表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/48

姓名判断

 何も聞こえてこない。集音マイクが故障(こしょう)してしまったのかな。(ため)しに(うら)の家を向いてみよう。

 うん、その家の生活音が聞こえてくる。(こわ)れてはいない。遼一たちはどうなってしまったんだ。


「りょ、遼一……あんた……双子だったのね」


 なわけねーだろ。お前が産んだんじゃないんかい。

 遼一たちの声が同時に聞こえてくる。


「え、そうだったの」


 ハモるなー。……ってか違うに決まってるだろ。なんなんだよ、この親子は。聞いてるこっちが(つか)れるわ。


「とりあえず、前は(かく)しなさい」


「おっと……」


 くそっ、遼子め。……いや、僕は何を(くや)しがっているんだろう。さっき、風呂場で思う存分観賞(かんしょう)したではないか。……遼子、お前の負けだな。



 僕はリビングを(のぞ)き込む。遼子はテーブルの奥に座り、その前には遼一たちが座っている。三人はどこか余所余所(よそよそ)しい。何を話したら良いのか分からないんだろうな。


「母さん、あんた達が双子だったなんて知らなかったわ」


 しつこいわ。


「どういう事か説明してちょうだい」


「どうって聞かれてもなー。先生、後は任せた」


「え、俺か。なんか説明させられるの多いなー」


「うん、俺もよく分かってないからさ」


「えー、分かってなかったなら言えよ」


「じゃあ、もう一回聞いてやるからさ。母さんにも説明してやってよ」


 先生がこれまでの経緯(けいい)を説明し、遼子はそれを相づちを打ちながら聞いている。



 先生の話が終わると遼子が口を開く。


「なるほどねー」


 遼子は理解できたようだ。


「全く分からなかったわ」


 分からなかったんかい。


「遼一は分かったの。あ、こっちの遼一ね」


「え、あー、二回聞かされたけど分かんないわ」


 お前も理解してやれよ。先生は呆然(ぼうぜん)とし、その目は(うる)んでいるように見える。


「事情は分からないけど、こっちの遼一も遼一であることは間違いないのね」


「そうだよなー。メタモンじゃないもんな」


 先生が鼻をすする音が聞こえる。あーあ、二人していじめるから泣いてんじゃねーか。


「おいおい、何も泣くことはないだろー」


「遼一がちゃんと理解してあげないからでしょ。あ、今のはこっちの遼一ね」


 お前も理解してねーだろ。


「とりあえず、あんた達は双子になったのね」


「そういうことだな」


 この人たちは先生の話を理解する気はないようだ。……先生がかわいそうだ。


「それで、こっちの遼一はなんて呼べば良いのかしら」


「俺は先生って呼んでるな」


「え、なんで先生なの」


「いや、なんか説明するのが好きみたいだからさ」


「それも悪くないわね。うーん、ルイジーなんてどうかしら」


 先生が充血した目を見開く。


「お、良いねー」


 先生は師匠と遼子を交互に見る。納得できてない感じだ。


「じゃ、あんたはマリモね」


 今度は師匠が目を見開く。


「二人とも何を(おどろ)いてるの。マリモブラザーズは二人いないとダメでしょ」


 あ、なんか聞いたことあると思ったら、満天堂(まんてんどう)のマリモブラザーズのことか。


「マリモはないよー」


「えー、さっきは賛同してたじゃなーい」


「いや、先生の方だけかと思ったからさ。思ったんだけどさ、俺は遼一のままで良いじゃん」


「ダメよー、二人とも遼一なんでしょ。差別は良くないわ」


 ちゃんと分かってるじゃないか。心なしか先生が元気を取り戻しているように見える。


「遼一セカンドバージョンなんて良いんじゃない」


 いや、ダメでだろ。どう考えてもセカンドバージョンの方が差別だよ。


「いや、それはいくらなんでも……」


 師匠も引いているようだ。

 結局、この話し合いは数時間繰り広げられることとなる。



 おっと、うたた寝しちゃったみたいだ。

 三人はどうなったかな。……ちょうど話し合いが終わったようだ。遼一たちが席を離れようとしている。


「遼一、ちょっと待ちなさい。あ、こっちの遼一ね」


 決まらなかったのかよ。お前らは数時間も何をしていたんだ。


「まだ夕飯食べてないんでしょ。今から適当に用意してあげるから食べていきなさい」


 優しー。なんだかんだいっても母親なんだな。僕は二人を見分けることができないが遼子は違うようだ。


「あ、俺は食ったよ。食ってないのはあっち」


 違うのかよ。


「じゃあ、お昼はどうしたの」


「お昼と朝は何も食べてないね」


 遼子がもう一人の遼一の方を見る。この色のパジャマはたしか……師匠だな。


「俺は夕飯だけ食べてないや」


「そう、じゃあ、二人とも食べていきなさい」


 二人の遼一が同時に声を発する。


「ありがたやー」


 こうして見ると本当に双子みたいだ。

 奥の方からまな板と包丁がリズム良く音を発している。この音を聞くと心がおどるようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ