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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
最終章『咲き誇れ、きざはしの七花』
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突撃! サニーマリーの神様インタビュー


 シモンが用事のために席を外したすぐ後のことです。


 コンコン、と。

 またもや休憩室のドアをノックする音が聞こえてきました。



「おや、今度のお客さんはどちら様かな?」



 元より施錠をしていたわけではありません。入室の許可を待つまでもなく扉を開いた来訪者達は、レンリの疑問に元気良く答えました。



「やあやあ」「こんにちは。(ぼく)と」「(わたし)は」「新聞社の者ですが」「ちょっと神様達に取材を」「と思ったんだけど」「なんだか色々美味しそうな」「のがあるねぇ」「そういえばお昼ご飯まだだから」「お腹空いてたの思い出しちゃった」


「なんだ、サニーマリー君じゃないか。まあ取材にせよ何にせよ空きっ腹では頭も回らなくなるだろうし、心の広い私が食べ物を恵んであげようじゃあないか」


「やったぁ!」「レンリちゃん優しいね」「うんうん、優しいよね」「持つべきものは親切な」「友達だね」


「いやいやいや、優しくないし!? むしろ、すっごいワルだし!」



 弱点を突かれて自爆したレンリはさておいて、双子妖精のサニーマリーは遠慮の「え」の字もなくテーブル一杯に広げられたサンドイッチやお菓子を食べ始めました。本人達も言っていたように、スケジュールが狂ったせいでお昼抜きになってしまいお腹が空いていたのでしょう。

 勢いよく食べたせいか「また」パンをノドに詰まらせそうになって、慌てたルカから手渡されたグラスの水で九死に一生を拾ったりしています。



「そういえば、お昼抜きは他の人達も一緒か。本当なら今頃とっくに伯爵さん家にお邪魔して、そのまま夜までぶっ通しで豪勢な打ち上げパーティーをやるはずだったもんね。ていうか、それなら休憩時間をちょっと延長してここにいない人にも食事や飲み物を摂ってもらったほうが良くない?」


『そうだね、若い私。空腹のあまり貧血で倒れられたりしても困るし、それにせっかく用意した料理が無駄になるのも料理人さんやお百姓さんに悪いからね。いっそ伯爵さんに頼んで、お屋敷からここまで料理の出前をしてもらってはどうだろう? ふふふ、これは別にパーティーの豪華な料理を味見したいとかの私利私欲ではなくてね』


「そういうワケだから、ルー君や」


「はいはい、伯爵さんを探して頼んでくればいいんだろ?」


『さっすが、ルー君。話が分かる! 式典の出席者の中にいたはずだし、あの人の体格ならすぐ見つかるでしょ。そうそう、もし頼んで渋られそうならウル君達の名前を出せば大丈夫だと思うから』



 そんなこんなで休憩の延長と料理の追加(おかわり)が即時決定。

 まあ常人のメンタルでは食事のために抜けるとも言いづらいでしょう。もしかすると食欲自体あまり出ないかもしれませんが、ちょっと強引にでも食べさせておくぐらいが健康のためには良いはずです。



「その間にこっちはサニーマリー君の話を聞いてようか。取材とか言ってたっけ?」


「うん」「取材に来たの」「だって」「こんな世紀の大事件に」「居合わせる機会なんて」「もう絶対に」「ないと思うし」「そういうワケなので」「神様」「あ」「ウルちゃん達じゃなくて」「白くて綺麗な」「大人の女神様ね」「今のお気持ちをどうぞ!」


『えっ、わ、わたくしですか!?』


「そりゃあ他にいないだろう? とはいえ、ちょっとステイだサニーマリー君。取材なら専属マネージャーの私を通してくれたまえ」


「えっ、レンリちゃんって」「神様の」「マネージャーさんだったの!」「すごいすごい」「これはこれでスクープだね!」



 さて、サニーマリーの目当ては女神への直撃取材。

 あまりにも大胆な発想です。もし実現できたら歴史に残る大スクープ間違いなしの特ダネですが、これについては勝手にマネージャーを自称するレンリから「待った」がかかりました。



「そうも素直に信じられると調子が狂いそうだけど、そのあたりの真相パートは休憩明けに他の人達の前でやるって話だったでしょ? 気持ちは分からなくもないけどさ、キミ達だけ先にネタバレってのはよろしくないからね」


「そっかぁ」「残念」「じゃあ代わりに」「他の人とか」「他の神様とか」「他の剣への」「インタビューならどうかな?」


「ふむ、せっかく来てくれたのに手ぶらで帰すというのも悪いし、質問された本人がいいって言うなら別に構わないんじゃない? キミらが誰に何を聞いて、その相手がどう答えるのかちょっと気にならなくもないし」



 女神への直接取材こそ断られましたが、他のメンバーへの質問ならレンリとしても特に断る理由はありません。なんなら丁度いいヒマ潰しになりそうだとでも思ったようです。



「じゃあ」「まず誰から」「聞こうか?」「選り取り見取りで」「迷っちゃうねぇ」



 シモンとルグが席を外しているので、現在この部屋にいるのは女神プラス迷宮で神々が八柱。運命剣が一本に、勇者であるユーシャが一人。女神と同じ肉体を共有する神子が一人。そこにレンリとルカとライムを加えると、サニーマリー自身を抜いても計十四もの柱やら本やら人やらがいるわけで。

 無闇に数え方の単位がバラけてややこしいことになっていますが、誰に何を聞いても興味深いインタビューになりそうです。記者の立場としては、こんなにも恵まれた状況はもう二度とないでしょう。誰を優先すべきか迷ってしまうのも無理はありません。



「あんまり迷いすぎて、ロクに話も聞けずにタイムオーバーってオチにはならないようにね」


「うん、気を付けるね」「そうだなぁ」「迷っちゃうけど」「最初は」



 凄まじい能力を持っているとはいえ、今この場にいる面々の中ではさほど重要度が高くないルカやライム。それから神ではあっても赤ん坊ゆえに会話らしい会話が困難なアイ。この三者を候補から省いて、その中からサニーマリーが真っ先にインタビュー対象として指名したのが……。



『あら、上手にお答えできるでしょうか? くすくすくす』



 「読めなさ」という点では迷宮の中でもアイと並ぶツートップの一角。

 まさかまさかのネムが栄えあるインタビュー第一号に選ばれました。


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