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ゴゴの役割


 レンリ達のリベンジマッチは見事に成功。

 用事を終えた彼女達はそのまま街へと戻ることにしました。

 勝利を収めたとはいえ、決して楽な戦いではなかったのです。まだ夕方にもなっていない早い時間ですが、すぐにでも眠りたいほどに消耗しています。ベッドで横になったら、きっと翌朝までグッスリ眠ってしまうに違いません。


 シモンや対戦相手の魔法兵達も用事を終えるとすぐに第一迷宮から立ち去ってしまい――――だから、他の面々がいなくなった後、まだ勝負の場に残っていたウルとゴゴの会話を聞く者は他に誰もいませんでした。




『ねえ、ちょっと聞いていいかしら?』


『ええ、どうぞ』


 

 ウルは一緒に残っていたゴゴに尋ねました。



『お姉さん達の誰かを、貴女(ゴゴ)の使い手として選ぶつもりなの?』


『おや、お見通しでしたか』


『だって、わざわざ第一(われ)にまで来るなんて珍しいもの。そっちだって、別に隠すつもりはなかったんでしょ?』



 ゴゴがわざわざ管轄外の『樹界庭園』まで足を運んだのは、自身の使い手とするに足るか資質を見極める為だった……と、ウルは考えていました。



『ええ。使い手のいない剣など、ただの置物ですからね』



 ゴゴも身内相手に思惑を隠すつもりは無かったようです。

 ウルの問いかけに対し、素直に肯定を返しました。

 迷宮の管理者として以外に聖剣としての側面を有するゴゴには、守護者として迷宮を維持管理し、探索者の資質を見極める以外にも別の役目が与えられているのです。


 聖剣(ゴゴ)の使い手として相応しい人物、すなわち次代の勇者となる者を見出す事。


 これは、各迷宮の守護者と一部の関係者くらいしか知らない秘密です。

 もしも迷宮の試練にそのような裏の意味合いがあると知られたら、功名心にかられた有象無象が山ほど押し寄せてくることでしょう。基本的に迷宮は来る者を拒みませんが、『勇者』の名はこの世界にとってあまりに大きすぎるのです。世に無用の混乱を生み出さぬよう留意する必要がありました。



『で、あの三人の誰かが候補なの?』


『さて、どうでしょう? 候補というだけなら、他に何十人もいますしね。正直、まだ検討中というところです』



 問題が問題だけに、ゴゴとしても慎重にならざるを得ません。

 際限なく猶予を引き伸ばせるワケではないのですが、別に今すぐ決めなければいけないほど差し迫っている程ではありません。ついズルズルと決断を先延ばしにしたくなっても無理はないでしょう。



『これまで我が見た中には戦いが強い人は大勢いました。知恵や知識に秀でた人も、高潔な人格を持つ人も……でも、我自身も上手く説明できないんですけど、そういうのが勇者に相応しいかというと何か違う気がするんですよねぇ』


『“何か”って何かしら?』


『そうですねぇ……しいて言うなら面白味とか?』


『あ~……なんとなく分からないでもないの』



 無論、ある程度の能力は必要ですが、単なる英雄ではなくオンリーワンの存在である勇者を選ぶなら、それだけでは不足。

 ただ強いだけ、ただ賢いだけでは、ゴゴのお眼鏡には適わないようです。

 だからといって、判断基準に「面白味」を持ってくるあたり、ゴゴ自身も決め手がはっきり分からずに迷走しているのかもしれません。何故だかウルは「勇者」と「面白味」という一見ミスマッチな要素の組み合わせに納得している風でしたが。



『まあ、近いうちに宿題の答え合わせも出来るでしょうし、あのお三方については、とりあえず保留ということで』



 当面、判断を急ぐ理由はありません。

 それに、見ているだけなら分からずとも、実際に刃を交えてみれば理解できることもあるでしょう。ゴゴからレンリ達への評価は、後日へと持ち越される形になりました。








 ◆◆◆






『やれやれ、シモンさんが引き受けてくれてたら、こんな苦労はせずに済んだんですがね』


『え、シモンさんも候補だったの? 我、聞いてないのよ?』


『今のところのナンバーワン候補ですよ。あの方の直弟子なら申し分ないと思ったんですけどね。我好みの美形(ハンサム)ですし。まあ、色々と事情があってフラれちゃいましたが』


『むむ? 我にもその“色々”の辺りを詳しく聞かせて欲しいの!』


『ふふ、ぼちぼち再アタックでもしてみましょうかね? そうだ、今度は大人の姿でディナーにでも誘ってみるというのもいいかもしれません』


『だーめーっ! そういう“こーしこんどー”は良くないと思うのよ!』



 まあ、現状のレンリ達はあくまで候補に入れるかどうかという段階ですし、他にも有力な候補者が何人もいます。少なくとも、無自覚に幼女からの人気を集めているどこぞの騎士団長以上の評価を勝ち取らないと、次代の勇者として選ばれる可能性はまず無いようです。


 

本作における結構重要な情報をちょっとだけ出してみました。

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