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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
最終章『咲き誇れ、きざはしの七花』
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ガハハ勝ったな


 レンリ達が一時帰宅して推定ラスボス戦に向け装備を整えていた頃。

 長年に渡って隠していた秘密をぶちまけられて、オマケに外聞を取り繕う余裕もなくなって人前で大泣きしてしまった女神はというと……。



『あらあら、この薄切り肉でお野菜を巻いたの美味しいですね。もう少しおかわりをいただけますか?』



 さぞや落ち込んでいるかと思いきや、意外にも図太く料理をパクついておりました。元々は今夜の打ち上げパーティーで饗されるはずだった料理の数々が、こうしている今も伯爵邸から界港の控え室まで間断なく運び込まれているのです。


 その指示を出したエスメラルダ伯爵本人はというと、今は戦支度を整えるべく屋敷に戻って先祖伝来のヨロイやカブトを大急ぎで引っ張り出している真っ最中。わざわざ手配してくれた本人不在の中で次々と料理を消費することに少しばかりの罪悪感が無くもないのですが、せっかくの彼の厚意を無下にするのも悪いというもの。運ばれてきた端から、こうしてありがたく頂いているというわけです。



女神様(あるじさま)が元気になったみたいで我も嬉しいのよ! あとは、どこの誰だか知らないけど我がラスボスをブッ飛ばしたら全部解決ね! できれば食べても問題ないやつがいいの』



 口の周りをトマトソースで真っ赤に汚しながらパスタ料理を食べていたウルも、状況が一気に分かりやすくなったことで余裕の表情。もし敵がどこかの神様関係であれば、ディナーの品目が一品増えるくらいにしか考えていないのでしょう。



『うーん、わたくしにも倒す相手の心当たりとか全然ないのですけど、流石に今のウル達が総出でかかって手も足も出ないというのは考えにくいですものね。あとは、ほら、どこから見ているのかは存じませんけど今もコスモスさんが我々の言動を監視しているそうですし』


『メンタル的に万全とは言い難いかもしれませんが、コスモスさん越しに魔王様も状況を把握しているはずですからね。新人の神としては情けなく思う気持ちがなくもありませんが、いざとなれば魔王様にお出まし頂けばどうとでもなるかと。欲を言えばユーシャの勇者デビューを飾るのに利用したいですけどね』



 上品にサラダの皿を突いていたゴゴも、いざという時の保険である魔王の存在に言及。

 無論、今も病院の廊下でウロウロしつつヤキモキしているであろう彼をなるべく引っ張り出したくはないものの、万が一、推定ラスボス氏が今の迷宮達やシモンやライムの総力でも敵わないくらいに強そうならば流石にそうも言っていられません。


 そもそも魔王が日本側にいたところで実際に赤ちゃんを産むのはアリスとリサなわけで、特に何かの役に立つわけでなし。ほんの数秒か長くても数分程度ご足労願うくらいなら、彼も嫌な顔はしないでしょう。



『そういえば……今日の式典がメチャクチャになっちゃったのは、もう仕方ないとして。元々今日やる予定だったことをまた日を改めてやり直したりするのかしら?』


『原因を作った身としては正直耳が痛い話題ですねぇ。日を改めてとなれば来賓の皆さんのスケジュールを少なからず動かさないといけないでしょうし』



 ヒナとしては恐らく楽勝と思われる推定ラスボス戦よりも、その後に待ち受けているであろう後始末のほうに意識が向いているようです。第三迷宮産と思われる新鮮な魚の生肉に香りの良いオイルやビネガーを合わせたカルパッチョを口に運びつつ、式典のやり直しの可能性について言及していました。


 各国の要人を追加で何日も足止めするとなると、各方面への影響は決して無視できない規模になるでしょう。本日は異常すぎる事態に混乱して背景の賑やかし(モブ)と化していた彼ら彼女らの多くも、地元に帰れば多くの国民が信頼を寄せる指導者層であるわけで。今はまだ予定も何もあったものではありませんが、そういったスケジュール変更の決定は早いに越したことはないはずです。



 いくらなんでも皮算用が過ぎるというか、何を決めるにもまず目の前の戦いを無事に終えねばお話にもならないのは皆も分かってはいるのですが、あまりにも楽勝そうな条件が整いすぎているせいか戦いそのものの勝敗を本気で心配する気分になれないのでしょう。


 どれだけ油断や慢心をしていようとも、その程度の気の緩みで負けるビジョンが見えてこない。ここ数か月のうちに急激に強くなりすぎてしまったことのマイナスの影響かもしれません。


 揃いも揃って、とても分かりやすく油断していました。

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― 新着の感想 ―
ラスボスに備える。 〉何時も通りの簡単なミッションだ からの 〉騙して悪いのですが、最後の晩餐を済ませたので 皆さんには不幸になって貰いますね♪ 反転女神出現ミッション 難易度〉ベリーベリーベリーベリ…
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