ちょっとだけ先の未来①
本日二話目の更新です。
順番飛ばしにご注意ください。
そして数日が経ちました。
課題はまだまだ山積みですが、以前から新聞各紙を通じて展開していたプロパガンダ作戦や、各国の王家が連名で発表した声明も効果を発揮してくれたのでしょう。
「へえ、あの時の子達が新しい神様なのか」
「『使途様』をやってたのは神様修行の一環みたいな感じだったのかな?」
元から広まっていた『使途様』の知名度も、概ねプラスに働いていました。
迷宮達が正体を偽っていたというよりは、『使途様』が各地で人々を救うことで存在の位階を高めて正式な神にまで上り詰めた……みたいな理解をしている人が多いようです。実際には事情が異なれど、完全に的外れというわけでもありません。このあたりの誤解については積極的に訂正も肯定もせず利用させてもらうような方針でしょうか。
『まったくもうっ、毎日毎日ハードスケジュールで困っちゃうの』
ここ数日のウル達は、学都での式典を終えてそれぞれの国に帰った王族と一緒に、各国の人々の前に姿を見せるのが主なお仕事。それ以外にもデモンストレーションを兼ねて草一本生えない荒れ地を青々と茂る麦畑にしてみたり、病人や怪我人を癒したり亡くなった身内との心温まるひと時をプレゼントしたり。
ゴゴなどは魔法金属製の名剣を生成して、各国を巡る中で見込みがありそうな軍人や冒険者を見つけてはサービスしたりもしていました。聖剣や流星剣には遠く及ばぬ品ではありますが、神から直々に武具を下賜されたとあらば今後とも必死に精進してくれることでしょう。
全体的にサービス過多なのは迷宮達も自覚していますが、新人女神が知名度と好感度を同時に稼ごうと思ったら、即物的な利益を与えてやるのが一番手っ取り早いのです。神として本格的に始動した当初限りの出血大サービスとしてなら、どうにか許容範囲内と言えるのではないでしょうか。
◆◆◆
『へえ、ここがゴゴの神殿になるの?』
『ええ、いくつかの候補地の中からアクセスが良さそうなところを選ばせてもらいまして。伯爵さんがポンと土地を寄付してくれて助かりましたね』
忙しい日が続く中、本日のウルとゴゴは学都内の新市街区某所にある空き地の前に来ていました。今やアイ以外の姉妹は複数の自分達をポンポン増やして、世界各国で同時並行的に殺人的なスケジュールをこなす日々なのですが、この日の学都での用事はちょっと特別。
これまでも市中にあった女神を祀る既存の神殿とは別に、姉妹神のための新たな神殿を建てることが目的。より正確には、その第一弾となるゴゴ神殿の建立が目的です。
今や世界中の注目の的となった幼い神々がいるとあって、野次馬や報道関係の数はかなりのもの。単なる好奇心であったり、ご利益がないかと拝んでみたり、まだ何もしていないのに早くもかなりの騒ぎになりつつあります。
シモン率いる騎士団の面々も大渋滞を起こしている近隣の交通整理に追われていますし、予定時間より少し早めですがさっさと済ませてしまったほうが良さそうです。
『では、僭越ながら』
神殿の建築に大した時間はかかりません。
ゴゴが自前の能力を行使すると、それまで僅かな雑草や小石が目に付くばかりだった空き地に、真っ白な大理石造りの神殿がニョキっと生えてきたのです。
まるでイキの良いキノコやタケノコの如し。
その様子を見物していた人々の驚きようといったら、見開いた目玉が飛び出した上に顎が外れかねないほど。大掛かりなパフォーマンスで人々の度肝を抜くのにも、ここ数日ですっかり慣れました。
『さて、それでは狙った通りにできているか中に入って確認しますか。お集りの皆さんも遠慮はいりませんよ。むさ苦しいところですが、どうぞ中を見て行ってください』
土地の面積や近隣の建物とのバランスを考慮してアレンジはしましたが、神殿の大まかなデザインについては先日の夢の中で考えたものをそのまま採用。ゴゴの神殿は既存の女神を祀る神殿の多くとも似たような造りですし、より奇抜な造形となるであろう他の姉妹の神殿に比べたら、一般人の感性からしても神を祀る場として受け入れやすいものと思われます。
『ここに詰める神官の方は女神様の神殿から派遣してもらえる手筈になってますし、細々とした家具や消耗品については実際にお勤めする皆さんの意見を聞きながら揃えていったほうが良さそうですね』
というわけで、本日の学都でのゴゴのお仕事はこれで終了。
他の国々や都市ではまだ別のゴゴが忙しく働いているのですが、あまりに張り切りすぎては心が疲れてしまいます。どこかの女神のように心を病まないためにも、適度な息抜きを意識するのがメンタルを健全に保つには肝要です。
ちなみに、他の姉妹の神殿建設にかけてはまた後日改めて。
考えなしに大きな建物を出現させて、日照権の侵害になったり参拝客が詰めかけて周辺住民への迷惑になってはいけません。
誰のとは言いませんが、夢の中で考えた神殿案をそのまま実現したら周辺への迷惑になりそうなアイデアもありましたし、場合によっては更なるブラッシュアップを重ねる時間も必要でしょう。
他の多くの国々においても、主に現地の王族や貴族から土地を提供してもらう方向で話が進んではいるのですが、先述のような問題を考慮しつつとなると世界中の都市や村々に全員の神殿が建つのはいつになるやら。
神として上位の母神たる女神の神殿よりあまりに立派にしすぎては(女神自身は気にしなくとも)角が立ったりもしそうですし、これでなかなか気を遣うことが多いのです。
『じゃあ、今日は学都にいるゴゴのお仕事はおしまいね? それなら今度は我の用事にちょっと付き合ってほしいの』
『あれ、今日は学都で姉さんのお仕事って何かありましたっけ?』
ゴゴとしてはウルが見学に来ているのは単なる気紛れだと考えていたのですが、どうやら他に用事があってのことだったようです。いくら真なる神になったとはいえ姉妹によっては建造物を作ったりするのが不得意な者もいますし、そういう手伝いに駆り出されるのでは……なんて予想は大外れ。
『お待たせしたの! かくれんぼの面子が足りないって言ってたから、今日は我の妹を連れてきたのよ!』
『ええと、姉さん? 用事というのは、もしかして……』
ゴゴを連れてこられたのは、先程の神殿から歩いて数分の場所にある公園。
ウルの言葉をそのまま素直に受け取るならば、神々の能力がどうこうは一切関係なく、単に近所の子供達とかくれんぼをするための人数合わせでゴゴを引っ張ってきたのでしょう。
「あ、その子知ってる! ええと、ウルちゃんの妹のゴゴ……様?」
「ていうか、これからはウルちゃんにも敬語? ちゃんと丁寧な言葉遣いしたほうがいいのかな?」
細かいことを気にしなさすぎるウルと違って、集まっていた子供達は神様デビューした友達やその妹との距離感を計りかねている様子であったのですが……。
『んもうっ、みんな水臭いのよ! 我はこれまで通り普通に遊んでくれたほうが嬉しいの。ゴゴも別にいいでしょ?』
『え、ええ、我もそれで構いません。もし皆さんのお父さんやお母さん、他の大人の人に何か言われたら、我々からそうして欲しいと頼まれたとでも説明してもらえれば問題ないかと』
ウルがそんなつまらないことを気にするはずもありません。
彼女は神様デビューして忙しく働きながらも、その一方でいつも通りにレンリとオヤツを取り合ってケンカしたり、そこらの屋台で買い食いをしたり、こうして友達と毎日遊んだりしているのです。
『前々から知っていたつもりではありましたけど、やっぱり姉さんはすごいですねぇ』
『ふっふっふ、なんで褒められたのか分かんないけどゴゴは神を見る目があるの』
やることがいくら増えようとも、これまでの自分を曲げるつもりは一切なし。
まったく大した大物ぶりです。神になるということで内心では多少の気負いがあったゴゴも、ただただ姉の偉大さに感心するばかりでありました。




