね? では、答え合わせと参りましょう』
決して勝てないはずの戦いに何故挑むのか?
この戦いで何を試すのか?
その答えを、言葉ではなく意思と行動にて示すべく、レンリ達は一斉に動き出しました。
ふと気になったんですけど、本作のキャラ人気ってどんな感じでしょうかね?
「●●が好き」と感想欄とか作者ツイッターとかで教えて貰えたら嬉しいです。
話の展開上の都合もあるので確約はできませんが、そのキャラの出番やメイン回が増えるかもしれませんぜ。




