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第1話

 黒き神殺しの系譜はしばらくお休みして先にこちらを進めます。

 黒き神殺しの系譜 第1部からおよそ2000年経っています。

 スマホで読みにくいのかなと考え文量は1話5000文字前後でしばらく様子をみます。

 読みやすくと考えますがまだまだ不慣れですご了承願います。


 山間(やまあい)の街道を走る1台の大型の車が見える。

 騎士が乗る大型の整備格納機能などを備えた車でその形状からエスカルゴと呼ばれているものである。

 後部の荷台はアフェクシオン・ヴィルジニテのための大型の整備格納室がその大半を占める。

 アフェクシオン・ヴィルジニテはシャ-ル・ヴィエルジュの第2世代型となる機体ではあるがまだわずかな者しか与えられておらず存在を知る者も少ない。

 整備格納室の上は居住空間となりキッチンを備えたリビングとシャワー室にベッドを備えた部屋が幾つかある。

 運転をしているのはヴィルジニテであるアクロ・デアトリアスである。

 運転と言ってもアクロの胸にある超記憶媒体でもある宝石デゥセルヴォを通じての遠隔操作であり彼女自身は今はリビングのキッチンで夕飯の仕度をしていた。

 アフェクシオン・ヴィルジニテは普段は亜空間にあり常にヴィルジニテの傍にありつづける。

 そのため整備のとき以外は整備格納室は空であり広大な空間を持て余している。

 なので普段はアクロのマーテルであるヴォルカン・エーポスとその弟子であるアルドル・ル-ク・ソラリスが鍛錬のために使っている。

 ヴォルカンとアルドルは剣を手に幾度も激しい撃ち合いを続けている。

 師でもあるヴォルカンは実戦の感を養うためとし鍛錬でも模擬刀は使用せず騎士の使う実戦用の電磁剣であるエペ・クウランを使用している。

 そのためアルドルの傷はいつも絶えることはない。

 腕を斬りおとされた事や足を斬り落とされた事も1度や2度ではすまないほどであり10回を過ぎる頃からはアルドルも数えるのをやめていた。

 アルドルが素早い撃ち込みを何度か入れるがヴォルカンはその全てを上半身の体捌きのみでかわし歩かせる事もできないでいる。

 深く斬り込みすぎたかと思う間もなくヴォルカンの蹴りがアルドルの顎を捉える。

 勢いよく飛ばされ背中から受身も取れずに床へと叩きつけられる。

 すぐに身体を起こすがそのときには目の前にヴォルカンの足が見える。

 エペ・クウランの柄尻で思い切り首の下の肩甲骨の間を叩かれアルドルは呼吸ができなくなる。

 そこに勢いよく蹴りが胸に撃ち込まれ、またもやアルドルは宙を飛んで床へと叩きつけられる。

 音をたてることもなくヴォルカンが歩み寄りそこに、


「ヴォルカン様、街道の道の端で少女がうずくまっています。

 年は14前後だと思えます。

 武器になりそうな物は所持していません」


 アクロが車内の拡声器を使って外の事態の判断をあおいでくる。


「分かった、アルドルに様子を見させよう」


 そう声をだすヴォルカンの声はその手のエペ・クウランの柄にはめ込まれたディエスアムを通じてアクロに届く。

 ディエスアムはヴィルジニテの胸のデゥセルヴォから胚を分割して造りだした複製品であり互いに感応しあう力を持つ。

 アクロが拡声器を使ったのもヴォルカンが声を出したのも全てアルドルに聞かせるためであり、本来なら声を出さずとも互いのデゥセルヴォを通じて意志の疎通は可能となる。

 アルドルは立ち上がるとヴォルカンに一礼をして扉を開けて廊下にへと出ていく。




 リムニがエスカルゴの先回りをして街道の端にうずくまって待っているとその少し前でエスカルゴが停まる。

 エスカルゴの荷台のドアが開くと1人の青年が降りてくる。

 年のころは20才にもなっていないだろうか明るい茶色の髪と180cmはある体格、腰のエペ・クウランから騎士と分かるがそれはエスカルゴを見れば分かる事であり問題はない。

 ヴィエルジュの姿が見えないのは中に残っているからなのか、それともアマトゥールなのかはまだ分からないが騎士を抑えられれば問題はないであろう。

 リムニがそう思っていると青年アルドルが目の前にやってくる。


「君、大丈夫かい。

 どこか具合が悪かったりケガでもしているのかい」


 そう声をかけられてリムニが顔をアルドルに向ける。

 思わず頬を赤らめてしまうような好青年であるがそれはそれである。

 苦しそうに呻き声をだしリムニは沈むように身をかがめる。


「とりあえずエスカルゴの中に入って休もう。

 肩を貸すよ。」


 そう言うとアルドルはリムニの左脇の下に自身の右肩を入れて抱え上げる。

 タイミングを見てアルドルの鳩尾にリムニは右拳を叩きこむ。


「イッタァァァーーーッ」


 声をいや叫びをあげたのはリムニであった。

 見ると右指が脱臼しているのが分かる。

 アルドルは呆けたように驚いてリムニを見ている。

 迷わず今度は顔に蹴りを入れるがそれはあっさり受け止められる。

 しかも今度は蹴った足にヒビが入る。

 どんな身体をしているんだと思いながらも丸腰では勝ち目が無いのでリムニは逃げることにする。

 

「うわぁぁぁっ」


 いきなり後からアルドルにお腹に腕を回されリムニは間の抜けた声をあげる。

 そのままアルドルに抱えあげられてリムニは足をバタつかせながら足掻く。


「よく分からないけれどケガの治療をするから少しおとなしくしていてくれよ」


 リムニを抱えたままアルドルは車に戻ろうとするが岩陰から複数の人影が飛び出てくる。

 年もバラバラの複数の男女であるが総じてガラが悪そうであり腰にエペ・クウランを佩いている。


「何かようでしょうか」


 少々間の抜けたアルドルの問いかけに1歩前に出てきた大男は唸るように言う。


「見てのとおり俺達はこの辺りを縄張りにする盗賊団 バルンガ一家だ。

 言っておくが抵抗は無駄だぞ、こっちには騎士が14人はいるからな。

 分かったらそこでおとなしくしていろ。

 あの車とお前の荷物、全部頂いていくぜ」


 その口上にアルドル少し困ったような顔をして。


「あの車ですが僕のものではなく師匠のものになるんですよ。

 なので、あなた達にお譲りすることは僕の一存ではできません。

 それとこの子ケガをしているので早く治療をしたいのですが」

「リムニがケガをしたのはお前のせいだろうが」


 囲んでいる騎士の1人が叫ぶとアルドルは少し考えて、


「もしかしてリムニって君の名前なの。

 あの人達と知り合いなの」


 腕の中でまだ足掻いているリムニにアルドルが問いかける。

 

「親父ッ!ダメだこいつ天然過ぎて状況を理解してしてねえよぉ」


 リムニがそう叫ぶと困った顔をしたバルンガは、


「ええっと、兄ちゃん順番に話すからちゃんと聞けよ」

「はい、お願いします」

「まず俺達はさっきも言ったように盗賊団だ。

 そんでこの山間(やまあい)の街道を縄張りにしている。

 そして旅人を襲おうと待ち伏せしているとあのエスカルゴが見えた。

 ここまでは分かるかな」

「はい、大丈夫です」

「それで俺達はまずエスカルゴを停めようとして仲間のリムニに一芝居をうたせたわけだ」

「君、えっとリムニさんはあの人達の仲間だったのですか」


 ようやく驚きの声をだすアルドルに半ば呆れつつリムニは言葉を返す。


「やっと気付いたのかよ、どんだけ天然なんだよこのマヌケ」

「いや、だって普通街道でうずくまっている女の子が盗賊の仲間なんて思わないですよ」

「そうじゃないだろう、普通こんな山間(やまあい)の街道で1人うずくまっている女の子がいれば怪しいと思わなければダメだろう」

「・・・そうなんですか」

「そうなんだよ、だいたいこんな可愛い女の子が1人で旅なんかをしていたら危ないだろう。

 その時点でおかしいと思わないとダメなんだよ」

「なるほど、そうですね。

 確かに可愛い女の子が1人で旅なんかをしていたら危ないですよね」


 そう言うとアルドルはマジマジとリムニの顔を見つめる。

 

「なな何ジロジロ見ているんだよ」


 顔を赤らめながら思わず動揺しながらリムニは上擦った声で叫ぶ。


「すみません、失礼なことでしたね。

 確かにおしゃっるとおり可愛い人だなと」

「ちょっと待てッ、あんまり可愛いなんて言うんじゃないよ」


 半ば混乱しながらリムニが喚きたてる。


「あのぉ、そろそろこっちの話を聞いてもらえると助かるんだけどな」


 その言葉にアルドルとリムニはそろってバルンガに顔を向ける。

 周りに仲間がいることを思い出してリムニは耳まで赤くなる。

 

「失礼しました、お話の途中でしたのに。

 続きをお願いできますか」

「まあ、それでだな本当ならリムニが油断させて兄ちゃんを動けなくさせる予定だったんだが逆にリムニが兄ちゃんに捕まったわけだ。

 それでこうして俺達が姿を見せたわけだ」

「えっとぉ、僕はリムニさんを捕まえたわけではなくてケガの治療をしようと・・・。

 その前に謝るべきでしたね、リムニさんにケガをさせてしまって申しわけありませんでした」


 そう言うとアルドルはバルンガに頭を下げる。


「いやぁまあ、それはリムニも悪かったから兄ちゃんも気にするな」

「いえ、そういう訳にもいきません。

 せめてリムニさんの治療をさせてはいただけないでしょうか」


 すっかり毒気を抜かれたというか既に盗賊をするような雰囲気ではなくなってバルンガは困ってしまう。

 

「よし、兄ちゃんこうしようお互いに1人づつで1対1の決闘だ。

 それで俺達が勝ったらあのエスカルゴをもらう。

 それでどうだ」

「いえ、ですからエスカルゴは僕の物ではないのでお譲りすることはできないんですよ」


 本気で困っているアルドルにバルンガも困ってしまい。


「じゃ、誰のエスカルゴなんだよッ」

「私だよ、久しぶりだなバルンガ18年ぶりかな」


 声に振り向くとエスカルゴの荷台のドアから白髪混じりの1人の男が降りてくる。

 その姿を見たバルンガが目を見開きながら驚く。


「ヴォルカン団長ッ!」


 その叫びにアルドルとリムニはそろってヴォルカンを見つめる。




 エスカルゴの居住空間のリビングでアクロがリムニのケガの治療をしている。


「騎士様の回復力ならすぐに良くなりますし跡も残りませんよ」


 そう言いながらアクロはリムニの右指に包帯を巻いていく。

 それを横目で見ながらヴォルカンはバルンガに顔を向けて、


「すまなかったな、手加減をするようには教えているのだが」

「いや、聞いた限りでは手加減のしようも無いでしょう。

 リムニが一方的に殴って勝手にケガをしたようなものですし。

 まあ、あれでも騎士なので心配には及びませんよ」


 それを聞きとがめてリムニがバルンガに抗議をする。


「あれでもって何だよ。

 悪かったな騎士なのにチビで」

「いや、そういう意味じゃなくてだな・・・」


 リムニの身長はよくて(・・・)150cmと騎士としては小柄なので普段から気にしているのである。


「ところで元傭兵団の団長ではあるが、かつての団員が盗賊とは一体何があったのか教えてはもらえるかな」


 その言葉に申しわけなさそうにバルドルが答える。


「この間までは俺も自分の傭兵団を持っていたんですがね。

 それが警護の仕事を引き受けた町が王都の連中の襲撃にあったんですよ。

 なんとか町の人間を避難させるのが精一杯の状況でして傭兵団もシャ-ル・ヴィエルジュのほとんど大破してしまいまして。

 まあ騎士とヴィエルジュはなんとか逃げおおせた者もいたんですがね。

 しばらくは傭兵団も休業状態になってしまいまして」

「それで食い詰めて盗賊か事情は分かるが感心できる話ではないな」


 その言葉にリムニが振り返り、


「違うよ親父はその戦いで親の無くなった子供を全部引き取ったんだよ。

 それだけじゃなくて逃げ延びた連中の行き先の世話もやいているんだ」


 ヴォルカンはリムニから顔を戻して、


「なるほどな、相変わらずのお人好しのようだな」

「いや、それでも確かに情けない話です。

 団長は今は何をしているんですか」

「もう団長ではないさ。

 いまはあのアルドルを知人から預かってな鍛えながら旅を続けているところだ。

 それと王都の件だが旅の途上で何度か聞いたことがある。

 連中は聖地の恩恵を受けずに町が発展することを良くは思ってないようだな。

 冒険者の中にも狙われた者が何人かいるようだ」

「さすがに王都の軍勢相手では持ちこたえるのは難しいですからね」

「そうだな、上手く立ち回って目をつけられないようにするしか今は方法がないだろう」


 ドアが開くとアルドルがリビングに入ってくる。


「師匠、これでいいんでしょうか」


 アルドルが手に持っているのは光剣(ウィスパ-)の柄である。

 ビーム拡散コーティングなどの技術の普及で今では使う者もいないかつての騎士の剣である。

 これらの技術を撃ち破るには大出力が必要となるため非効率的となってしまうのである。


「やはり、まだ残っていたか。

 お嬢さん今は剣はこれしかないがいいかね」


 アルドルから光剣(ウィスパ-)の柄を受け取るとリムニは、


「はい、ありがとうございます。

 何も持たないことに比べれば助かりますので」


 ヴォルカンに礼を言うとリムニは光剣(ウィスパ-)の刃を抜き放って具合を見る。

 

「ケガは大丈夫かい」


 心配そうに尋ねるアルドルに振り向きリムニが答える。


「ええ、アクロさんもすぐに良くなるって言ってくれたわ」

「そうか、よかった」


 アクロがリビングのモニターにエスカルゴの外の前方の映像を映しだす。

 そこには小さな山間(やまあい)の村が映しだされている。


「間もなく到着します」


 バルンガ達が今本拠にしている村ではあるが人のいない廃墟を住める程度に改装しただけのものであり街道からも外れている。

 そのために村といっても野盗のアジトに近いものであった。

 時刻は日も傾きそろそろ夜になるであろう時間であった。



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