mirror in the world 8 -The end of beginning-
そんなわけでこの世界での一日目が過ぎる。
ここは…う~ん、鏡の中の世界だから『鏡中世界』とでも呼ばせてもらおう。
マスターに話を通し終えたレンが帰ってくると私たちはすぐにある場所に出発した。
ある場所。
私の家である。
この町『ラタス』の最上級の。
超高層マンション(98階建て!)の。
最上階。
メゾネット。
…それも1フロア丸ごと。
ローンは返済し終えているらしい。 いい意味で助かる。
レン曰く。
「めっちゃ居心地いいよ~!」
エルド曰く。
「よくあんたあんなに綺麗に、シリーズ物カスタマイズできたよね!!」
つまり、かなり凄いらしい。
いま? 今はね…。
そこへと続く階段をひたすら上っております。
「ちょうど今日がエレベーター点検の日ってあり得る!!??」
「疲れる…。 てか疲れた」
ただいま52階。
道のりは長いなぁ……。
私、自慢じゃないけど『向こうの世界』では保健体育(実技)。
苦手だったんです。えぇとても。
それのせいで中学校の成績、実技以外は最上級のAだったんだけど、そいつがC以下のDのせいでガタ落ちだったんだよ!?
あんな飛んだりはねたりするのって将来使う!? 使わないでしょ!?
…え、使わないよね???
ま、まぁそんなわけで身体を動かすのが苦手だった私なのですが。
いままでさほど苦労せずに上ってこれました♪
オプションに感謝だね!
「そういや、さ」
息が切れ切れのエルドが問う。
「サリアス、あんたってマジック使えるんだっけ?」
マジック?
「なにそれ」
「へぁ!!? マジックも知らないの? 魔法だよ、魔法」
「魔…法、ですか」
私の中でこの世界、所謂『何でもアリ』になってきちゃったんだが。
「うちのギルド、マスターとの顔合わせのときにやるんだよ。 『魔法使用適応性試験』。 私たちは略して魔適試験、て呼んでるけど」
「ふーん。ずっと気になってたんだけど、マスターてどんな人?」
「うーん…。 一言で言うなら、サリアスとは対極、かなぁ」
「?????」
ちょうどそこでーーーーー着いた。
最上階。
非常階段からつながる扉を開ける。
するとそこは。
草原。
プール。
その中央には、バリ風のカエルの噴水。
木。
テラステーブルといす。
「……うわぁ」
凄い。とにかく凄い。
木陰はとても居心地がよさそう。
「よくうちらここで日向ぼっこしたよねー。」
ふむ、それも気持ち良さそうだね。
窓から部屋の中に入る。
フローリングの床に白の壁紙だ。
ここまではいい。
私が抱いた感想はこれだった。
THE★バリ!!
何から何まで、バリ。
そうでないものとすれば、大量の本であろう。
「………すごっ」
確かに綺麗にカスタマイズされている。
「あ、私今日『日帰り討伐』あったんだった!! ごめん帰る!!」
エルドがそういって慌ただしく出て行った。
「じゃぁ…僕も帰ろうかな。 …あ、明日マスターとの顔合わせだから、朝九時にこのマンションのエントランスで」
「あっ…。いっちゃった」
もう寝ようか。
あ、ベッド上(メゾネットだからね)なんだ。
はしごを上る。
ぼすん、とふわふわのシーツに身を沈める。
今日は精神と肉体、両方の疲労が大きい。
あ、まぶたが重くなってきた。
ベッドの横に畳んである毛布があったので、それを身体にかける。
その日はそうして眠った。
そして新しい朝を迎えるーーーーーーー