錦町ひかり、大宮に立つ
鉄道の街、大宮――――
人々はそう呼ばれている。
東京方面から来た中距離電車や京浜東北線が一斉に荒川の鉄橋を渡り、埼玉県に入る。県庁所在地さいたま市の二番目に人口の多い川口市は中距離電車でさえスルーする。その代わり埼玉県庁のある浦和を通り、その後さいたま新都心を経て大宮に着く。
いろんな列車が次々と大宮を行き交じる。最新鋭のE233系に東武60000系、東武100系、634型スカイツリートレイン、E231系、電気機関車のEF64、65、66、81、210、EH200に500、ディーゼル機関車のDE10、11、DD51など様々な列車が大宮をいつも通りに停車あるいは通過する。
それもそのはず、大宮駅を中心に東西南北と線路がまるで花火のように散りばめられている。このように東西南北と各方面から様々な列車が大宮を往来しているのだ。
さらには東北、上越、北陸そして北海道まで行く新幹線の停車駅でもあり、そのため大宮は『鉄道の街』と呼ばれているが、それだけには留まらない。付近には操車場や鉄道工場まであり、さらに工場の北には『鉄道博物館』という鉄道関連の展示物・資料等が集まる博物館もあり、いわば『鉄道の全て』が大宮で揃っているのである。
今でも大宮は埼玉県最大の繁華街であるが、付近にこうした鉄道関連施設があるためか、駅周辺の人口の約4割が鉄道関連の職員が集う街なのである。
東京方面行きの新幹線に一人の少女が大宮の駅に降り立った。「ここが大宮ですね・・・」と一言呟きながら、濃いピンク色のカートを引きエレベーターのほうに向かった。
二つの自動改札を二~三枚の乗車券でスムーズと通り抜け、彼女が待ち受けたのは左右に行き交う無数の人々であった。彼女は少し戸惑い顔を見せて、すかさずこれまたピンクで小さなぬいぐるみのストラップを付けたスマートフォンを取り出し地図を確認した。
「え~っと、場所は大宮区・・・」
少女はスマートフォンに書かれている住所を読み上げ、地図便りにとりあえず一番の手掛かりらしい西口の方へ歩いた。