ユビキリ ノ弐拾弐
「そんな、せ、清ちゃんがほほ惚れっ、惚れるわけ、ないですよっ」
「そ、そそそそうですよ、白梅さん。往来で何堂々と暴露してはるんですか」
「暴露やないでしょ、清兄ちゃん!」
「あ、ああ。ごめんね。そやった、そやったね」
息の合った慌てぶりに、思わず清一郎とお良のほうが恋仲にあるんじゃないのかと疑いそうになったが、その疑念を遮るように、清治郎は意を決したように顔を上げた。
「いや・・・俺は、お良に惚れとる」
「「はぁ!?」」
またもや息の合った問い返しに一瞬怯んだ清治郎だったが、顔を赤くしながらお良に詰め寄った。
爪が皮膚に食い込むほど握り拳をつくりながら、
「夫婦になってくれ」
清治郎がそう言った瞬間に、その場の時間が止まってしまったかにさえ思えた。
「あ痛た、何するんじゃ」
「何するはこっちの台詞だ。状況を悪化させるって言わなかったか?」
「あの様子じゃ、好いておるんは二人とも同じやろ。なのに遠慮して今まで進展せんかったんじゃ。なら荒療治も必要や思て」
のほほんと構えているように見える白梅だったが、奥底では常に無数の気持ちを推し量っているのかもしれない。
「・・・そうかもしれないが」
言葉に詰まってしまった露草を見ながら、茶化すように白梅は語尾を上げた。
「でも本音言うと。ただ面白いかな思うただけなんやけどね?」
「白梅・・・お前な」
三人の中でようやく緊張から解けたのはお良だった。
「嬉しい・・・」
「ええ!?」
勢いとはいえ、自分から告白しておきながら、清治郎は飛び上がりそうなほどに目を丸くする。
「じゃ、じゃあ・・・」
「うん、私も清ちゃんが・・・・・・好き、かも」
「『かも』ってなんだよ、『かも』って!?」
「だって、いきなりなんだもの!」
見てるこっちが恥ずかしくなりそうなやり取りは、もはや痴話喧嘩にしか聞こえなかった。




