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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
最終章『咲き誇れ、きざはしの七花』
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正直者のレンリさん


『つまり、今はまだ未来が未確定の状態なわけだね』


 運命剣はそのように言いました。

 どうやら、人間のほうのレンリの推測はほぼほぼ正解だったようです。



『百点満点ってわけじゃあないけど、まっ、ギリギリ合格点ってところかな? その調子で精々精進したまえ、未熟者なりにさ』


「自分自身からの上から目線、普通にイラっと来るものらしいね。あんまり怒らせるとゴミの日に捨てちゃうぞコノヤロウ」



 未来とはそもそも未確定なのが当たり前ではあるわけですが、本来の意味での「未確定」と女神の予知能力の不調に関連する「未確定」とでは厳密には別物なのでしょう。



『言うまでもなく未来からの干渉がその原因だね。要は私なんだけど。この時代のSF作品でもたまに聞かない? 「時空の乱れ」みたいなフレーズ。アレだよ、アレ。もっとちゃんとした専門用語なんかも当然あるんだけど、なんとなくの雰囲気くらいは掴めるでしょ?』


『はあ、なんとなく漠然とは……それで、わたくしの予知に関してなのですけど』


『ああ、放っておいてもそのうち治るというか、能力自体に問題があるわけじゃなくて見るべき未来がしっちゃかめっちゃかになってるだけだからね。この世界が進むべき道が確定したら自然と収束されて元通りになるはずだから』


『なるほど、そういうものですか』


『そういうものなのだよ』



 今すぐ元通りとはいかないようですが、これで女神も一安心。能力そのものを喪失したわけではないので、役立たずのポンコツ女神として人類からそっぽを向かれる心配はしなくて良さそうです。



「はい、じゃあ次はこっちが質問するターンだね」


『えっ……ターン制って本気だったんですか?』


「そりゃ本気だよ。一方的に聞かれるよりは、そっちのほうが神様だって幾分マシってものだろう?」


『それは、その……そうなんですけど』



 未来予知の話題が一段落したところで後攻に交代。

 現在この場を支配しているルールは、レンリ側と女神側が交互に質問を出し合っては順番に答えていくという恐怖のターン制トークバトルシステム。

 ペナルティについて明確な取り決めがあったわけではありませんが、先に知りたい話を聞いたにも関わらず自分の時だけ黙秘を貫いたりすれば、一人と一本のレンリ達からどんな恐ろしい嫌がらせを受けるか分かったものではありません。



「こっちが一番聞きたいことは、もちろん神様が自分から消えようとした動機なんだけど……」


『…………』


「この調子からするに、よっぽど言いたくないみたいだね。というわけで、まずは比較的答えやすい軽めの質問を投げて口の滑りを良くするところから始めようか!」


『こ、答えやすい質問……ですか?』



 この場における最優先かつ最重要の目標は動きませんが、無理に口を開かせようとして女神を意固地にさせてしまうのはよろしくない。そこで次善の案として、他の答えやすそうな質問から入ろうというのがレンリの作戦のようです。



「なにしろ神様が関係してそうな謎はまだまだ沢山あるからね。抵抗の少なさそうな疑問に答えるうちに適度にヒートアップして、ポロっと本命の秘密について漏らしてくれたら御の字ってやつだよ」


『なるほど、そういう作戦ですか。ですが、あのぅ、わたくしが言うのもなんですが、それはわたくしの前で堂々と言ったらダメなやつなのでは?』


「それもそうだね! じゃあ、聞かなかったことにしてくれたまえ」


『え、えぇ……』



 息をするように嘘を吐くクセに、変なところで正直者なレンリです。

 あまりの正直ぶりにかえって意表を突かれたのか女神も戸惑いを隠せませんが、ともあれレンリは質問を、彼女曰く答えるのに抵抗が少なそうな軽めの問いをぶつけました。



「じゃ、聞くね。魔王さん家の人達についてなんだけどさ」


『ああ、はいはい。その件ですか』


「うんうん、その件。でね、あの一家は赤ちゃんが産まれるからって理由で今日は揃って欠席してるわけじゃない? それも奥さん達二人揃っての出産で、よりにもよって式典の日と同日に。今日の昼までは世の中そんな偶然もあるのかなってくらいに思ってたけど……これさぁ、ぶっちゃけ神様何かやったでしょ?」



 レンリの問いに対し、女神は少しだけ考えてから正直に答えました。



『はい、ぶっちゃけ何かやらせていただきました』




◆◆◆◆◆◆



≪おまけ≫


挿絵(By みてみん)


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