第19話
登場人物
アルドル・ル-ク・ソラリス 18才 騎士 本編主人公 明るい茶色の髪、身長180cm
リムニ・アニマー 15才 騎士 肩まである茶色ぽっい黒髪 自称身長150cm
オニロ・エルピス 19才 アルシミ- 首まである金髪、身長169cm
ディレッタ・マーレル 20才 騎士 腰まである赤い髪を編んでいる 身長178cm
ル・リルル 年齢不詳 フェアリーの少女 淡いピンク色の髪 身長10cm
メキル 年齢不詳 ヴィルジニテ 肩より長い黒髪 身長170cm
セレアル・オリジャ 17才 ソルセルリ-・アルシミ- 肩まである明るい小麦色の髪 身長160cm
月明かりの大地を震わせて鋼鉄の巨人シャ-ル・ヴィエルジュ=アネモスが倒れる。
大地の上には4体のアネモスが地に伏しており立っているアネモスは3体だけとなる。
オルケンはあらためて4体のアネモスを倒したシャ-ル・ヴィエルジュ=エクリクスィを見つめる。
見た目の重装甲に反して機動性も高く攻守ともに優れた鎧である。
「だが、何よりも騎士の腕も素晴らしいな。
あの若さでこれほどの腕を持っているとは、さぞや厳しく鍛えられたのであろう。
ジュリア、ここまでだ降伏するぞ」
「ウィ、モア・マ-テル」
オルケン=アネモスが白い発光弾を打ち上げる。
エクリクスィの操縦室でディレッタは息を吐くと降伏を受け入れるべく剣をおさめる。
アネモスが戦闘圏内を離れる前に無作法であるがディレッタはその場をあとにする。
倒れているアネモスの救助を急がせるためである。
真意を読み取りオルケンは戦闘圏内を出る前にその場に留まる。
「彼女に感謝せねばな。
ルセット、バーンズ、距離を維持しながら戻るぞ。
ジュリア、エスカルゴを誘導してくれルーリス達を収容する」
「ウィ、モア・マ-テル」
倒れているアネモスの傍までくると胸の装甲が展開して操縦室からオルケン、ルセット、バーンズが地上に降りる。
手分けして倒れているアネモスの操縦室に駆け寄るオルケンにジュリアが呼びかける。
「オルケン様、こちらに近づいてくる車が複数確認できます」
「彼女達は確かエスカルゴが1台だったな」
「はい、退きあげていった方向とも異なります」
「ルセット、バーンズ、すまんが2人でルーリス達を助け出してくれ。
私はアネモスで警戒にあたる」
「分かりました、こちらはお任せください」
オルケンがアネモスに戻ろうと振り返ったそのとき月明かりを遮りながら落ちてくるそれに気付く。
「っ!なんだ・・・」
刹那、それは地面に落ちると轟火と爆風を渦巻かせてオルケン達を飲みこんでいく。
まだ薄暗い夜明け前エスカルゴのリビングのメインモニターにその光景が映しだされる。
黒く焼け焦げた大地に炭と化した数人の遺体が横たわっている。
ダアアアァァァッン!
テーブルを叩きつけるその音にその場の全員がディレッタに目を向ける。
「あの、これっていったい・・・」
「ブリュレ粒子よッ!
恐らくドラム缶か何かに詰めてカタパルトで打ち出したのよっ」
ケイトのその疑問に苛立ちを隠さずにディレッタは答える。
「メキル、周囲には他に誰もいないの」
「レ・ジュー・ヴォラン(各種センサーを内臓した自動飛行監視機)では何も捉えられていません」
リムニの問いかけにメキルが答える。
「シャ-ル・ヴィエルジュの姿が見えないってことはやはり奪われたって考えるべきですね」
ルインズの声に答える者は誰もいない。
重苦しい雰囲気が室内を満たす中でディレッタが口を開く。
「ひとまず彼らを埋葬しましょう。
このまま野ざらしにさせる訳にはいかないわ」
「手伝います」
「私も」
ルインズとケイトがそう答えるとディレッタはリムニを振り返り。
「リムニはメキルと一緒に周囲を警戒していて一応医務室のセレアルにも状況は伝えて。
オニロは手が離せないでしょうからいいわ」
「分かった、気をつけてね」
ディレッタが階段から下に降りるとルインズとケイトが続く。
エレベーターだと整備格納室に直接降りるのでオニロに遠慮してのことである。
話は昨日の夕刻頃アルドルとの決闘で敗れたダグラス・クロウウェルの弟子ルインズ・アーウィンとケイト・ステュアートへと戻る。
バイクに跨りルインズとケイトは夕日に照らされた荒野を走り続けていた。
ことの発端はアルドルとの戦いのあとルインズとケイトはダグラスからの連絡が取れなくなったことで戦いの結果を知る。
近くの町で待機していた仲間に合流してエスカルゴでダグラス達の遺体とシャ-ル・ヴィエルジュの回収に向かったルインズとケイトが目にしたのは荒野に打ち捨てられたダグラス、マルロ、ケインズ、アイリスとそのパートナーたるヴィエルジュ、イスカ達の遺体であった。
4体のシャ-ル・ヴィエルジュの姿は無く奪い去られたのは明白であった。
奪われた時間の早さと手際の良さからケイトはアルドル達に疑いを持ち追いかけると言いだしてルインズは諌めながらも結局は同行することになったのだ。
エスカルゴでは目立つこともあって仲間と共に2人のヴィエルジュのメルセデスとビアンカとも別れてバイクで荒野を走り今に至っているのである。
「ちょっと待って、ケイト。
誰か倒れている」
方向を変えるルインズに慌てながらもケイトもその後へと続く。
しばらく走りケイトも気付く半ば砂に埋もれるように子供らしき人影が倒れているのである。
「生きているのかしら」
「砂の被りかたから半日は過ぎているかも知れない。
急ごう」
子供のもとに駆け寄ってルインズは砂を払い気付く。
「腕を斬られている。
血止めだけはされているけれど・・・。
包帯を巻きかけてそのままだね」
「他に外傷はないよね」
「他に手当てをした誰かがいたみたいだけど・・・。
その人は何故途中で手当てを放り出したんだろう」
「それよりも動かしても良いなら早く運んだ方が良いよ」
「そうだね、頭を殴られた痕も無いし脱水症状が酷い。
町まで持つかな」
「ここからだと遠いわよどの町も」
「仕方が無い、このまま追いかけよう。
その方が早いよ」
「あの人達を頼るっていうの」
「ケイト、先生も言ってただろう。
騎士なら何があっても戦場や決闘のわだかまりを他には持ち込まないって」
「でもあの人達は先生やみんなのシャ-ル・ヴィエルジュを奪ったのよ」
「それはまだ分からないことだよ。
どのみちここからだとどの町も半日以上かかるんだ。
手遅れになってしまうんだよ」
「分かったわ、ルインズ。
あの人達を追いかけましょう。
どのみち先生のことも問い質さないといけないわけだし」
「うん、行こうケイト」
背中に男の子を縛ってルインズはケイトと再び荒野をバイクで駆け走る。
ルインズとケイトがアルドル達に追いついたのは陽も暮れて日にちも変わる時間であった。
戦意の無いことを示すためにルインズが腰のエペ・クウランをケイトに手渡し両手を上げて歩み寄ると拡声器を使って女性の声で目的を尋ねられる。
「僕達は先日そちらのアルドルさんと戦ったダグラス・クロウウェルの弟子ルインズ・アーウィンとケイト・ステュアートといいます。
今回お尋ねしたのはお伺いしたいことがあったのとお願いしたいことあるからです。
勝手ながらこの子の治療をお願いしたいのです。
腕を斬られて半日以上も荒野で倒れていました。
どうか、何卒お願いします」
ルインズが頭を下げその後でケイトも頭を下げる。
「分かりました、しばらくお待ちください」
それだけを言って通信は切られる。
「ちょっと、冷たすぎない」
「仕方が無いよ、今は誰に襲われるかも分からない状況だし。
それに決闘続きで休んでいられる時間も限られているだろうからね」
「ああ、そうかもう遅い時間だし私たちが襲いかからない保障もないもんね」
「そうだね、とにかく信じて待とう」
ルインズの言葉にケイトも待つことにする。
しばらくすると声がかけられルインズとケイトはエスカルゴの左側にまわる。
既に扉は開いておりリムニとセレアルが2人を出迎える。
ケイトはルインズと2人のエペ・クウランを預けようと柄を向けてリムニに差しだす。
戸惑いながらもリムニはエペ・クウランを受け取り医務室に案内する。
途中でアルドルが起きてきたのに出会いリムニの手の2振りのエペ・クウランに気付くとその必要は無いと言う。
ルインズとケイトは驚きながらもリムニが返す2振りのエペ・クウランをケイトが受け取る。
医務室に案内されアルドルがルインズから男の子を受け取り病室に運ぶ。
脱水症状から点滴をうつことにしてそれからオニロが来るのを待つことになる。
焼け焦げたオルケン達騎士の遺体の埋葬を終えてディレッタとルインズとケイトの3人が戻ってくる。
メキルが入れたお茶を飲んでようやく少し落ち着いたディレッタが口を開く。
「これで誰かは知らないけれど私達をつけて火事場どろぼうの真似事をしているのは間違いないわね」
しばらくの間のあとに口を開いたのはリムニである。
「これってやっぱりどこかの町に売るのが目的なのかな」
「断言はできないわね。
相手が何者なのかも分からないのだから。
とにかくイカレタ連中なのは間違いないわ。
子供相手に腕を斬り落として騎士が大勢と分かればブリュレ粒子を放り投げる。
どのみち戦いで負けた者の身包みを剥ぎ取るなんて騎士のすることじゃないわ」
ディレッタにしては珍しく感情を隠さずに怒っているのは彼女が騎士として厳しく育てられたからこそである。
シャ-ル・ヴィエルジュの輸送それも3体以上となると少なくともエスカルゴを使っていることになる。
通りがかりに奪っていくには大きすぎることとブリュレ粒子を使っていることから準備を整えたうえでの計画的な犯行であることも想像できる。
腹立たしさがおさまる訳では無いがこのような時代である明日食うことにも困った者が発作的に奪ったのならまだ分かるが計画的に行っているとなれば悪意があると考えるしかない。
それに子供の腕を斬り落としたことからも騎士の関与は間違いないであろう。
騎士が負けた者の身包みを剥ぎ取っていく、それも戦いが終わったその隙を狙って自分ではまともに戦わずにである。
「もう夜が明けるわね。
リムニは休んだほうがいいわね。
ルインズとケイトもね、部屋を用意するわ」
「分かったわ、じゃアタシが案内するわね」
全員で起きていては休む間もなくなるので本来ならリムニももっと早くに休ませるべきであったが事態の全容が分からないうえにオルケンを襲った者もまだ近くにいる可能性もあった。
仕方なくアルドルだけを休ませて起きていたのである。
リムニとルインズとケイトを見送るとメキルに周囲の警戒をお願いしてセレアルと交代すべくディレッタは医務室へと向かう。
運ばれた男の子はまだ目を覚まさないが意識を取り戻せば腕を斬り落とした相手だけでも分かるかもしれない。
それがどのような相手であろうとディレッタには許すつもりは無かった。
男の子が目を覚ますのはその日の夕刻であったが話が聞けるようになるには翌日まで待つことになる。




