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オリゾン・ドゥ・クレプスキュール ~白き極光のアルドル~  作者: 戎・オマール
第二章 明日への麦秋 ~La saison de récolte d'orge pour suivre demain~
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第9話

登場人物


 アルドル・ル-ク・ソラリス 18才 騎士 本編主人公 明るい茶色の髪、身長180cm

 リムニ・アニマー  15才 騎士 肩まである茶色ぽっい黒髪 自称身長150cm

 オニロ・エルピス  19才 アルシミ- 首まである金髪、身長169cm

 ディレッタ・マーレル 20才 騎士 腰まである赤い髪を編んでいる 身長178cm

 ル・リルル 年齢不詳 フェアリーの少女 淡いピンク色の髪 身長10cm

 メキル 年齢不詳 ヴィルジニテ 肩より長い黒髪 身長170cm

 グランを見送って昼をまわった頃にリビングのメキルからの拡声器でそのことが全員に伝えられる。

 アルドル、オニロ、リムニ、ディレッタ、リルルがすぐにリビングに集るとメキルが状況の説明を始める。


「レ・ジュー・ヴォランが音声を流しながら飛びまわっているのですが、まずはその音声をお聞きください」


 メキルが録音した音声を流す。


「おいっ、一昨日俺の指を折ってくれた奴聞いているか。

 レブランカの王都のギルスだ。

 おっさんをを捕まえてあるからな、さっさと俺達のところに来いよな」


 メキルが音声を止める。


「あとはひたすらこれを繰り返しています」


 ディレッタが頭を抱えながら、


「正気なのこんな目立つ事をして他にどんな連中が集るか考えてないの」

「まあ、考えていればこんな事はしないよな」


 オニロも呆れながら答える。


「グランさんが心配だ、僕がヴァン・ブランシュででるよ。

 みんなはこのままエスカルゴのステルス機能を維持したまま追いかけてきてくれ」

「それしかないか、気をつけろよアルドル」

「気をつけてね、アルドル」

「私も格納室で待機しているわ」


 アルドルとディレッタが格納室に降りていくのを見届けるとオニロもリビングからエスカルゴを操作する。

 装甲シャッターが後部からリビング覆っうように包んでいき暗くなっって行くリビングに証明が灯る。

 

「グランさん、大丈夫かな」

「確かに心配だな、ここまで考えなしで行動する連中とは思わなかったからな。

 やはり無理にでも村まで送るべきだったか」


 オニロは少し苦い表情をしながらモニターに周囲の様子を映していく。

 格納室に降りるとアルドルは白い大型バイクに跨りディレッタが扉を開ける。

 アルドルが出て行くのを見届けるとディレッタも上着からアマトゥールを取りだす。

 ディレッタの手を離れ宙に浮くとアマトゥールを中心にクリスタルフィールドが形成される。

 アマトゥールを内部に包み込むように亜空間に圧縮されている紅のシャ-ル・ヴィエルジュ=エクリクスィが姿を現す。

 壁のコンソールのモニターの前に移動するとディレッタはモニターにエスカルゴの周囲の状況を映しだし準備を終える。




 アルドルが大型バイク=ヴァン・ブランシュで外に飛び出してしばらくすると1機のレ・ジュー・ヴォランがその前に飛んでくる。

 発光信号でついてくるように指示をだしてアルドルを誘導する。

 録音した音声を流せるだけで通信装置の類は積んでいないのであろう。

 誘導されるままに走り続けること2時間ほど陽も傾いてきているが夕暮れにはまだわずかに時間がある。

 前方に数台の車が停まっているのが見える。

 アルドルはエペ・クウランを抜くと上着の内側にいれてヴァン・ブランシュから降りる。

 数人の男女の若者の人垣をかき分けてギルス、ナルクス、ジニファ、ディジー、ルルカが姿を現す。


「やっと来たのかよ・・・」

「グランさんはどこにいる」

「誰だよそれ・・・」

「あのおじさんじゃないかな」

「ああ、それならまだ生きているぜ」

「どういうことだ、グランさんに何をしたんだ」

「ちょっと剣が刺さっただけだよ。

 面倒だな誰かつれてきてやれよ」


 両脇を2人の男に抱えられてグランが引きずり出されてくる。

 その胸には布が適当に巻きつけられているだけで血も溢れ続けている。


「これでいいだろう、この手の礼をさせてもら・・・」


 その言葉はアルドルから放たれた殺気で遮られることになる。

 腰を抜かして尻餅をつきギルスは失禁しながら体を震わせている。


「何をしている、早くそいつを捕まえろ」


 ナルクスのその言葉に若者達は一斉にアルドルを取り囲み剣を抜き放って襲いかかる。

 アルドルは素手で足を払い腕を折るだけで次々と群がる若者達を地に沈めていく。

 

「そこまでだよ、おとなしくしないとこのまま刺しちゃうよ」


 ルルカがグランに剣を突きつけてアルドルに言い放つ。

 

「ほら何してるんだよ、早くやっちまいな」


 動けないでいるアルドルに若者達が距離をつめて迫る。

 それでも警戒しているのかなかなか斬りかかる者はいない。


「仕方が無いな、俺がやってやるよ」


 ギルスが若者達をかき分けて前に出てくる。

 

「奇妙な小細工をしやがって卑怯者がっ」


 そう言うとギルスは剣を振り上げるが刹那、硬直したかと思うとそのまま後に倒れ込む。

 その頭には穴が穿たれており血が溢れている。


「ギルスッ!」


 続いてグランに剣を突きつけているルルカと脇から抱えている若者2人が撃たれる。


「狙撃かっ、どこから」


 とまどい困惑する若者達に次々と拳を放ってアルドルはグランに駆け寄る。


「っひ引き上げだっ!」


 ナルクスのその言葉に若者達が車に乗り込んで逃走をはじめる。

 アルドルはグランを抱き起こすが助からないのは目に見えて明らかである。

 

「グランさん、アルドルです。

 分かりますかっ」

「っあああ、ティレア、セレアル、今かえったぁ・・・」

「グランさんッ!」


 アルドルの叫びが乾いた荒野の上を風と共に流れていく。




 ナルクス達が車を走らせているとその前方に腰まである赤い髪を背中で編んだ女が1人荒野に立っているのが見える。

 逃げる事に必死になっているナルクス達はそのまま女に向けて車を走らせる。

 右手のエペ・クウランを前に向けると迫る車の下のブリュレ粒子を詰めた筒にディレッタは電撃を放つ。

 電撃は筒を容易く破壊しブリュレ粒子に引火すると大爆発を起こして炎と爆風が車を飲み込んでいく。

 

「派手にやったな」

「アルドルは優しいから、自分よりも弱くて騎士ともいえないこいつ等は殺せないでしょう」

「まあ、だからってお前さんが1人で背負う事もないさ」


 そう言うとオニロは生き残って車から這い出てくる若者をその手の狙撃銃で次々と撃ち殺していく。

 騎士の反応速度なら避けるのは容易かろうがケガをしてまともに動けないうえに撃たれていることにも気付かない相手なら当てるのは簡単であった。

 最後の1人の両足の脛を撃ち抜くとオニロが声をかける。


「おっとぉ、動くなよ。

 今俺の横にはお前らとは違って本物の騎士様がいるからな。

 逃げてもこっちにきても死ぬぜ」


 逃げる気力もないのを確認してオニロは話を続ける。


「王都レブランカはここから随分と北なんだろう。

 お前さん達はこんなに大勢で何をしにきたんだ、教えてくれないかな」

「この辺りにあるディミトリの町に大勢の人間が集められているんだ。

 それで俺達に詳しい事を調べてくるようにと命令がでたんだ」

「この辺りを縄張りにしている訳でもないお前達がなんでディミトリの町を気にするんだ」

「知らない、それ以外の事は本当に何も分からないんだ」

「王都ができてまだ30年も経ってないんだったか。

 普通ならそんな町よりも他の王都を警戒するよな」

「そうね、だからこそシャ-ル・ヴィエルジュも持っていないこの連中が派遣されたんでしょうから。

 王都ができてから日も浅いなら数も多くないわけで王都の守りから外す事もできないでしょうし」

「結局、謎は残ったわけだ」

「こんな連中ならしょうがないわ。

 任務よりも物見遊山気分で戦いも知らないんですから」


 オニロとディレッタが話している今が好機と思ったのか男は走って逃げ出すがその後頭部から額をオニロの放った弾丸が貫く。




 アルドル、オニロ、リムニ、ディレッタ、リルル、が村に入ると人の気配は無く手分けして家を見てまわるが誰1人見つけることはできなかった。

 

「野盗に襲われたって感じじゃないね」

「どっちかっていうと村ごと逃げ出したって感じかな。

 荷物もある程度持ち出しているからな」

「ひとまずグランさんをどこかに埋めてあげよう」

「ああ、そうだな」


 村の端に共同墓地を見つけるとアルドル達はグランをそこに埋葬する。

 アルドル、オニロ、リムニ、ディレッタ、リルルは静かに冥福を祈る。


「もしも、あの時に僕が助けなければグランさんは殺されることは無かったのだろうか。

 それとも僕が彼らを・・・」


 そこから先をオニロが遮る。


「もしも、なんってのは責任逃れの都合のいい言い訳さ

 少なくともグランさんはアルドルに感謝していたそれだけは確かな事実さ」


 アルドルにはオニロの言葉に返せる言葉を今は見つけられなかった。


「んっじゃ、手伝うぜ」


 オニロのその言葉にアルドルが振り向く。


「捜すんだろう、グランさんの家族を」

「でも、それは僕のこじんて・・・」


 そこから先をオニロはアルドルの額を軽く指で弾いて止める。


「仲間なんだろう俺達」

「そうよ、遠慮も水臭いのも無しよ」

「一緒に捜させてねアルドル」

「私も手伝うよ」


 オニロ、ディレッタ、リムニ、リルル、が笑顔でアルドルに答える。


「ありがとう、オニロ、ディレッタ、リムニ、リルル」


 それからアルドル、オニロ、リムニ、ディレッタ、リルルは手がかりがあるとすれば文字の書ける村長の家だろうと当たりをつけて遅くなるまで隈なく捜してまわる。




 王都レブランカはウェストゥ地方でも新興の王都である。

 王に次いで騎士がその権勢を振るい一般人を奴隷とする階級社会を形成している。

 このため騎士が多く集められているがシャ-ル・ヴィエルジュの数は限られており選ばれた者にしか与えられていない。

 2メートルを超える金髪の女騎士の見つめる先ではすり鉢状の闘技場の底に集められた騎士達が凄惨な殺し合いを行っている。

 女騎士は王都レブランカの騎士団長ギーゼラ・バイエルフォンである。

 生き残った者には王都の騎士団に取り立てる約束がなされている事から誰もが必死に戦っている。

 

「最近はロクな騎士が集らんな」


 そう言うとギーゼラは腰のヴィブラシオンを抜き放つ。

 抜き放ちざまに衝撃波の斬撃が5つ宙を駆けて闘技場の底で戦う5人の騎士を両断する。

 

「リーデル、バカ共の人質を殺せッ!

 考え違いをするなよ例え生き残っても力を示せぬ者は私が殺す」


 その声に騎士達の戦いは激しさを増していく。

 参加している騎士達には全員その家族を人質として差し出させている。

 無論、負ければ自分だけでなく家族も死ぬことになる。

 しばらくすると騎士の1人に連れられて奴隷達が現われる。

 見覚えのある奴隷ばかりである息子ギルスの世話をさせている者達である。

 騎士が目の前まで来ると頭を下げる。


「ご報告します。

 ギルス様をはじめディミトリの町に派遣した騎士全てが殺されました」


 刹那、報告した騎士の姿が掻き消えてギーゼラの抜き放つ剣から衝撃波の塊が迸る。

 後にいた奴隷達の数人が巻き込まれて木っ端微塵になる。

 

「どういうことだ。

 ディミトリの町の調査だけのはずであっただろう」


 右横に避けてた騎士が報告を続ける。


「調査任務を放棄して遊びまわっていたようです。

 その際に1人の騎士に素行を正された事に逆上して全員を引き連れて報復に赴き返り撃ちに会ったようです」

「そうか可愛い余りに甘やかしたツケがその命となった訳か」

「レ・ジュー・ヴォランがその騎士の姿を捉えております」

「例えバカでもクズでも愛しい我が子には変わりはない。

 居所を直ぐに見つけ出せ」

「かしこまりました」

「それとお前達も報告ご苦労であった」


 ギーゼラは奴隷達に労いの言葉をかけ彼らも深く(こうべ)を下げる。


「その忠誠心、死後も我が愚息ギルスの助けとなることであろう」


 その言葉と共にギーゼラは奴隷達に襲いかかり次々とその首を刎ねる。

 逃げる事もできない神速の剣舞は50人はいた奴隷を瞬くまに殺しつくす。


「まだ足りぬわッ!わが愛しのギルスが寂しがっておる。

 もっと多くの従者で送り出さねばならぬわっ」


 その言葉に騒ぎに気付いて動きを止めている闘技場の騎士達に向かって報告に訪れた騎士が襲いかかる。

 生き残っていた騎士達13人が無抵抗で首を刎ねられその家族達も囲んでいる騎士達に次々と殺されていく。

 血で溢れる闘技場でギーゼラは尚も叫び続け新たな犠牲者が連れ出されてくる。

 騎士の中でも奴隷の身分に落とされた剣闘士達が50人。

 闘技場に現われると同時にギーゼラが襲いかかり次々と木っ端微塵に吹き飛ばされて肉塊に変えられていく。

 闘技場を血と肉塊でむせ返る地獄と変えてもギーゼラは尚も血を求めて嗚咽をもらす。



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