1本目 廃部寸前の園芸部
「はぁぁ!?」
夕日の光で紅く染まった花ヶ丘学園の生徒会室に私、二年紅月かおるの声が響いた。
「どういうことですか!!?」
私が、叫ぶようにして言うと生徒会長の同じく二年泉川あげはが微笑むようにクスッと笑って、
「今言った通りよ?」
会長は指を組みその上に顎をのせた。
「花ヶ丘学園園芸部は、来年部員減少により廃部よ」
「…っ!納得出来ない…!」
「…そうね…じゃあ、4月の部員勧誘会であなたを含め部員を3人以上集めなさい」
「えっ」
さ、3人以上…!?
「うちの学園小中高一貫校だからすぐに見つかるでしょう?」
会長は座っていた席を立ち窓辺の方を向いて立つ。
そして、こちらを向きながら次の言葉を放った。
「3人以上集められたら考えてあげても良いわよ?」
(めっちゃ上から目線ー!!む、ムカつくわー)
「ふっ、い、良いですよ?絶対部員見つけてやりますから!!」
「あら、そう、せいぜい頑張りなさい?」
会長はニヤッと笑って言った。
(ふん!絶対見つけてやるよ!!)
「は〜…どうやったら部員って来るんだよー」
廃部宣告された次の日の朝。私は、教室の自分の席に座って呟いていた。
うちの学園は勉強よりも部活の方に特に力を入れている。その為、クラスも部活ごとに分けられているんだ。私が所属している園芸部は、部員が私一人だから帰宅部と同じクラスとなっている。
…まぁ、うちの園芸部も前は先輩がいたから正式な部活として認められてたんだけど…
部員が私一人になってしまった今帰宅部と同様ゴミの様な扱いを受けていた。
正直言って、私には友達という友達が居ない訳で…部員勧誘も私一人でやらなきゃいけない訳で…
「あー!!もう!どうしようー!!」
私が頭を抱えていると、
「何やってんのよ、さっきから…」
「あっ、こよみちゃん!おはよう!」
「おはよ…」
後ろの席の紫崎こよみちゃん。背が高くて、クールな子。本人曰く思ったことをすぐ口に出しちゃうから話しかけられにくいらしい。実際私も、話し掛けるまで時間かかった。
「いやぁ、実は昨日生徒会長から廃部宣告されましてですね…」
「…」
「だから、こよみちゃん!園芸部入らない!?」
「却下」
は、速い…
「部員勧誘会で集めれば?」
冷めた声で話すこよみちゃん。ふっ、仕方ない…あの手を使うか…
「あっ、でも〜葉月君が入ってくれればこよみちゃんも入ってくれるよね〜?」
私は、自分でも分かるくらい顔をニヤニヤさせて言った。
「は、はあぁ!!?な、ななななんであいつが出てくんのよ!それにあいつが入る訳ないじゃない!」
こよみちゃんは、今にも爆発するんじゃないかというくらい顔を紅潮させて叫ぶようにして言うと
「ん〜?俺がどうかしたー?」
…本人の声が。
「は、葉月!」
「こよみ、紅月さんおはよう」
「葉月君おはよう」
「…おはよ…」
彼は、水野葉月君。爽やか系の普通にイケメン。眼鏡を掛けていて、左目を前髪で隠している…厨二病らしい。そして、マザコン。…まぁでも、良い方のマザコンなんだってこよみちゃんが言ってた。
…良い方って何だ…?マザコンに悪い方ってあんの…?うん、それは良いとして…
「葉月君!園芸部入らない!?」
「えっ!?あー部活入りたいのは山々なんだけど…」
そう言うと葉月君は、下を向いてしまった。何か深刻なことでもあるのだろうか。
「実は……」
私は、息を飲んだ。
「アニメをリアルタイムで見なきゃいけなくてさ」
…はぁ?いや、意味分かんねぇよ!?録画じゃ駄目な訳!?
「あのね!?この学園、略して《花園》とか言われてるけど花一本も咲いてないんだよ!?」
「えっ、そうなんだ」
「うん、そうだよ!?」
「木があるんだし良くない?」
「良い訳ないでしょ」
おかしい……花が咲いてない学校なんて…他の学校は花がたくさん咲いていて…
「どうするつもりなの?このままだと廃部になるわよ?今、1月よ?」
「あ、あと3カ月……⁉︎」
「え。それやばくない?」
だから、入れっつってんだろ。この厨二野郎。
「もう1度聞くけど…2人は入る気ないの!?」
「私は…今はない」
「俺も〜…」
「今は……?」
“今は”って事はいずれ入るって事だよね…?
それが嬉しくて私はこよみちゃんに思い切り抱きついた。
「本当!?」
「はぁ!?入るとか言ってないんけど」
「ははは、そうだね」
「へへっ、でもさ!“今は”って言ったから!!」
「べ、別にそんな…」
「こよみ、顔赤くなってるよー」
葉月君はニヤニヤしながら言った。
「うるさいわよ、葉月!!」
私の周りはいつも賑やかでとても楽しいです!
そんな楽しい部活創れるようにまずは部員集め頑張りたいと思います!!