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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
最終章『咲き誇れ、きざはしの七花』
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理想のマイ神殿発表会


 アイがお出ししてきた神殿案……なのかどうかはイマイチ判然としませんが。



『あいっ』


「へえ、上手に描けてるじゃないかアイ君。上手い上手い! なんというか、こう、抽象的というか? ええと、うん……ねぇ、ルカ君。これ、何が描いてあるのか分かる?」



 アイが自信満々に出してきた絵は、赤や青や黄色のクレヨンを思う存分に走らせた力作。いかにも赤ちゃんが描いたらしい微笑ましさはありますが、それが何を描いたものなのかを見極める域にはレンリの審美眼は達していなかったようです。恐らくは最もアイへの理解度が高いと思われるルカに、小声でヒソヒソ答えを尋ねておりました。



「えと……たぶん、この赤いのと黄色いのがお花……かな? 青が空だから……あっ、前にお散歩で行った、公園だと思う、よ?」


『ん! こぉえん、すき!』


「おお、ルカ君お見事! アイ君は花が好きみたいだし、神殿の敷地内に花壇をたくさん用意して花畑みたいにすれば気に入ってくれるんじゃない?」



 レンリには読み解けなかった絵の内容も、ルカがピタリと正解を当ててくれました。神殿の本体部分はともかく、身近に花が多くあるような環境を用意してやれば、アイもきっと喜んでくれるでしょう。



『ははぁ、見事な洞察力ですねぇ。わたくしも同じくこの子の母親ポジションではありますけど、ルカさんほどにはとてもとても』


「えっ、あ、いえ……それほど、でも」



 ルカの立派な母親ぶりにはアイを創った女神も感心しきりです。

 まあ、それについては実際の育児に関わった経験の差によるものでしょう。



『というか、ルカさん。もしよろしければなんですけど神官への就職などいかがです? ほら、アイとしても見ず知らずのヒトに世話されるよりは、慣れ親しんだルカさんが近くにいたほうがよろしいでしょうし。この子がもう少し大きくなって物心つくまでで構わないので、アイの専属お世話係として』


「あ、その……それは、えっと」



 勢い余っての就職勧誘は、ちょっと勢い余った感がありますが。

 ルカとしてもアイのお世話をすること自体は苦ではありませんし、なんなら進んで引き受けたいくらいのものではあるのですが、そのために神殿に神官として就職するとなるなど全くの想定外。神殿勤めの身ともなれば面識のない他人との接触も増えるでしょうし、ルカの性格的に苦労するのは目に見えています。



「こらこら、私の専属護衛を雇い主の前で強引に引き抜きとは感心しないね。まあルカ君がどうしてもと言うなら応援するけどさ、アイ君のお世話をするだけなら必ずしも神官になるのが必須なのかも不明瞭だしね」


「ええと、なので……ごめんなさい」



 今となっては何が護衛なのかも怪しい部分が多々あるにせよ、ルカとルグは一応これでもレンリの専属護衛として雇われる冒険者なのです。それを引き抜こうというなら、確かに雇用主への筋を通してからにすべきでしょう。女神としても、さほど強い意欲があったわけではないのか大人しく引き下がりました。



『では、次は我が。皆の力作揃いの後で出すには、いささか気後れしてしまいますけど』



 ヒナ、ヨミ、アイに続く四番手はゴゴ。

 彼女の神殿案は、特に変わったところのない普通の神殿。

 巨大な白い大理石造りで、シンプルですが神殿らしい荘厳さを味わえそうです。



「ふむふむ、ゴゴ君のはいかにもスタンダードな神殿って感じだね。なんて言うか……普通? 別に悪いとか不満があるとかじゃないんだけどさぁ、キャラが弱いというか没個性というか地味というか。ははっ、まあゴゴ君にしては頑張ったほうなんじゃないかな?」


『我にだけ当たりが強くないですか!?』



 普通ゆえにレンリとしても特に語ることがなさそうです。



『うふふ、それじゃあお次はモモのやつをお見せするのです。ぶっちゃけ建物そのものの個性は特にないのですけど、モモの舌を楽しませるための果樹園やら何やらを作って、神官の皆さんには修行だか神の試練だかの適当な口実でせっせと耕してもらう方向で。ついでにお菓子作りなんかもしてもらうのですよ』


「へえ、上手いこと収穫できたら是非ともご相伴に与りたいね」



 続く、五番手。

 モモの神殿は完全に私利私欲に走ったものでした。

 神たるモモが何もせずとも、新鮮なフルーツやお菓子が勝手に献上されてくるという寸法です。あまりにも堕落ぶりが度を越したら姉妹達が注意してくるでしょうし、まあ少しくらいは好きに振る舞っても問題ないのではないでしょうか。




◆◆◆◆◆◆


≪おまけ≫


挿絵(By みてみん)



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