第一章 エピローグ
セレキアの町で大規模なシャ-ル・ヴィエルジュによる闘技大会の噂は意図的に広められ王都アッペティートの軍勢を呼び寄せる事になった。
くすんだ黄色のシャ-ル・ヴィエルジュ=フランチェスコが300体セレキアの町へと進行するが迎え撃ってくる者はいない。
町門が破壊されるとフランチェスコが一斉に町の中へとなだれ込みそれを狙ったように矢がそこかしこから放たれてくる。
シャ-ル・ヴィエルジュの装甲を貫く威力も無いことから無視してフランチェスコは町の中心に進んで行く。
突如の落とし穴に数対が落ちて中のトリモチに絡みつかれ身動きがとれなくなる。
そこからは落とし穴を潰しながら慎重に進むことになる。
ときおり前方から電撃が飛び交ってくることが町のシャ-ル・ヴィエルジュの存在を物語る。
フランチェスコの1体が右手のヴィブラシオンを電撃の放たれる方向に投げつける。
崩れた建物の中にはディエスアムの無いエペ・クウランがコードに繋がれているだけである。
事態のおかしさに気付き始めた頃町の各所から一斉にブリュレ粒子が放出される。
1度撤退するべきだと言いだす者が現われ混乱しつつある中で町を隅々まで探索するよう命令が下る。
300体のフランチェスコが慎重に町の中心付近から探索に散ろうとする中で地下の工房に設置されていた反応炉が爆発を起こしセレキアの町ごと300体のフランチェスコが炎に飲み込まれていく。
セレキアの町を犠牲にしたとはいえ町の住人の避難は終えていた。
合わせて工房などの重要な施設も町からの退避を終えている。
ウェストゥ地方で精力的に町や工房それに冒険者を襲っていた王都アッペティートに大打撃を与えるための大規模な作戦は成功といてもよい戦果をあげることに成功した。
これにより王都アッペティートが軍を再編するまではしばらくの猶予を得られる事であろう。
作戦の戦果を見届けると3長老は全員に撤退を指示する。
王都アッペティートの王城その謁見の間では肥満した体の男女が豪勢な料理を貪っていた。
扉が開くと同じく肥満した男が宙に浮く円盤に乗って現われる。
その体型からおそらく満足に歩くことができないのでそのようなものに乗っているのであろう。
「セレキアの町の件でご報告いたします。
派遣した騎士達300人は町ごと炎の中に消えてしまいました。
どうやら罠だったようですな」
玉座のあるべきその場所で一際肥満したもはや性別も分からない肉の塊が声を発するが空気の漏れるような音にしか聞こえない。
傍に控えている明るい小麦色の髪をしたヴィエルジュが翻訳して話し始める。
「騎士の代わりなど幾らでも見つけられるでしょう。
王都に住まわせてあげるといえば幾らでもね」
「はい、シャ-ル・ヴィエルジュの予備もありますれば。
問題は無いかと考えます」
「それまでは従属させている王都に代わりをさせなさい。
そうそう騎士の家族で使えない者は牧場で処分するのを忘れないように。
家畜の餌や野菜の肥料なども貴重なものですからね。
無駄なく再利用するように」
「分かりました、では早速手配いたします」
扉の向こうに男が消えると肉の塊は料理を貪るのを再開する。
とはいえ手を動かす事もできないので傍にいるヴィエルジュが口に運ぶ。
肉の塊から空気の漏れるような音がするとヴィエルジュは笑顔を向けて、
「こちらですね、先ほど捌いたばかりで新鮮なお肉だとうかがいましたよ」
そう言うと肉の刺身ののった大皿を手に取り肉の塊の口に運ぶ。
「おいしいですか、そうですかよかったです」
謁見の間には次から次にへと料理が運び込まれ終わることの無い食事が続けられていく。