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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
三章『境界調律迷宮』

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迷宮に行く前に


 ルグとルカが鷲獅子ロノに乗って空中散歩をした翌日。

 ようやくレンリが復調したので、再び第二迷宮の探索を再開することになりました。



「へえ、遊覧飛行? 二人とも、私がいない時にそんな楽しそうなことをしてたのかい」


「うん……楽し、かった……よ」



 迷宮へ向かう前に必要な品物を買うべく、三人は一旦南地区へと足を向けました。

 道中の話題は、もちろん昨日の空中散歩についてです。

 空の上から見下ろしたミニチュアのような街の光景や、風を切り裂いて飛ぶ時の空気の感触などの話を、レンリは羨ましそうに聞いていました。



「レンも乗ったことあるだろ?」


「私が乗った時は霧で何も見えなかったんだよね。いや、それはまだしも河に叩き落されるわ、氷漬けにされかけるわ風邪を引くわで……こうやって思い返すとロクな目に遭ってないな」


「まあ、その、なんだ……今度は天気の良い時に乗せてもらえばいいんじゃないか」


「う、うん……今度は……い、一緒に」



 当時は事件の渦中であり仕方のない状況だったとはいえ、そして風邪に関しては半分自業自得だったとはいえ、レンリが遭った災難の数々にはルグ達も同情を禁じえません。トラウマで高所恐怖症になっていないのが不思議なくらいです。

 まあ、差し迫った危険もない平時であれば、どこかの怖いお姉さんに紐無しバンジーを強制される心配もないでしょう。また今度、改めて一緒に空を飛ぶ約束をしました。







「さて、何を買おうか?」



 そうやって話しながら歩いていると、すぐに目的のお店が見えてきました。

 辿り着いた先は胡桃パイが名物のカフェ『木胡桃キグルミ亭』。数日前にウルを通じてゴゴに頼まれたケーキを買いにきたのです。

 貴重な情報の対価としては格安ですが、美食家のゴゴに下手なモノを出して機嫌を損ねられても困ります。ゴゴの正体を知ったレンリとしては、彼女とは是非とも仲良くしておきたいワケで、ここでのケーキの選択にも手は抜けません。



 幸い、刻印魔法を使用すれば冷たいお菓子でも食べ頃を保ったまま持ち運べますし、温かいほうが美味しい種類なら食べる前に時間をかけずに温めることも可能。

 描く動作が隙になるので直接戦闘には向かない刻印魔法ですが、応用力の幅広さに関しては数ある魔法系統の中でもトップクラス。こういう痒い所に手を届かせるような使い方をさせたら非常に便利なのです。



「胡桃パイはホールで、それとチョコとチーズケーキをそれぞれ四切れと……」


「あ、あれも……美味し、そう」


「なになに、季節限定のレモンカスタードタルト? 最近来てなかったからチェックしてなかったな。じゃあ、これも四切れ、全部持ち帰りで」


「これだけ甘い物持って行くなら、お茶もあったほうがいいんじゃないか?」


「それもそうだね。すいません、茶葉のバラ売りってしてもらえます?」



 あくまでゴゴへのお土産が主目的ではありますが、美味しそうなお菓子に囲まれてウキウキと心が弾むのは仕方のないことでしょう。パイ以外は四切れずつ頼んでいるのは、もちろん自分達も食べるつもりだからです。


 あれもこれもと盛り上がりながら相談していたら、自然と持ち帰り用の紙箱の数が増えていき、店を後にする頃には三人の手はお菓子で一杯になっていました。

 茶葉の容器だけは鞄に仕舞いましたが、ケーキ類などは下手に傾けると潰れてしまうので、慎重に手で持たざるを得ないのです。


 そして当然、全部の箱には保冷用の刻印を描いてあり、微弱な冷却状態を維持しています。

 日頃からの練習で魔剣や試作聖剣に魔力を通す感覚を掴んでいたおかげで、レンリ以外の二人でも冷やすことが可能。冷やしすぎて中身を凍らせるようなヘマもしません。世の中、何がどこで役立つのか分からないものです。



「さあ、それじゃあゴゴ君の所に行こう」



 迷宮探索というよりも、これから誰かの家でパーティーかお茶会でもするからお遣いに来たと言われたほうがしっくりするような姿ですが、実情としてはそう間違ってはいないでしょう。


 こうして、三人は両手一杯にケーキの箱を抱え、再びゴゴの待つ第二迷宮『金剛星殻』へとウキウキ気分で向かいました。



◆この三人はG国や周辺国ではもう成人扱いで飲酒可能な年齢(十五歳)なのですが、まだお酒より甘いお菓子が好みのようです。

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