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囚われブラザーズ

そういえばいつの間にか百話到達してたみたいです。

毎度ご贔屓頂きましてありがとうございます。


「おい、起きろ」


「うーん……あと十時間……」


「いいから起きろ。ついて来い」


 街での騒動も知らずに呑気に昼寝をしていたラックは、突然見張りの兵に叩き起こされました。そのまま理由も聞かされずに手錠を付けられ、独房から引っ張り出されます。



「出来ればまだここにいたいんだけど?」


「…………」



 もちろん、そんな希望が通るはずもなし。

 兵は無言でラックを引っ張っていきます。


 安全地帯に避難をするために自首してきたラックとしては、独房から出されるのは非常に困ります。例え雑居房に移されるだけだとしても、同室の人間が敵の送り込んできた刺客だという可能性も否定できません。



「おやぁ、ここ、こんなに人いたっけ? 満員御礼だねぇ。この人たち何したのさ?」


「……黙って歩け」



 移動中、地下二階の他の独房や、地下一階の雑居房がほとんど満室になっているのに気が付きました。本来は一人用の独房にまで限界まで詰め込み、毛布を敷いた上に寝かせてあります。

 ここにいるのは操られていた被害者達。

 今は薬品で眠らせてありますが、まだ支配が解除されたワケではありません。何かしらの操作をされて暴れられた時の用心で、ここに閉じ込めてあるのです。


 実を言うと、ラックが独房から出されたのも場所に余裕がなく、割と重要度の低い容疑者を別の部屋に移して、きちんと管理できる独房のスペースを空ける目的がありました。わざわざ本人には伝えませんが。



「釈放って感じじゃあないよねぇ。いい加減教えて欲しいなぁ」


「この部屋だ。入れ」



 階段を上がり、そのまま地上三階まで上がると、とある部屋の前で立ち止まりました。

 兵に促されるままにその部屋に入ったラックは、



「あらら?」



 そこで同じく捕まった弟妹達と、感動の再会を果たしたのです。



「おお、愛しい弟妹たちよ! お兄ちゃんだぞぅ!」


「兄さん、そこに立たれると掃除の邪魔だからどいて」


「あ、はい」



 感動の再会を果たしたのです。



「やあ、僕がいなくて寂しかっただろう?」


「兄ちゃん? あ、そういえば捕まってたんだっけ」


「わ、たしは……忘れて、なかった……から」



 感動の再会を果たしたのです(※効果には個人差があります)。







 


 ともあれ、数日振りに全員が揃いました。



「よぉし! じゃあ、みんな揃ったことだし早速脱走でも」



 ちなみに現在彼らがいるのは、地上三階にいくつかある会議室の一つ。

 部屋数が足りず牢に入りきらなかったための措置ですが、当然のことながら鉄格子もなく、窓もあり、脱走は難しくなさそうに思えます。


 しかし、ラック以外はまるで逃げる気がなさそうです。



「あ……それ、無理……だか、ら」


「無理? どういうこと?」


「試してみれば分かるわよ。窓からでもドアからでも出ようとしてみて」


「うん?」



 なんとも無用心なことに、ラックを連れて来た兵は既に立ち去っていますし、他に見張りもいません。これならばいくらでも逃げられそうに思えますが、



「ぉぽぅっ!?」



 部屋から一歩を踏み出した瞬間。

 顎先に鋭い掌打を受けたラックは、その場に崩れ落ちました。



「駄目」



 見張りの兵はたしかにいませんでした。しかし、人手不足の騎士団を手伝うべく、自主的に見張りの手伝いをしていたライムがいたのです。



「誰っ!? ってか、どこから現れたのさ!」


「最初からいた」



 どうやら、同じ部屋の中に最初からいたようです。

 森の中に比べると身を潜める場所は少ないですが、本気で気配を隠せば常人にはまず気付けません。



「え、と……ライム、さん……前に、話した……」


「ああ、あの強いエルフの人か。妹がいつもお世話になっております!」


「こちらこそ」



 以前にルカから話を聞いていたようで、ラックは急に丁寧語になって挨拶をしました。

 ライムのほうもそれに返し、そして挨拶ついでに重要な情報を伝えました。



「気配は覚えた。逃げても分かる」


「はい?」



 そう、この部屋の警戒が薄いのはそれが理由。

 仮にこの建物から出られたとしても、学都くらいの範囲であればどこまでも追跡し、狩られてしまうことでしょう。


 先にこの部屋にいた三人が落ち着いているのも、逃げても無駄だということを完全に悟った。否、悟らされたから。人間完全に諦めがつけば、どんな苦境でも案外平静でいられるものです。

 ちなみに、建物の中に入れなかった鷲獅子ロノも、本部の裏庭でおとなしくしています。野生の本能によるものか、ライムを完全に上位者と認識していました。これでは飛んで逃げるのもまず無理です。


 ライムが席を外していたとしても、気配を消しているだけなのか本当にいないのか判別する術はなく、もしいた場合は先程のように容赦なく怪我をしない程度に攻撃してきます。というか、実は話の上でしか彼女を知らなかったリンとレイルは試しに逃げようとして失敗しています。



「だから……逃げ、られない……から」


「そもそも、ここから出られないし、逃げてもすぐに追いつかれるし」


「あ、トイレとかはちゃんと言えば部屋から出てもいいってさー」


「なるほどねぇ。じゃ、仕方ないか」



 まあ、そんなこんなで彼らは仲良く囚われの身となったのです。



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