表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/48

朝チュン

 小鳥のさえずりが聞こえてくる。暗く閉ざされていた住宅地のカーテンはすでに開け放たれている。しかし、僕の視線の先にある部屋に射し込む光はまだ少ない。そこにいる一人の少年が目を覚ます。その(わき)では布団が不自然に盛り上がっている。少年はゆっくりと布団をめくると、そこには気持ち良さそうに眠るもう一人の少年の姿があった。

 なんで一緒の布団で寝てんだよ。気持ち悪いわ。

 布団の中から姿を現した少年は微笑(ほほえ)みながら優しい声で(ささや)く。

 それを聞いた少年はまだ眠たそうにしている少年の頭を少し荒っぽく()でる。まだ起きたばかりの少年はその手を素直に受け入れる。それはまるで、人間と小動物が心を通わせているかのようだ。

 僕もノリノリで語ってんじゃねーよ。完全にホモじゃねーか。

 すると、二人の空間を(さえぎ)る者がそこに現れる。


「遼一ぃ、朝ご飯できてるか……あら、ごめんなさい」


 遼子は開けた(とびら)をすぐに閉めてしまった。お前も気をつかうなー。


「おーい、朝ご飯できてるってよー」


「よーし、飯を食いに行きますかー」


 お前らはなんで普通にしてんだよ。



 遼一たちは一階で食卓(しょくたく)を囲む。

 さっきまで(せわ)しく動いていた遼子がイスに腰掛(こしか)けると口を開く。


「マリモーズはさ、なんで一緒の布団で寝てたの」


 ん、まりもーずってなんだろう。


「だって、用意してなかったから」


「母さん、マリモブラザーズな。マリモーズじゃなくて」


「そんなのどっちでも良いじゃない。布団は遼一の部屋にあるでしょ。友達が来た時に使う奴が」


「時間も遅かったじゃん」


「それに疲れてたしさ、いつの間にか寝ちゃってたよ」


「それなら良いんだけどね。それと、同時に(しゃべ)らないでちょうだい」


「なんでー」


 うん、キレイにハモったな。


「なんでもないわ、今のは忘れて。それと、文華はマリモラーズのこと、まだ知らないから。今日はスキンシップは止めなさい」


「えー、マジかよー」


「あれがないと朝が始まらないよ」


 そういえば文華の姿が見当たらないな。遼一たちは文華とのスキンシップに比べたら、遼子の言い間違いはどうでも良いようだ。


「じゃあ、片方だけにしなさい。文華が(おどろ)いちゃうといけないから」


「仕方ねーなー」


「ここは公平にいきますか」


「じゃっきっちょ」


 あ、出ました。この地域特有のかけ声のジャンケン。


「引き分けかー」


「お主、やりおるな」


「遼一さ」


「母さん、邪魔(じゃま)しないでよ」


「今のはどっちに話しかけたん」


「どっちもよ。前から気になってたんだけど、そのまぬけなかけ声はなんなの」


「学校で流行ってんだよ」


「未来ではこれが主流になってるよ」


 いや、なってませんけど。


「ふーん、まあ良いわ」


「……ったく、しょうもないことで中断しないでよ」


「じゃあ、いくぞ」


 そして、遼一たちの不毛なやりとりは数分間続いた。


「それ、意味ないんじゃない」


 遼子がぽつりとつぶやく。


「やっと気が付いたか」


「いつ気が付くか試してたんだよ」


「それで、どっちが文華とスキンシップすることになったの」


「それを今から決めるんだよ」


「公平なやり方でな」


「昨日はどっちが学校に行ったの」


 師匠が手を上げる。


「じゃあ、マリモは文華と(たわむ)れて早く学校に行きなさい」


「あ、俺、マリモなんだ」


「俺はどうすんだよ」


「ルイジーは家の手伝いをしてちょうだい」


「先生、悪いな」


 師匠は朝食が盛られていた食器を片付けて立ち去っていく。


「えー、俺の勉強はどうすんだよ」


「やろうと思えば一人でも勉強できるでしょ」


 となりの部屋から師匠の猫なで声が聞こえてくる。いつも、文華はこの声で起こされているのか。……かわいそうだ。


「ルイジーは文華が幼稚園に行くまで部屋で勉強してなさい」


「差別だ」


 先生は不満(ふまん)そうに部屋を出て行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ