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月読戦記 特騎体  作者: アレス02
4/6

第3幕 罪と償いと

 翌日、セラーネの姿は街の外に併設された作戦室の中にあった。

「大したものですな、セラフどの。貴方のお陰であちらの伏兵が次々と発見されている」

 とりあえず領主には自分の正体について口止めをしてある。なのでこの場では自分はセラフ・ヴィクトリアということになっている。

「貴方を戦術アドバイザーとして雇ったのは正解だったようだ」

 それが外面向けの言い訳。なんにせよ体面は取り繕う必要がある。

 けれど、と領主は顔を曇らせた。

「予想よりも敵の兵力が多い……」

 『聖鷹』は新興の反政府組織。その構成員は大した数ではない。そうタカをくくっていたのだが。

「だからこそ貴方は私兵でも十分に鎮圧できると思った……」

「ええ。ですが、実際は……」

 探れば探るほど見えてくる敵の戦力。周辺に散らばったそれは、こちらの全戦力に匹敵するほどであった。

「……これは新興勢力が揃えられるものではありませんぞ」

「おかしいわね」

「ええ。これは裏に大きな組織が存在するとしか―――」

「そうじゃないわ」

 するとセラーネは広げられた地図の上を舐めるように見つめる。

「……重装殻がない」

「え……?」

「わからない? 重装殻がないのよ」

 これだけの戦力を有するはずなら、当然武装の一つとして重装殻を保有していてもおかしくはない。にもかかわらず敵兵の中にそれを全く確認できない。

「敵兵の動きも気になる……」

 今朝から兵の動きがおかしい。徐々に施設を中心に集まってきている。

 籠城戦の準備か、或いは……。

「施設周辺を索敵しなおして。周辺裏側もしっかりとね」

「しかし敵と出くわす可能性が―――」

「ルート6-7はマークされてないはずだからそれを通って。重装殻は必要ないわ。隠密機動でなる早でね」

 にわかに騒がしくなる作戦室。セラーネが溜息を吐きながら外に出ると、そこには直立不動で立つサブの姿があった。

「どうしたの?」

「はっ。実は今朝から班長の姿が見えないのですが……」

 ご存じないですか、と問うサブにセラーネは間髪入れず自信満々に答える。

「問題ないわ。自分の仕事に戻って」

「ですが……」

「あのリオンよ。大丈夫」

 そう言って肩を叩くセラーネにサブは一拍考え、しかし敬礼を返した。

「イエス、アイマム」

 去っていく彼の背中を見送るセラーネ。しかし彼の姿が見えなくなると、近くの木にもたれ小さく息を吐いた。

「……あのオロカモノ……っ!」


 ノヴァが目を開けると、そこはいつか見覚えのある天井だった。

「ここは……」

 目を擦りながらソファから身体を起こすと、後ろから低い声が響いた。

「おはよう。ノヴァ・リヒテンダール」

 ノヴァの身体が強張る。振り返るとそこには眼鏡を掛けた青年が自分を静かに見つめていた。

「ようこそセンシディアス研究所……反帝国の最前線へ」

 そう言って彼はニヤと笑った。


 イオスの後ろを俯きながら歩くノヴァ。

そんな自分の更に後ろには銃を構えた兵士。銃口こそ向いていないが、

(逃げたりしたら撃つ、か……)

 用心深いことだ。自分は何の力もない子供だというのに。しかしそれ故に今はただ彼についていくしかない。

 だけどもこのイオスという青年。リオンや特騎隊の皆とは、違う。

 この施設全体に蔓延る独特の緊張感。そして何よりも目の前のこの青年からは優しさの様なものが感じられない。

 いや、むしろ刺すような冷たさが感じられて―――。

「見ろ」

「―――っ!」

 そう言われてノヴァが顔を向けた窓。その先にはズラッと並ぶ重装殻たち。中には組み立て中の物もあるが、その数はルナトークで見た量とは比較にならない。

「こんなに……っ!」

「壮観だろう。ここまで集めるのには苦労した」

 イオスはそう言いながら冷笑を浮かべる。

 この世界のあらゆるものは飛べない。その理由は現在も不明だが、一説には高空に行くに従って物体の存在係数が指数関数的に不安定になるからだという。

 故に重装殻は陸上戦力の中で最強だと目される兵器だ。高機動、高火力。人外に対抗するための矛は、人同士においての戦いでも当然有効だった。

 だからこそ重装殻は国の厳重な管理下にあるはずである。しかしこれらはすべてイオスの組織が独自開発した騎体。

「我が組織の粋を集めて次世代型重装殻DRB-28『プラーガ』。出力、駆動系、エーテル噴射回路、そしてステルス迷彩。どれも帝国の現行騎の五年先は進んでいる」

 言われるまでもなく一目でわかる。確かにすごい。しかし見たところ、

「そう。ここにあるのはハリボテ。エンジンの無い車さ」

 どんな車も燃料がなければ動かないように、重装殻もまた精霊核と呼ばれるエネルギー発生点がなければただの鉄の塊である。

 精霊核から発生するエーテルと呼ばれる力場エネルギー。それを全身各所に巡らせることで、装着者の動きを増幅し、反映することが可能になる。

 この機構を核活性機構ドライブ・システムと言う。

「君のお父上が考案なされたシステムだ」

「………」

「これによって帝国はわずか十年で大陸制覇をやってのけた」

 これまでは高い練度、そしてなにより人並み外れた筋力が要求されてきた重装殻が、それこそ子供でも乗りこなすことが可能になったのである。

 重装殻のマンパワーは人の比ではない。故にその稼働可能数が戦の勝敗を分けることになり得る。

 数の論理で、帝国は国を押し広げた。しかしそれ故に問題もあった。

 精霊核と人には相性がある。装着する者によって核から発生するエネルギーが高かったり低かったりするのだ。そしてそれは核ごとに異なり、それ故にどうしても重装殻に乗れない者が出たりもする。要は重装殻が人を選ぶのである。

 しかしそれは仕方がない事だった。核は主に地中から産出される物で、人工的には精製できない物だったから。

「これまでは、ね……」

 ビクリとノヴァの身体が強張る。それを見て微笑むと、イオスはまた先を歩き出した。


「リオンが見つからない?」

「はい……」

 大急ぎで重装殻をメンテ中の格納庫に響く声。オイルで汚れたエーナに申し訳ないような顔をするのはサブ。

「そこら中を探し回ったんですが……」

「リオンもか……」

 その物言いに不思議な顔を浮かべるサブ。リオンも、とは。

「……実はノヴァちゃんもいないらしい」

「ええ?!」

「さっき軍の連中が探しに来たんだ。昨夜から見てないらしいよ」

 忽然と姿を消した二人。偶然と片付けるには少々引っかかる。

「もしや班長がノヴァさんを……」

「………」

「……班長がこの街の出身で、あの事故の真相を知っているならあり得ます」

 確かにエーナでも知っているのだ。彼が真相を知らない可能性は低いだろう。そして事故の原因となった人物はもうこの世にいない。

 だから残された者を……?

「それはない、と思うけど……」

「心配は無用だ」

 不意に聞こえた声に顔を向ける二人。そこには土嚢を両手に抱えたジンの姿があった。

「他ならぬ総隊長が大丈夫といったのだ。ならば心配などむしろ無礼であろう」

「ジン班長……」

「――そっか。うん。そうだよね」

 エーナは頬を掻きながら反省した。

 何があったかはわからない。でも自分の兄は心配が必要なほどヤワではない。それは確定的に明らか。

そう思い、ようやくエーナの顔に笑顔が戻る。

「ありがと。ジン君♪」

「礼を言うなら後で尻を揉ませ―――」

「あら、御免なさい。ジン兄様♡」

 ズンという音がしそうなくらい思い切りジンの足を踏みつけるヒビキ。奇声を上げてピョンピョン遠ざかる兄貴分を見ながら溜息を吐くアズマ美人。

「とっとと手伝ってくださる。時間が押してますのよ」

「は~い、ママ~」「はっ」

 二人は返事を返すと、ヒビキに習って引き続き各々の作業へと戻った。


 ノヴァたちが着いた先は薄暗い部屋。そこでは多くの作業員がせわしく動き回っていた。

 その中央には円筒形の装置。中は赤色の液体で満たされているが、色は特に問題ではないらしい。

「問題は成分だ。この装置はこの世界のエーテルの流れ、『竜脈アストラル・ライン』とリンクしている」

 最近になって分かったことだが、この世界のエネルギーは常に円環状に変動しており、精霊核から生まれるエネルギーであるエーテルもまた流動しているらしい。

 地上から発生したエネルギーは空に登り乱流となり、雲となり降り注ぐ。地に降り注いだエネルギーは地面にしみ込み、大地深くを流れ、地上へとエネルギーを発生させる。

 その流れこそ竜脈。そして精霊核はそのエネルギーが結晶化したもの。

「つまり竜脈はこの世界を巡る純粋なエネルギーそのもの。それを精製できれば」

 ……精霊核をいくらでも増やす事ができる。

 この場所は丁度いい。竜脈の流れが太いから、と微笑むイオスにノヴァの顔がさっと青くなる。

「ダ、ダメ! これはそんなことに使う物じゃ……!」

「……だったら何に使う? 街のひとつでも滅ぼすためか?」

「―――え?」

 知らんのか、と舌打ちをするイオス。そして彼女の襟首を強引に掴み上げると叫ぶ。

「十一年前! この装置はあの街の中心部に作られ、そして起動した! そして何が起こった!!」

 あの頃は『竜脈』などという概念はなく、ただ地域的なエーテル係数の増加が何を意味するのかという実験のためあの街は選ばれた。その無知なる行為がどういう結果を招くかも知らずに。

 イオスは左手で眼鏡に構わず顔を覆う。そして絞り出すように言葉を続けた。

「……地獄だ。人が生きながらに魔獣に変わっていく。その惨状が、貴様に想像できるか?! 家族が、友達が、大切な人たちが、次々に人ではないモノに変わっていく。その気持ちが貴様に分かるか?!」

 そこまで言ったところで、イオスはガクリと膝をついた。

「……分からない。分かるわけがない。あの、絶望を……」

 そうして上げた顔は無表情。しかしノヴァには何故か泣き顔に映った。

「……その原因を作ったのが貴様の父親だ。この『ロティアナ』も、そしてそのひな形を作ったのも貴様の父親なんだ」

「……そんな……」

「心底同情するよ、ノヴァ・リヒテンダール。貴様は世界有数の罪人の血を引いているのだからな」

 ピッという音と共にノヴァのペンダントが千切れる。そして無造作にそれを踏みつけるイオス。

 ペンダントの中から現れたのは小さなチップ。それを見てイオスは暗い笑みを浮かべた。

「装置の最後の制御チップだ。これで我々の勝利は確定した」

 作業員がチップを取り付けると同時に起動する装置。ノヴァはそれを呆然と見つめることしかできない。

(そんな、簡単に……っ)

 自分は一体、何のためにここまで来たのか。

 ――わからない。なにもわからない。

「彼女を部屋に戻せ。中から一歩も出すな」

 イオスの命令通りに従う兵士に引きずられながら、ノヴァは小さく呟いた。

「……ママ……」


 ―――ダメだ!

 少年は叫ぶ。目の前の少女にただ叫ぶ。

 ―――もうあれはパパとママじゃないんだ!

 妹の命を助けようと、しかしそれしかできなくて。

 ―――行くなぁっ!!

 ……もう、何もかも意味がないのに。


 真っ暗な部屋でリオンは目を覚ました。身体を起こそうとして、すぐに異変に気付く。

 両手両足がベッドに縛り付けられている。そして腹部に感じる激痛。

(……そうか)

 自分は刺されたのだった。それもノヴァの眼前で。

あれは誰だったのだろう。凄まじい相手だった。ああいう手合いを鬼というのだろうか。師匠が今の自分を見たら無様と呼ぶのだろうな。

 ……まあいい。それよりも、と傷の状態を確認する。

 感触から言って素人が手当てを行ったらしい。傷の縫合も包帯の巻き方も適当だ。まあ自分が捕虜だからこういう扱いなのかもしれないが。

 そんなことよりノヴァだ。リオンが首を回して部屋を見回すと、隅っこにうずくまる人影を見つけた。

 しかしよくよく目を凝らして見ると、その人影はノヴァよりもいくらか背が高い。

 年の頃はエーナと同じくらいだろうか。黒髪の少女が体育座りの姿勢で寝ている。その両手はやはり手錠で拘束されているようだ。

(……似ている)

 リオンが少女に声を掛けようとした瞬間、不意に部屋の扉が開いた。

 逆光に一瞬目が眩むが、徐々に浮かび上がるその顔は、

「……イーオ、か?」

「久しぶりだな、リオン」

 イオスはすぐには部屋に入ろうとせず、戸口で冷ややかに笑った。

「貴様が生きているとは思わなかったぞ」

「………」

「……あの時、貴様も魔獣と化していると思っていたんだがな」

 沈黙するリオンにイオスは溜息を吐く。

「……今まで何をしていた」

「……別に」

「俺が復讐のために帝国と戦っていた間、何をしていたのかと聞いている!!」

 イオスは激高するとツカツカと歩み寄って、リオンの襟首を掴み上げた。

「知っていたか?! あの事故、いや事件は成果を焦った帝国上層部が引き起こしたことだと! その結果起こった竜脈の活性化によって精霊核の産出量は爆発的に増えた! それを知った官僚がなんて言ったか知ってるかっ?!」

 そして奥歯を噛みしめて絞り出す。

「「結果良ければ」だと?! ふざけるな!」

 はあはあと息を吐くイオス。しかしその眼光は強くリオンを射抜いた。

 リオンはその目を真正面から見据え、そして目を伏せた。

「……すまん」

「―――っ!?」

「……俺がお前の家族をこ―――」

「言うなっ!!」

 バンッとリオンをベッドに叩きつけ、そして拳を握りしめる。

……しかし振り下ろせない。何故なら目の前のこの男も紛れもなく自分と同じなのだから。

「くっ……!」

 イオスは歯を食いしばるとリオンに背を向ける。そして戸口に立つと、

「……貴様がどうしてあそこにいたか。どうしてあの娘と共にいたか。後でたっぷりと聞かせてもらう」

 ゆっくりとドアを閉めた。

 再び暗くなる室内。灯りの無い闇を見ながら、リオンは思い出す。彼らの瞳を。

「……どうした?」

 いつの間にか傍に寄ってきていた少女がビクッと肩を震わせる。どうやら音も立てずに近づいてきた自分に気付いたことが驚きだったようだ。

 それでも彼女はおずおずとリオンに近づくと、その手を取って指でなぞり始める。

 最初はなんのことかわからなかったが、その首にある大きな傷から、この子が口を利けないのだとすぐに気付いた。

 だからこれは文字。手話が分からない人にも分かる、ごく初期の会話術。

『イタイ デスカ?』

「……ああ、痛い」

『オナカ ガ?』

「……いや」

『?』

 戸惑いを見せる少女にリオンは苦笑する。そしてその舌が、静かに言葉を紡ぎだす。

「……妹が、いたんだ」

「………」

「……甘えん坊で。何処に行くのにもべったりだった。それを俺は嬉しくもあったし、疎ましくもあった」

 リオンは目を瞑る。そうすることで彼女が今も自分の前にいるような気がしたから。

「……イーオに初めて会った時も、あいつは恥ずかしがってなかなか前に出たがらなかった。結局無理やり背中を押したら転んじゃって」

 その後泣きやませるのが大変だった、とリオンは笑った。

『……シアワセ デシタ?』

「……ああ。あの頃はそんなこと思いもしなかったけど」

 嗚呼。何故この子にはこうも素直に打ち明けることができるのだろう。

 それは自分が傷を負って弱っているからか。それともこの子がどこか妹に面影が似ていたからか。

「でも……」

 無いはずの左腕が疼く。懺悔の叫びを上げる。守れなかった、と。

「……俺が殺したんだ、皆」

『ミンナ?』

「……街の人たち。皆、殺した。重装殻に乗って、殺し尽くした……」

 今でも体中にこびりついて離れない悲鳴。怨嗟の声。もっと生きたかった人達の、最後の慟哭。

『コウカイ シテマス?』

「……ああ」

『ナラ ダイジョウブ』

 少女はそう書いて、微笑んだ。その笑顔を見て、リオンはある少女の顔を思い出した。

「……あいつも、そう言ったっけ」

 誰もが貴方を許さなくても私が許す、と。そう言って抱きしめてくれた彼女の事を思い出す。

 リオンは珍しく、本当に珍しく涙を流した。


「リーベル少佐。間もなく全騎の核の積み込みが完了するとのことです」

「ようやくか。待たせてくれる」

 それにしても帝国軍も間抜けなものだ。こうも時間を与えてくれるとは。

「それにしても驚きましたね」

「何がだ?」

「活性率ですよ。ほぼ全騎が70%以上の数値です」

 活性率とはいうなれば精霊核と人間の相性のことである。一般的に重装殻の稼働に必要な活性率はおおよそ40~50%といったところ。つまりこれが意味するところは、

「ほぼ全ての重装殻が稼働可能ということです。それも今すぐに」

「………」

 こちらが用意した重装殻の数はおおよそ150騎ほど。対してあの街に配備されている騎数は50。確認された増援の数は20にも満たない。

 人では重装殻には勝てない。ならば数の上で圧倒的に優位なのはこちら。

 ……だというのにこの胸騒ぎはなんだ。

「……撤収の準備をさせろ」

「え?」

「二度言わせるな。撤収だ」

 その言葉を聞いて慌てる部下。

「ま、待ってください。この施設に籠城するのでは?」

「誰がそんなことを言った。それにこれは導師のご命令だ」

 精霊核を必要な量確保できたら、装置を伴ってその場から撤退すべし。それが導師から受けた指令。

「し、しかし今から装置を停止させるのにも時間が―――」

「急ぐ必要はない。いざとなれば……」

 そしてイオスは傍らの煌びやかに光る重装殻を見上げた。

「私も『ハーレクイン』で出る」


 セラーネは報せを受け、作戦室に飛び込んだ。

「状況は?!」

「ビンゴだ。奴ら山の中腹に重装殻を隠していたようだ」

「数は?」

「……およそ150」

「楽勝ね」

 周りの呆気にとられた顔を無視して、地図をざっと見回すと、セラーネは大きな声で指令を飛ばす。

「1班は正面最前線に移動。敵の迎撃及び楊動に徹して。2斑は前線後方で待機。3斑は左翼を迂回して二手に分かれて。4班はG-6地点で待機して―――」

「……あの、セラフどの?」

「何?!」

 鬼の形相で睨むセラーネにビビりながらも、領主は疑問に思ったことを話す。

「普通に勝てないのでは……? この戦力差では。援軍もいないですし」

「……貴方、重装殻に乗ったことは?」

 セラーネの質問に領主は眉を顰めて首を振る。

 自分は不適合者であったから。それが領主の重装殻不信に繋がっているわけであるが。

 だがセラーネはその思いを知ってか知らずか鼻を鳴らすと、

「重装殻戦で重要なのは数じゃないのよ」

 そう言ってパンパンと手を打ち鳴らす。

「さあ! ここからはスピードが勝負よ! 各自自分の仕事に集中っ! モタモタしてるやつは飯抜きよ!」

 かくしてヒトヨンマルマル時。デモニアス帝国軍と反政府勢力『聖鷹』との小規模な戦争が始まった。



 続く

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