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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
最終章『咲き誇れ、きざはしの七花』
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待ちに待っての


 かくして、女神がひた隠しにしていた秘密は明かされました。

 必死になって隠そうとしていたのも無理はありません。

 長年かけて積み上げてきた神としての威厳や威信、そういった全てが失われても不思議がないような弱み。決して表に出してはいけない「弱さ」そのものだったのですから。



「はぁっはっはっは、安心するといい! 心配なんてするヒマがあったら、今のうちから私に対する謝礼を考えておくことをオススメするよ」



 しかし、解決を請け負ったレンリは自信満々。

 無償ではなくキッチリ報酬を要求する気でいるらしいのは如何にも彼女らしい振る舞いですが、ここまで言い切るからには何かとっておきの秘策でもあるのでしょうか。



「秘策? そんなの……もちろん、あるとも! それも何か月も何年も長々と時間をかけるつもりはない。今日中には全部スッキリ解決してあげようじゃないか!」


『そんなすごい作戦が!? い、いったい何なのでしょう?』


「ふっふっふ、それはね……」



 女神の問題を綺麗さっぱり解決できるであろう策。

 この場に集う面々の耳目がレンリの言葉に続きに集まりました、が。



「答えは、休憩の後!」



 なんと、この状況でまたもや引っ張りやがりました。

 もしや本当は作戦なんてなくて、休憩時間の間に必死に考えて、さも最初から思いついていた風を装うつもりではなかろうか。そんな邪推すら招きかねない、CMが多すぎて答え合わせ待ちの視聴者がうんざりしているクイズ番組のような引き延ばしぶり。



「いやいや、ちゃんと思いついてるから。本気(マジ)真実(マジ)で。ほら、私の目を見てみたまえ。これが嘘を吐いている人間の目だと思うのかい? ところで、眼球の健康状態と発言の信頼性ってどのへんに相関関係があるのかな?」



 嘘吐きの常套句まで持ち出しつつ無意味に不安を煽ったりもしていましたが、なんと少なくとも今回に限っては本当に嘘ではないのです。特に必要のない悪ふざけで聞いている人々や神々をからかってはおりますが。



「休憩を提案したのは別に疲れたとかお腹が空いたからってだけじゃあないんだ。それもなくはないけど、一旦家やら宿やらに戻って着替えてくるのには皆そこそこ時間が要るだろう?」


『お着替え、ですか?』



 これまでもちょくちょく食事休憩を挟んでいただけに、今度もまた空腹を満たすのが主目的かと思いきや、レンリが言い出した理由は着替え。それも口ぶりからするに、彼女だけではなく複数人が着替える必要があるようです。



「ふふふ、なにしろ休憩明けは主に私の友人達が待ちに待った戦闘パートになるだろうからね。式典のために余所行きのドレスやら何やらで着飾ってきたわけだけど、激しく動いて破れたりしちゃ困るだろう?」



 いったい、どこの誰さんと殴り合うのかはレンリ以外分かりませんが、そういった事情なら確かに服装を変えておくに越したことはないでしょう。



「わくわく」


「おっ、ライムさん張り切ってるね。ウル君達なんて早くも服を変え終えてるし」



 単純な殴る蹴るで解決するならと、過剰なほどに頼もしすぎる仲間達も大いに張り切っている様子。ライムなど早くも演壇横でウォーミングアップのスクワットを始めていますし、服装を自由に変えられる迷宮達はすでに普段の慣れた格好になっています。


 果たして、どんな相手と戦うことになるのやら。

 女神自身も全然知らなかったけれど、実は彼女を裏から操って苦しませていた都合の良い真の裏の闇の黒幕的な大ボスでもひょっこり出てくるのだろうかと、各々そんな風に想像して楽しみにしているようです。



「そうそう、シモン君。この会場への入場時に警備上の都合とかで武器の類を預けたろう? それを皆に返してあげるように手配しておいてくれるかな。警備責任者としては困るかもだけど、もうそんなの今更だろうし。私もボディチェックをすり抜けてこっそり持ち込んだ以外の剣を受け取っておかないと」


「う、うむ、よく分からんが心得た。誰を相手にするのかは知らぬがな。あと、さり気なく犯行を自白して有耶無耶にしようとするでない」



 いつもの仲間内のみならず、来賓の面々にまで武装の必要があるとはこれ如何に。

 この後で寄ってたかってボコボコに叩きのめされるであろう相手とは、彼ら彼女らの手まで借りねばならないほどの強敵なのでしょうか。



「うーん、そのあたりは正直今の段階ではなんともね。無駄に終わる可能性もそこそこあると思うんだけど、もし自衛が必要そうなら後で慌てるより最初っから備えておいたほうが良いだろうし」



 散々大口を叩いたレンリにも、まだ敵の詳細は不明なようで。

 あっさり勝ててしまって着替えや武器の準備が無駄に終わる可能性もありますが、それならそれで構わない程度のもの。役に立たずに終わるなら、それに越したことはないのです。



「はい、そんなわけだから散った散った! 各自動きやすい格好に着替えて、それから食べ過ぎて動けなくならない程度にご飯も食べてから再集合ね。時間は、そうだね……ちょっと長めに二時間くらい見ておこうか。多分だけど、まとまった休憩が取れるのはこれが最後になるからさ」


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― 新着の感想 ―
とりあえず、楽しい殴り愛がはじまる 〉おれたちゃ、アカデミア商会のモンだ アンタ、女神様に取り憑いて悪さをしていると小耳に聞いたんだが、違うよな? と商会の人達が言っている。
そういえば、魔王って勇者で助けを求める声が聴こえてこの世界に来たんだったよね・・・ 先代魔王だけやなくて、神様の助けの声も聴こえて来た可能性ももしかして有るのかな?
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