表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
最終章『咲き誇れ、きざはしの七花』
1005/1047

イメージボードを描こう!


 ……とはいえ、現実的な組織運営ばかりでは面白味というものがありません。


 荘厳にして清浄であるべき神殿に面白さが必要なのかについては議論の余地がありそうですが、当の信仰対象の候補者達としては外聞を気にしてばかりの退屈な場所にはしたくないようで。



「痛たた……すまぬ、戻ったぞ。思ったより時間を食ってしまったのだが大丈夫か?」


「ん。全然平気」


「やあ、おかえりシモン君。そんなにお腹をさすって、何か悪いものでも拾い食いしたのかい? やれやれ、まったく、私じゃあるまいし気を付けたまえ」


「レンリのそれはどういう立場からのアドバイスなのだ? まあ大したことはない。コスモスの奴と電話越しに話して散々ボケ倒されただけなので、つまりはいつもの慣れ親しんだアレだ。それよりも今は何をしておる時間なのだ?」



 休憩室のテーブルにはシモンが席を立つ前よりも大幅に増えた料理が。

 さっきルグやライムが買ってきた分は早々に消滅してしまったので、今あるモノについては伯爵邸から馬車が列を成して運んできた料理がほとんどです。今頃は他の出席者達も、頭に大きめの疑問符を浮かべながら別室で栄養補給に励んでいることでしょう。


 ですが、シモンが尋ねたのは別のこと。迷宮達が揃いも揃って、クレヨンや色鉛筆片手に画用紙にお絵描きをしているのが気になったものと思われます。



「実は、キミが留守にしている間にかくかくしかじかでね」


「うむ、完璧に把握した。要するに、これから自分達の神殿を構えるに当たってのイメージボードみたいな物を描いているわけか」



 つまりは、そういった状況です。

 真面目な組織運営も大事ではありますが、地に足のついた話ばかりでは楽しくない。いずれはそういう話題にも向き合わざるを得なくなるにせよ、そればかりでは発想が無難な方向で小さく固まってしまうかもしれません。

 ならば、今のうちはまだ楽しそうな部分だけを無邪気に楽しむのも悪いことではないでしょう。ちなみに画材についてはゴゴが能力でパパっと創って提供してくれました。



『はい、できたわよ! ふふっ、我が一番乗りみたいね』


「おや、ヒナ君早いね。これは船かい? 背景の木とか建物と比べると船舶としては普通の船とは桁違いに大きいみたいだけど」


『ええ、前にテレビで観た豪華客船みたいになってるの。元々、街に面してる海や川に浮かべたり、そういう大きな水場がない所だったら新しく湖でも創って浮かべられるようにしたりとか。それで定期的にあちこち行ったり来たりしたら面白そうだなって』


「うんうん、ヒナ君らしい個性が出てて良いと思うよ」



 一番手で出してきたのはヒナ。

 自分らしい個性をアピールしようとしてか、巨大な船をそのまま神殿とする大胆なアイデアを出してきました。特に動かす用事のない停泊中はタラップを渡したり桟橋をかければ陸との行き来に不便はないでしょうし、見栄えの良さもなかなかのモノ。

 そこに住み込みで勤めることになるであろう神官達の船酔いが心配ですが、そういった現実的な問題は例によって後回し。いざとなればヒナの力で、浮かんでいる水面そのものを完全に固定して揺れないようにしてしまえば大丈夫でしょう。



『完成。披露。やあ、我のも完成したよ。とは言っても、神殿の建物部分に関しては今ある城の流用みたいなものなんだけど』



 二番手はヨミ。

 どうやら彼女は現在の『奈落城』の一部を分割、足りないようなら必要に応じて改築や増築をした上で、あちこちの街や村に置いてそのまま神殿とするつもりなのだとか。住み慣れた我が家そのままですし、新奇性はイマイチでも居心地の良さに関しては悪くないでしょう。これなら既存の住人達も安心です。



『追加。要点。とはいえ、それだけでは芸がないからね。ほら、ここ見て。城の横あたり。近くに霊園を設置してたら、生きている人と死者との交流にも便利そうでしょ。あとは天国や地獄との窓口を引き受けてもいいし』



 いつでも誰でも無制限にとはいかないにせよ、死者との再会が叶うとなれば確実に需要はあるでしょう。現状は大勢の幽霊が住んでいるホラーハウスめいた迷宮ですが、将来は意外に人気の神殿になるかもしれません。



 と、ここまでヒナとヨミの神殿案が出てきました。

 続く三番手が誰かというと……。



『あいっ! だー……だぅ!』


「え、アイ君も?」



 どこまで主旨を理解しているのかは不明ですが、姉達と一緒に元気にお絵描きをしていたアイが手にした画用紙を勢いよく持ち上げました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ