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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
最終章『咲き誇れ、きざはしの七花』
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クエスチョン&アンサー


 二度目の休憩もそろそろ終わり。

 屋内に引っ込んでいた人々も、また先程までと同じ演壇前に戻ってきました。



『やあやあ、騎士団諸君。毎度ご苦労だね』



 壇上には先程までの上映会で使っていたスクリーンの姿はなく、代わりに椅子がいくつか置かれているだけ。どうやら、運命剣がシモン経由で騎士団に指示を出していたようです。



『おや、先程までと比べて顔ぶれがちょっと変わっているような?』


 

 休憩中に日本側に情報を伝えに行った面々がいないのは当然として、他にもさっきまであった顔がいなくなっていたり、逆に見覚えがない人が増えていたり。運命剣やレンリ達が把握していないところで少しばかりメンバーの入れ替えが発生しているようです。


 とはいえ、特に疑問や問題というほどでもありません。



「別に出入りそのものを禁止してたとかではないからね。一緒に来てる使節団なり何なりに現状を伝えに泊ってる宿に行ったとか、それで異常事態を知った人達が確認のために来たとか。大体そんな感じでしょ?」


『私も若い私の意見に同意かな。まあ新顔の皆も楽しんで行ってくれたまえ』



 顔ぶれの変更理由については実際その程度の理由です。

 レンリと運命剣は大して気にする素振りもなく、当然のような顔で壇上へと上がってきました。レンリは片手で運命剣を引きずるように持ち、ついでにもう片方の手で女神を引っ張っている状態。

 レンリの腕力など高が知れていますが、女神および神子の身体能力も似たようなもの。ついでに言えば肉体を共有している神子はレンリ側に味方しているので、気乗りしないこと甚だしくとも抵抗できずにいるようです。



『あのぅ、どうしても舞台に上がらなきゃ駄目ですかね? どこか離れたお部屋に機材を置いて、ここにいる皆さんとはビデオ通話でやり取りするとか。ほら、わたくしってば人前だと緊張してアガっちゃう性質ですし』


「ははは、どうしてその言い分が通ると思ったんだい? さっ、座った座った! モタモタしてるとゴゴ君に頼んで、鎖で椅子に縛り付けることになるよ」



 事前の予告通りなら、これから始まるのは女神による動機告白タイム。

 それがよっぽど気乗りしないのか隙あらば逃げようとしていますが、残念ながらこの場に集まった無駄に戦闘力を持て余している面々が隙を見せることなどないでしょう。渋々と用意された椅子に腰を下ろした女神は、すっかり萎縮して縮こまっていました。



『どうでしょう、ここは一つ人権に配慮して黙秘権と弁護士を呼ぶ権利を行使させていただくというのは? ほら、これから地球との交流も始まることですし、あちらのスタイルを率先して取り入れていく姿勢をですね』


「はっはっは、残念だけど神様に人権はないからねぇ」


『そ、そんなぁ……』



 女神が情けない姿を見せるのは、本性を知っている面々の前では割といつものことなのですが、今回の往生際の悪さは明らかに普段以上。よっぽど言いたくない理由があるのでしょう。このままでは口を開かせるのに少々難儀するかもしれません。



「うん、それじゃあこういうのはどうだろう?」


『……正直あんまり聞きたくないのですが、こういうのってどういうのでしょう?』


「そっちばかりに喋らせるのも不公平かもだし、こっちがそちらの疑問に一つ答えるのと引き換えにそっちも答えを言うシステムを導入しようかとね。ターン制で質問側と回答側が入れ替わる感じで」


『うん、良いと思うよ。神様だって色々と疑問がないわけじゃないだろう? 特にこの剣の私に対しては』


『はい、それは、まあ色々と知りたくはありますが……』


『先に謝っておくと、発言にロックが掛けられてる未来技術周りについては答えたくても答えられないと思うから。そういう答えを返せないやつに関してはまた別の質問をぶつけてくれたまえ』



 ここからどうにかアドリブを利かせて女神本来の計画を続行するにせよ、潔く諦めて中断するにせよ、数々の疑問が謎のままでは据わりが悪い。その謎の秘密と引き換えという条件には、女神も態度を軟化させてくれたようです。



「話はまとまったかな? じゃ、言い出したのはこっち側だし、サービスで先に答えてあげよう。例えば……さっきから神様がいつもみたいに未来を視ようとしてるのに、失敗し続けてる理由とか?」


『おや、若い私。時間移動の仕組みも知らないのによく分かったね?』


「そんなの剣の私が出てきてすぐに分かったとも。そもそも、未来予知ができる神様がむざむざ剣で刺されるなんていう状況がおかしいからね」


『ふふふ、流石は私だけはあると言っておこうか! というわけで、神様。こっちが質問も言っちゃったけど、まずは軽いところでそのあたりからどうだろう?』


『ええと……じゃあ、それでお願いします』



 一ターン目の先攻側からいきなり勢い余った感がありますが、これまで常に未来を知ることでアドバンテージを得てきた女神にとって、その能力が十全に使用できないというのは一大事。渋々ながらターン制トークバトルシステムの導入を受け入れて、回答に耳を傾けることにしたようです。


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