没展開「中らずと雖も遠からず」
最初は、こちらの方向で延々と執筆していました。
「お前は、魔物の生まれ代わりだよ」
その台詞を、少女の祖母は事あるごとに告げた。
少女の琥珀色の瞳は、ふとした光の加減で金色に輝く時がある。
金の瞳は、魔物の徴。姿を真似て人にまぎれ、災いをもたらす。
今では廃れた、そんな古い言い伝えがある。
迷信深かった祖母は少女を忌み嫌い、気に入らぬ嫁をなじった。
「お前は、いつか魔物に化けるよ」
執拗に同じ台詞を吹き込まれ、幼かった頃の少女はそれを信じた。
いつか全身毛むくじゃらになり、爪が伸びて牙が生える。
そんな悪夢にうなされ、ベッドで跳ね起きたこともある。
そんなものは迷信だと、大人達は少女の不安を笑い飛ばした。
逆に否定されれば否定されるほど、少女の心は頑なになった。
誰も真剣に相手をしくれないと、悔しさと不信感を募らせたのである。
そんな少女の前に、彼女は現れた。
やがて親友になった彼女に、少女は自分の秘密を打ち明けた。
いつか自分は、魔物になると。
他の大人達と同じように笑われることを、少女は恐れた。
しかし親友は真剣な表情で考え込んだ。
そして後日のこと。
「これをつけていれば、だいじょうぶだよ!」
親友は、毛糸で編んだ腕輪を少女にプレゼントした。
この腕輪を身につけていれば、たとえ魔物になっても少女であると分かる。
そう自信満々に告げた親友の笑顔を、少女は今でも鮮明に覚えていた。
やがて数年が経ったある日のこと。
その親友が血相を変え、少女の実家であるパン屋を訪れた。
「どうしようキアラちゃん!」
店先で出迎えたキアラに、親友は必死の面持ちですがり付く。
「ヨシタツさんにハダカ見られちゃった!!」
うろたえる親友を、キアラはそっと抱き止めた。
優しくリリの頭を撫でながら、キアラの瞳が金色にきらめいた。
重い話になりそうだったので、全面改稿しました。