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冒険の準備


 “神造迷宮『アカデミア』とは、同名の七支杖によって維持・管理される七つの迷宮群の総称。学都の中心にそびえ立つ、塔にも見紛うサイズの聖杖は、これらの迷宮群へ通じる出入り口でもあるのだ。”


 “神造迷宮内は世界法則すらも違う異界であり、元の世界の常識は通用しない。”


 “『第一迷宮・樹界庭園』を除く第二以降の迷宮に入るには、若い番号の迷宮を支配する管理者に認められる必要がある。”



 まだまだ神造迷宮に関しては不明点は多いのですが、この程度の基本情報は既に広く知られています。特に誰でも無条件で入れる第一迷宮に関しては以降の迷宮よりも出回っている情報が多く、新しく挑もうと考える者ならば大抵は予習してきているものです。


 とは言ったものの、何事においても知識として知っているのと実際に体験するのとでは、天と地ほども差があるのが世の常というものなのですが。







 ◆◆◆







「ふむ、まあ、準備はこんなものだろう」


 騎士団と冒険者ギルドの共同講習を受ける当日、午前。

 前日のうちに消耗品や装備を急ぎ買い揃えたレンリは、マールス邸の客間で、彼女なりに考え抜いた準備を完了しました。


 ギルドの受付で受講申し込みをした際の説明によると、今回の講習は本日の正午から明日の正午までの丸一日の行程。実際に『アカデミア』内の第一迷宮に入り、実地形式で冒険の仕方を学ぶという事前説明がありました。



 ちなみにレンリが今回選択した装備は、まず着慣れたジャケットにズボンの組み合わせ。

 普段愛用しているような街歩き用の革靴は野外を歩き回るのに適さないので、履き物に関しては頑丈なブーツを選びました。これは学都に来る前に靴屋で仕立てたばかりの卸し立てです。

 詠唱魔法用の短杖はジャケットの裏ポケットに差してあります。


 そしてジャケットの上には、薄手だけれど丈夫で水濡れにも強く、ポケットが沢山ついている魔獣革のロングコート。森林で目立ちにくいダークグリーン風の色合いです。

 コートの上からベルトっぽく剣帯を巻いて細身の長剣を差し、腰の後ろにも逆手で抜けるような位置に大振りのナイフを。

 

 先日購入したばかりの肩掛け鞄は、長剣の反対側にくるようにしてあります。鞄の中には肉や果物の缶詰や瓶詰め、水筒、応急処置用の包帯や塗り薬、タオル、ロープ等。

 刻印魔法用の塗料や筆は、紛失に備えて鞄とコート裏のポケットに分散してあります。


 あと最後に、列車の事件の際にルグに渡した奥の手の指輪と、それと似たようなデザインの腕輪を各二つずつ。両手首と両中指に身に着けていました。



「一日分にしては大袈裟かな?」



 レンリも初めての冒険ということで、つい張り切りすぎてしまったようです。

 新品の鞄はギュウギュウ詰めですし、武器やら道具やらで結構な重量になっていました。とはいえ、全部身に付けた状態でもどうにか走ることのできる程度ですが。



 そうして全部の装備と荷物を身に付けたタイミングで、部屋のドアをノックする音が聞こえました。どうやら、マールスがレンリの様子を見に来たようです。



「やあ、レン。準備はどうだい?」


「ああ、叔父様。とりあえずは、こんな感じで行ってみようかと」


「へえ、なかなかサマになってるじゃないか。似合ってるよ」



 レンリの格好は、すでに何度も迷宮に入って成果を挙げているマールスの目から見ても“それっぽく”見えているようです。特に追加で助言をするようなこともなく、ニコニコと微笑んでいました。



「レンリさん。正午からなら、そろそろ行ったほうがいいと思いますよ? この時間は乗合馬車オムニバスが少ないですから」



 そうして話していると、マールスの助手兼家事手伝いのアルマ女史がやってきました。レンリが講習に遅刻しないように、わざわざ呼びに来たようです。



「あ、もうそんな時間ですか。では叔父様、アルマさん、行ってきます」


「いってらっしゃい、レン」


「レンリさん、気を付けてくださいね」







 ◆◆◆







 レンリが意気揚々と屋敷を出た後、マールスとアルマの二人は何やら意味ありげに苦笑していました。



「先生……レンリさんに言ってあげなくて良かったんですか?」


「こういうのは言葉で聞くよりも、実際に経験しないと身に染みないからね。レンはああ見えて根性があるし、今回は護衛のいる講習だしね。ま、酷い目には遭うだろうけど、最悪でも死ぬことはないだろうさ」



山登り等のアウトドア系のスポーツの経験がある方は、今回のレンリの失敗に気付いたかもしれませんね。まあ、彼女達には死なない範囲で精々酷い目に遭ってもらいましょう(暗黒微笑)。

最初のダンジョンだからといって低難度だとは限らないのですヨ?

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