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ユビキリ  作者: 紅雨椿葉
第弐章
32/66

ユビキリ ノ弐拾玖


褒美として、忠誠を示した失意の家臣に与えた自分の息子。それを人は美談ととる。

だが、元々要らない末の子を体よく押し付けたという可能性はないのだろうか?


川本家に流れる血はとても清いとはいえない。戦国の世にあってのし上がってきた成功の裏でどんな血を流しているか、分かったものじゃない。

露草が幼い頃、川本兼良が父親である定良の弟、つまりは叔父の花咲約進を疎ましがっていた記憶がちらつくような気がしたが、突き止めようとすると霧散してしまう。


 「どういう意味でしょう?」

 「その話題を掘り進めても、意見の相違が見られるだけでしょうから、話を元に戻す事にします」


鋭い眼光に、塔十郎は反発する気持ちをかき消されてしまう。渋々頷いた。


 「養子として迎えたその子は強く、賢い子でした。父親に心を完全に許したとは言い難いものの、言いつけにはよく従いました。そんな彼と友人になったのは、養父の友人の息子でした」


この話を自分の家族と栗町家に例えるなら、約進は栗町家の二代目当主、君近の息子である小次郎と友人になったという事である。

名前を伏せられてはいたが、少しは親しみの持てる話だ。これが先の栄雅とどう繋がるのか全く分からなかったが、塔十郎は続きを聞くことにした。



 「その子が大人になったとき、やはり友人も大人になりました。友人は蛍という娘と共になり、自分は千代という名の娘と伴侶になりました」


塔十郎は、はっとした。

栗町家の蛍という娘は知らないが、千代という名の人物なら、約進の妻であり、自分の祖母であるからだ。やはりというか、今更というか、これは両家の話だ。それと川本家を絡めた話。


 「蛍と暮らしていた友人はある日自分の妻と共に、件の養子の彼の屋敷へとやってきました。酒でも酌み交わすかと迎えてみれば、旧交を温める雰囲気でもない。何用かと一言問えば友人は妻と共に、床に頭をこすり付けんばかりに伏しながら、金の無心に来たのだと一言だけ言いました」

 「・・・・・・それが、梅太郎の祖父ですか?」


祖父の約進を裏切ったという、栗町家への疑いは明白なものだったわけだ。

子どものように先を急ぐ塔十郎に、露草は小さく肩をすくめてみせた。



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