反時計の英雄
反時計の英雄
ある時、ある国を治めていた王から一つの命令が下された。その名は「魔狩り令」。これは、現在生存している魔族を一人残らず討伐する。といった令である。
「魔狩り令」の一つ、魔王を討伐するための魔王討伐隊に任命されたのは、黒髪の黒目、そして、全身に黒い鎧を身につけた。柊 冬弥という男である。この男は、数々の功績を上げた名のある冒険者である。冬弥は道中、数々の仲間を失い、魔王の元まで辿り着いた。
冬弥「ふぅ…ふぅ…」
なんとか魔王の元までは来れたが、残りは僕だけか…。後ろにはもう仲間はいない。意を決して僕は魔王の間の扉を開けた。そこには赤色の髪をなびかせ、真紅のドレスを着た女性がいた。恐らく魔王だろう。
魔王「もう戦うしか道はないというのね…」
魔王は悲しみに暮れた目で血でできた鎌を手に取った。
冬弥「ああ。」
それと同時に冬弥も漆黒の剣を抜いた。
そこから数時間。僕と魔王は激しい攻防をし、戦いは僕の一撃で決着がついた。
冬弥「はぁぁ!」
魔王「……」
僕が魔王に最後の一撃を与えた時、魔王は僕に笑いかけた。なぜ、敵なのに笑顔を向けた。なぜ…。そう考えていると、冬弥は一つのことに気づいた。魔族だってただの人間じゃないか。ならなぜ、僕たちは魔族を殺すことに執着していたのか。それに気づいた時、心臓の鼓動が突然早くなり、呼吸が荒くなった。視界が揺らぐ、立つことも難しくなり、僕は地面に跪いた。なんとか意識を保ち、目を開け、立ち上がろうとした時だった。そこには、魔王が遺した灰が落ちていた。それを見たからか、さっきよりも鼓動が早くなる。意識が保てない。立とうとした足はバランスが保てなくなり、地面に倒れ込む。
冬弥「選択が違えば…何か変わっていただろうか…」
僕は眠気のような感覚に襲われ、目を閉じた。その時、全身が白い光に包まれたような気がした。
冬弥「……はっ!」
魔王城にいたはずの僕は一つの木の下に寝ていた。冬弥はこの光景に見覚えがあった。少し前、冬弥がこの世界に転移された時に見た景色だ。ここからこの世界での生活が始まった。
冬弥「似ている場所か…いや、違うな。」
似ている場所としてはあまりに共通点が多すぎる。それに不思議な点がいくつかある。まずは装備だ。僕の装備、剣は全て無くなっている。その代わり、僕が着ていたものは、ここに来た時に着ていたスーツだった。お金も同様に無くなっている。そしてさっきまで魔王城にいたはずなのになぜここに転移、いや、転送…いずれも違う気がする。ただ、ここに運ばれたのは間違いない。そして最後、魔王を倒すために負った傷が全て元通りにされている。治癒魔法はこの世界では珍しいはずだが…まぁそれもこれも一言で説明がつく。
冬弥「時間が戻った…ということか。」
神の気まぐれか、しかしそのおかげで魔族の人たちを救うことができるかもしれない。
冬弥「そうと決まれば、資金調達と防具の回収だ。」
冬弥は一番最初に来た村へ向かった。
冬弥「懐かしいな…」
ここでの思い出はあまり少ない。行くあてもないので仕方なく行った村だったが、酷い目に遭ったのを覚えている。見慣れない格好だったからか、質問攻めにされ、なんとか王都まで逃げ延びた。今はここに長居している場合ではない。王都へ向かおう。静かに街を見回った僕は王都へと向かった。幸いスキルは残っていたので、急いで王都へと向かった。
王都 商人ギルド
冬弥「この服、いくらで売れますか?」
商人「この服は…見たことのない材質ですね。これなら、白金貨10枚ほどですね。」
冬弥「ありがとうございます。」
次に行きつけの武器屋に向かった。
職人「らっしゃい、新規のお客さんだな。製造依頼か?購入か?」
冬弥「購入です。」
職人「そうか、じゃあゆっくり見て決めてくれ。」
やはり忘れているな。いつもなら『冬弥。いつもの手入れか。』と聞いてくる。そして僕は店の奥に置いてある小さな箱を持った。
冬弥「これを頼む。」
職人「ああ。白金貨3枚だ。」
冬弥「ありがとう。」
次に僕は冒険者協会に向かった。冒険者協会にはいつも依頼を受けに行き、お金を集めていた…今は誰も覚えていないだろう。
冒険者協会
受付「冒険者協会へようこそ!見慣れない方ですが、登録ですか?」
冬弥「そうだ、頼む。」
そして僕は魔力測定をしたり、書類を書いたりして、冒険者登録を済ませた。
冬弥「久しぶりだったな。」
冬弥が思い出に浸っていると、さっきの受付の人がやってきた。
受付「登録が完了いたしました。冬弥さん。ようこそ冒険者協会へ!」
冬弥「じゃあ、このゴブリン討伐の依頼を。」
その頃、魔族領地の王都では…
幹部「魔王様!あまりご勝手に行かれますと!」
魔王「いいじゃない!あそこのお店に新作のスイーツが出たらしいの!」
魔王は幹部の言葉を無視し、スイーツ店の方向へと進んでいた。
幹部「それより仕事を先に終わらせてください!」
魔王「いーやーだ!面白くないもの!」
魔王の足が早くなる。
幹部「面白くないからって、やらなくていいものではありません!戻りますよ!」
魔王「じゃあせめて一個だけ!一個だけ買わせて!」
幹部は少し黙ったあと、ため息を出した。
幹部「…はぁ、一個だけですよ。」
魔王「やったー!」
魔王と幹部はスイーツ店へ足を進めた。
それから少し経った後、冬弥は…
冬弥「倒したぞ。」
受付「はい。確認しますね…依頼達成です!報酬の銅貨5枚です。」
冬弥「ありがとう。少し聞きたいのだが、昇格試験は受けられるか?」
受付「はい。受けられますが…初日ですけど、大丈夫ですか?」
冬弥「ああ。問題ない。」
受付「それでは、ご案内します。」
受付の人は冬弥を連れて、冒険者協会の奥の部屋、擬似訓練場へと案内した。
受付「それでは、説明を行います。これから、銀、金、白金の昇格試験では、それぞれの等級を持っている冒険者と実際に戦ってもらいます。使う武器の種類などは自由です。魔法も使って構いません。判定は冒険者が行います。そこは、その人の性格次第ですね。今回戦っていただく冒険者は銀等級冒険者のシバルさんです。シバルさん、お願いします。」
受付が名前を呼ぶと、さっき冬弥が入ってきた扉が大きな音を立てて開かれた。
シバル「俺はシバルだ。さっき紹介もあっただろうが、銀等級だ。よろしくな。」
そこには銀髪の大剣を持った男が立っていた。シバル。この男は後に魔王軍討伐隊の一員となる。僕が初めてシバルと会った時はすでに白金等級だった。たった数ヶ月の間で銀から白金に上り詰めたとしたならば恐ろしい才能だ。
シバル「どうした。具合でも悪いのか?」
冬弥「…ああ。大丈夫だ、少し考え事をしていただけだ。」
シバル「そうか。」
その後、大開きになったドアから審判が入ってきた。そして、僕たちは向かい合わせに立ち、剣を抜いた。
審判「両者、準備はいいか。」
シバル「ああ。」冬弥「問題ない。」
審判「それでは、よーい…初め!」
審判が開始の合図を出した瞬間、二人の剣が衝突した。
シバル「はぁ!」
冬弥「っ…!」
シバルの一撃が重くのしかかる。シバルは大剣を片手剣を扱うように軽々と扱う。しかし、一撃一撃が重たく、並の冒険者ならば一撃で吹き飛ばされる威力だ。しかし、今の僕なら…
冬弥「はぁ!」
シバル「なにっ⁉︎」
僕は全力で力を出し、シルバを壁に吹き飛ばした。訓練場の壁には大きなヒビが入り、シバルは壁にもたれかかっていた。
シバル「こりゃ驚きだ…降参、降参。今の一撃だけで痛感した。今の俺じゃ、絶対にお前に勝てない。これなら、すぐにでも白金等級に登れるな。いや、もしかしたらあの『最強』と並ぶ可能性が…」
シバルは立ち上がり、手を挙げて、そういった。シバルが言った『最強』とは聖騎士団団長のグラクという男だ、彼は魔王討伐隊の副隊長だった。ちなみに団長は僕だった。なぜかというと、話し合いで団長が決まらなく、魔王との戦いの前の軽いウォーミングアップという体で討伐隊でバトルをした。その時に僕が勝ったからだ。
シバル「そういえば、お前の名前はなんだ?」
冬弥「僕は冬弥だ。よろしく、シバル。」
シバル「ああ、よろしくな。これで俺たちは友達だな!」
冬弥「…ああ、そうだな。」
僕たちは少しの間握手をした。友達…前もシバルはそう言ってくれた。シバルは誰にでも優しく、正義感も強い男だ。…やっぱりすごいな、シバルは。
シバル「…ということで、俺は冬弥を白金等級に推薦する。」
少し休憩した時、シバルがこんなことを言い出した。推薦…自分より上の冒険者にそれを言われるということは、本来の昇格試験を飛ばして、冒険者が推薦した昇格試験が受けられるということだ。つまり、今の僕は白金等級の昇格試験が受けられる…今の僕にとって、最速で白金等級になることは、一つの目標でもある。悪い提案ではない、受けよう。
受付「冬弥様、推薦が入りましたので白金等級の昇格試験が受けられますが、どうなさいますか?」
冬弥「そうだな、折角だからな、受けよう。」
受付「では、白金等級昇格試験の会場へご案内いたしますね。」
そうして、僕は冒険者協会から少し離れた闘技場へと案内された。ここで訓練をしたことを思い出す。しかし、そんなことを考えている暇はない。これから白金等級との戦闘だ。気を抜いて勝てる相手ではない。
受付「この先に白金等級のステルさんがいらっしゃいます。」
僕が闘技場の中に入ると槍を持った金髪の男が闘技場の真ん中に立っていた。
ステル「俺の名前はステルだ。お前が登録初日に白金等級の試験を受けにきたっつー奴か。誰かの推薦だろうが、初日の奴を推薦するとは…どこのバカだよ。」
ステルも魔王討伐隊の一員にだった男だ、少し癖のある奴だが、根は優しい。戦闘スタイルは見ての通り槍。力で押していきそうなタイプに見えるが、実は頭脳派だ。
受付「今回は審判が来れないので私が審判をします。いいですね?」
ステル「ああ。別にいいぜ。」
受付「それでは…初め。」
審判の合図とともに槍と剣の衝突音が闘技場に響く。
ステル「ルーキーのくせに中々やるじゃないか。」
冬弥「どうも。」
ステルの攻撃は全ての攻撃が精密に計算されている。槍は一本しかないし、魔法もあまり使えないはずなのに、二刀流かと思うくらいの攻撃速度に先読み、おとりが混じっていて、一つの攻撃を防いだら、いつの間にか別の攻撃が来てる。頭で考えるより感覚で防いだほうがずっとやりやすい。
ステル(くそっ…こいつ、感覚で防いでるな。苦手な相手だな。)
何かに気づいたのかステルは急いで距離を取った。
ステル「おい、お前。本当に冒険者になって初日か?その動きは長年戦って培うものだぞ。」
冬弥「ああ、『冒険者になって』初日だ。」
ステル「…そういうことか。だったら俺も本気で行かないとダメだな。『シャイニングランス』!」
何か覚悟を決めた顔をしたステルは高速で冬弥に近づいた。
冬弥「そうか、だったら僕も本気で行かないとな。『七龍斬』!」
ステル「はあああ!」冬弥「はあああ!」
二人に武器はお互いの体をかすめた。
ステル「…はっ。無理だな、これ。降参だ。降参。当たってたら死んでたな。推薦された理由が痛いほどわかるぜ。」
ステルは額を手で押さえ、笑った。その時だけは何を思っていたのか、元仲間でもわからなかった。
三日後、最速で白金等級になった男として、噂はすでに広まっていた。幸い、名前まではバレていないらしい。
その頃、魔王城では…
魔王「最速で白金等級になった冒険者?」
幹部「はい、なんと初日で白金等級になったとか。」
魔王「そんな人がいたのね。名前は?」
幹部「名前はまだわかりません。これから調査を行います。」
魔王「お願いね。」
話は戻り、ドリム王国 王都
冒険者A「最速で白金等級になった奴、知ってるか?」
冒険者B「知ってるぜ。噂によればあのステルさんと戦ったらしい。」
冒険者A「マジかよ。それは知らなかった。」
冒険者B「俺たちもそんな風になりたいな。」
冒険者A「まだまだ無理だろ!」
冒険者A「はははは!」冒険者B「はははは!」
冬弥「は…ははは…。」
街中に出れば全てこの話題だ。嫌になる。そして、最速で白金等級になったからか、冒険者協会から宿を紹介してもらった。久しぶりにベッドで寝れるからか、夢の中にはすぐに落ちた。そして今朝、王城からの使者と名乗るフードを被った男から、一つの手紙をもらった。
『冬弥殿 今日中に王城へ来るように。この手紙が証明になる。必ず持ってくるように ドリム王2世』
手紙にはそう書いてあった。ドリム王2世に呼ばれるのは初めてだ。『魔狩り令』が発令された頃にはすでに王冠式が行われ、ドリム王3世になっていた。そこまでおよそ3ヶ月ほどか。今のうちに準備を進めないと…でも何を準備すれば。それについて考えるのは後にしよう。僕は手紙に書かれた通り王城へ向かった。
王城
兵士「こんにちは、王城に何か御用ですか?」
冬弥「王様に呼び出されたらしい。この手紙を確認してくれ。」
兵士「はい、本物の刻印ですね。どうぞ。」
手紙を見せると、兵士は王城の中に案内してくれた。その後、兵士は王城の中にいた執事のような格好をした人とやり取りをし、そちらに執事の方について行くように促された。
執事「早めに来てくださり助かりました。王様も時間があまり取れませんので。」
冬弥「そうですか。それならよかったです。ところで、この手紙を渡してきた人はどちら様ですか?」
執事「それは私です。」
冬弥「…そうですか。」
その発言から少し警戒を強めたが、特に何かあるわけでもなく王の間へと案内された。
執事「この先が王の間です。大丈夫だと思いますが、くれぐれも無礼の無いようにお願いいたします。」
冬弥「ああ。」
執事が扉の両隣にいた兵士たちに合図を送ると、二人の兵士が扉を開けた。扉の先には広い空間があり、その奥には王が椅子に座っていた。そこから入り口にかけて青色の絨毯が敷かれており、その部屋の隅には兵士が並んでいた。冬弥は慎重に歩き、部屋の中央あたりで跪いた。
王「顔をあげよ。冬弥よ。」
冬弥「はっ。」
シーザ「私はドリム王国国王ドリム2世、シーザである。」
冬弥「はい、存じております。それで王様、私にどのようなご用件があるのでしょうか。」
シーザ「…そうだな、お前たち、一度この部屋から出よ。」
ドリム王2世は兵士たちを部屋から出し、ドリム王2世と対面する形になった。
シーザ「ここからの話は国家機密事項だ。なので、彼らには出ていってもらった。」
冬弥「それで話とは…」
シーザ「冬弥よ、お前は魔族についてどう思う。」
冬弥「魔族について、ですか…」
僕は深く考えた。どう答えるのが正解だろう。もしかしたらこの答え次第で僕は処刑されるかもしれない。かといって、嘘をついて乗り切れるものなのだろうか。僕は知らないうちに追い込まれていた。じりじりと壁が迫ってくるように決断の時が迫られる。そこで僕は一種の賭けに出ることにした。この後どうなるかは分からない。僕は、思い切って本心を話してみることにした。
冬弥「魔族は普通の人間と変わらない、と思います。」
シーザ「そうか…私もそう思う」
シーザは冬弥の答えを聞いた後、そう言った。賭けはなんとか勝ちのようだ。助かった。
シーザ「そこで私から一つ頼みたいことがある。」
冬弥「なんでしょうか。」
シーザ「最近、魔族をよく思わない連中が居てだな。その者たちは『魔族滅死隊』というそうだ。」
『魔族滅死隊』、聞いたことのない名前だ。もしかしたら、ドリム王3世はその一員かもしれない。
シーザ「そこで冬弥には、その者たちを捕縛して欲しいのだ。」
冬弥「それで、その者たちはどこに?」
シーザ「この国の西に位置するナンセーイ塔にいるとの報告だ。」
冬弥「わかりました。捕まえてきます。」
シーザ「すまないな。」
冬弥「大丈夫です。」
その後、僕は宿に戻った。そしてその日の夜、僕はナンセーイ塔に向かった。ナンセーイ塔。それはドリム王国になる前の国が、戦争をしていた時代に海から来る船の迎撃用に作られたらしいが、今はただの廃墟だ。
ナンセーイ塔
門番「はぁ〜だりぃ。なんで俺がこんなことを…ぐあっ!」
門番は地面に倒れた。
冬弥「とりあえず、門番は問題なし。」
冬弥は魔力で生み出した弓に漆黒の矢を構えた。『陰の矢』。その技にはそんな名前がある。この技は相手の陰から矢を出して攻撃したり、自分の陰から矢を取り出したり、色々応用が効く技だ。この矢は他の矢の効果を乗せることができ、今回は『捕縛の矢』の効果を付与した。
冬弥「『ホーミングショット』!」
僕は相手を追跡できる技を使って矢を放った。その後、塔から驚きの声などの様々な声が聞こえた後、元の静寂に戻った。その後、『ワープ』を使い僕の目の前に魔族滅死隊を集めた。今すぐにもドリム王のところに持って行きたいが、まだ夜中だ。ひとまず僕は一気に捕縛することにした
冬弥「『無闇』。」
この技は相手を闇の中に入れる技だ。僕が出した『闇』は巨大な箱から小さい立方体になった。僕はそれを持ち、宿へ戻った。
次の日 王城
シーザ「冬弥よ、もう捕まえたらしいな。それで魔族滅死隊は何処にいる。」
冬弥「はい、今出します。『無闇・解』。」
冬弥がそういうと小さな黒い箱が巨大化し、魔族滅死隊の人たちが捕縛された状態で排出された。
シーザ「ふむ。その魔法、見たことがないな。どこでそれを覚えたのだ。」
冬弥「自分で作りました。」
シーザ「そうか。まさかここまでの逸材だったとは…」
冬弥「王様、そろそろこの者たちを連れていった方がよろしいのでは?」
シーザ「そうだったな、其方達の処遇は明日決める。連れて行け。」
騎士「はっ!」
魔族滅死隊は騎士団に連れて行かれた。その時、魔族滅死隊の一人が「こんなことしたら、ボスが黙ってねぇぞ!」と叫んだが、騎士たちに抑えられ、連れて行かれた。
シーザ「さて、冬弥には何か褒美をやらなければな。何が欲しい、言ってみよ。」
冬弥「そうですね…それならば、魔族領の王都に入れる許可証をもらえないでしょうか。」
シーザ「ふむ、問題はない。少しそこで待ってくれ。」
僕は王城の客室へ案内された。そして10分後…
シーザ「できたぞ。」
冬弥「ありがとうございます。」
冬弥は通行証をもらい、王城から出た。
王都 南門
冬弥「よし、行くか。」
ここから魔族領地の王都までどれぐらいだろうか、方向は合っているはず。ワープを試してみるか。
冬弥「『ワープ』。」
冬弥がワープした先は森の中だった。
冬弥「失敗したか…」
冬弥はとりあえず森を抜けることにし、森を抜けると広い平原が見え、その先には巨大な都市がそびえ立っていた。
冬弥「これは…魔族領地の王都か…?」
冬弥が王都に入ると、そこは冬弥が知っているのとはまるで違う平和そのものだった。争いとは程遠く、道には屋台が並び、人々が行き交っている。空には綺麗な鳥が飛んでおり、この先起こるであろう悲劇を何も知らない様子だ。
冬弥「こんな街を僕たちは…」
その後の言葉は口に出さなかった。そして改めて、魔族を救うという信念が強くなった。
???「仕事終わったし、スイーツ食べに行こ!」
冬弥「まずはこの街を見ておくか…」
冬弥は歩き出すと、曲がり角から飛び出してきた女性にぶつかった。
???「きゃあ…」
冬弥「危ない!」
冬弥はなんとか女性の手を掴んだ。それは赤い髪をなびかせた女性だった。
???「あ、ご、ごめんなさい…」
冬弥「いや、こちらこそ前を見てなかった、申し訳ない。あの、名前は?」
レナ「私の名前はレナ、あなたは?」
冬弥「僕の名前は冬弥だ。」
その後、お詫びということでレナさんのお気に入りのお店に連れていってもらった。
スイーツ店『strawberry house』
レナ「ここのパフェ、とても美味しいんです。」
冬弥「それは気になりますね、僕も食べてみます。」
数分後…
店員「お待たせいたしました!『いちごとバナナのクリームパフェ』です!」
冬弥「美味しそうですね。」
レナ「そうでしょ!」
冬弥「なんでレナさんが誇らしそうなんですか…」
レナ「別にいいじゃない、それより早く食べましょ!」
冬弥「そうですね。それじゃあ…」
冬弥「いただきます。」レナ「いただきます!」
冬弥はパフェをスプーンですくい、口に運んだ。
冬弥「…!美味しいですね。」
口に含んだ瞬間、口にいちごが広がる。そしていちごの酸味をバナナとクリームの甘みが中和してくれる。少し甘すぎる気がするが、問題なく食べられる。
レナ「う〜ん!やっぱり美味しい!」
それから少し経って…
レナ「ごちそうさまでした!」冬弥「ごちそうさまでした。」
冬弥「すみません、奢ってもらって。」
レナ「全然大丈夫!私もあれ、食べたかったし!」
冬弥「ありがとうございます。」
少し聞いてみるか…
冬弥「もしかしてレナさんってどこかの貴族ですか?」
レナ「う〜ん。まぁそんなところかな。そんな感じに見える?」
冬弥「まぁ、はい。」
レナ「もうちょっと隠したほうがいいわね。」
レナは小さくつぶやいた。
冬弥「今何か言いましたか?」
レナ「ん?ああ、独り言、独り言。」
冬弥「そうですか。あの、いつかこのご恩、お返しします。」
レナ「いや全然いいって!大丈夫だよ!」
冬弥「それでは、宿を探さないと行けないので…」
レナ「だったら、『宿屋 月花』っていうところがいいよ!」
冬弥「本当ですか。ありがとうございます。何から何まで…」
レナ「これは私が勝手に言ったことだから。」
冬弥「それでは、またいつか。」
レナ「うん!またいつか!」
宿屋 月花
冬弥「あの髪と目、そしてあのオーラ…」
恐らく魔王だと考えるのが妥当だろう。あの感じ、とても人を傷つけるようには見えない、そして最後の戦いの時も、あえて、手を抜いていた。レナは最後まで人を攻撃しないようにしていたのだろう。だとするならば、やはり『魔狩り令』は…
魔王城 レナの自室
レナ(あの人、もしかして最速で白金等級になったっていう冒険者?すごいかっこよかったー!もっと話しとけばよかったな…)
レナ「魔王の特権を使って…でも、う〜ん。決めた!明日、冬弥を呼び出す!」
次の日
冬弥「なんか手紙が届いてる…」
『冬弥様 至急、魔王城へお越しください 魔王軍幹部 メラマ』
冬弥「はぁ…」
まさか強制的に呼び出してくるとは…嫌々行くのもあれなので、どうにか理由をつけて元気を出した。
魔王城 王の間
レナ「また会ったわね、冬弥。」
冬弥「いやいや、レナさんが呼び出したのでは…?」
レナ「細かいことは気にしない!」
レナはいかにも魔王が座りそうな椅子に座っていた。
冬弥「それで、魔王様が僕になんの御用でしょうか。」
レナ「そんなかしこまらなくてもいいって!…ってなんで魔王ってわかったの⁉︎」
冬弥「誰でも見ればわかると思いますが…」
レナ「まぁそれはいいの…冬弥、私と勝負しなさい!」
冬弥「…え?」
レナ「だからー!私と勝負して!」
冬弥「ええと、ただの白金等級と魔王様じゃ戦いにならないんじゃ…」
レナ「それでも戦えると思ったの。」
冬弥「根拠は…」
レナ「女の勘!」
以前、誰から聞いたか分からないが、女の勘、というものはバカにならないと聞いたことがある。恐ろしいな、女の勘。
冬弥「別にいいですけど…面白くないですよ。」
レナ「それでもやる!」
魔王が戦うということなので、魔王軍の幹部たちが特設会場を用意してくれた。
特設闘技場
メラマ「よーい初め!」
冬弥「早速行かせてもらいます。『ウォーターバレット』、『ライトニングサンダー』!」
レナ「感電狙いね!だけど、甘い!『花の舞 赤花』!」
レナは花のような舞で冬弥の攻撃を弾いた。
冬弥「防がれた…でも、想定内。」
闘技場の上空に無数の矢が現れた。
レナ「え⁉︎」
冬弥「『インフィニティアロー』!」
レナ「っ…!『ブラッディアロー』!」
無数の矢と血の矢が空中でぶつかり合っていた。
メラマ「魔王様と互角…これが『漆黒の英雄』の力…」
レナ「『ブラッディランス』!」
冬弥「『ブラックカイザー・ランスモード』!」
その戦いは一進一退だった、レナの武器は血でできているため、破壊しても意味がない。そして、その血を操って罠も仕掛けることもできる。そのため、飛び散った血の場所を全て記憶しつつ、飛んでくる罠を予測し、今来ている攻撃を防がないといけない。側から見れば、血の針地獄だ。
冬弥「レナさん、そろそろ終わりにしましょうか。」
レナ「そうね!」
冬弥「『七龍の牙』!」
レナ「『ブラッディトルネード』!」
血の竜巻と龍の牙のような剣技がぶつかった。二つの技は相殺し、その衝撃によって闘技場はボロボロになった。
冬弥「…流石に疲れたな。」
レナ「もうムリ〜」
二人は同時に倒れた。
冬弥「……こ、こは。」
???「あら、起きた?ここは魔王城の医務室。あなた、倒れたの。」
冬弥「…えっと、誰、ですか?」
ヒーリア「私は魔王軍幹部、ヒーリアよ。よろしく。」
冬弥「えっと、よろしくお願いします。ところで、レナさんは…?」
ヒーリア「魔王様は自室で寝てるわ。」
冬弥「そういえば。ヒーリアさん、勝負はどうなったんですか?」
だんだんと意識がはっきりしてきた。今の状況を整理する。僕はレナさんとの戦いで、倒れて、医務室に運ばれた。ということか。
冬弥「そういえば戦いの結果は?」
ヒーリア「引き分け。」
冬弥「やっぱりそうなるんですね。」
ヒーリアと冬弥が会話をしていると、医務室の扉が開けられた。
サラマ「ヒーリア、魔王様が目覚めたぞ。」
ヒーリア「本当⁉︎さすが魔王様、回復が早いわね。」
冬弥「僕も連れていっ…っ!」
ヒーリア「あなたは安静!わかった?」
冬弥「は、はい」
体が重く、節々が痛い。なぜだろうか、そこで僕は気づいた。今の自分の体で無茶をしすぎたのだ。時間が戻ったと仮定するならば、僕の体も戻っている。スキルがあったとしても体がついていけていなかった。それが一番可能性が高い。今までの疲労分も重なっているかもしれない、数日は休まないといけなさそうだ。そこから数日はベッドで寝たきりだった。戦闘なんてまともにできるはずもなく、魔王軍幹部の人たちに色々教えてもらった。そして疲れで倒れてから一、二週間で、僕はやっと体がまともに動かせるぐらいになった。ヒーリアさんは「あなた本当に人間?普通この疲労だったら一ヶ月は倒れてるわよ。」と言っていた。体の丈夫さは昔からなので、そこは元からだとヒーリアさんに伝えた。
冬弥「やっと面会ができるのか…」
ヒーリア「リハビリお疲れ様、にしても回復早いわね。改めて聞くけど、本当に人間?」
冬弥「そうです。」
この二週間、魔族について色々知ることができた。魔族のことを聞けば聞くほど心が痛む。あの時に魔王討伐隊を断っておくべきだった。あの時にもっと魔族について調べていれば…そう学ぶたびに思う。しかし、昔のことを今更嘆いたところで意味がない。僕は来るべき未来を防ぐため、王の間へと向かった。
王の間
冬弥「…は?」
僕はレナさんの提案に呆気を取られていた。助けを求める目で幹部たちを見るが、幹部たちも固まっていた。それもそのはず…
レナ「冬弥、結婚して!」
結婚を申し込まれたのだ。
冬弥「…なんでですか?」
レナ「なんでって、冬弥が強いから!」
訳が分からない。なんで強いから、という理由で結婚になるんだ。
冬弥「ええと…?」
レナ「私、冬弥のことが好きなの!」
初めて言われた。元の世界では恋だったりとは全くの無縁だったからだ。「好き」、その言葉はまるで、僕以外に言われる言葉だと思っていたのだ。
レナ「それで、私の本心は言ったから、答えを聞かせて!」
さらに追い詰められる。レナさんは答えを待っている。どう答えれば、どう答えればいい。思考を隅々まで巡らせた結果、僕は言った。
冬弥「レナさん、僕は結婚できません。」
レナ「…そうだよね、いきなりこんなこと言っても、ダメだよね。ごめんね…」
冬弥の言葉を聞いたレナは自分を慰めるように、言葉を並べた。しかし、冬弥の言葉には続きがあった。
冬弥「だけど、お付き合いなら大丈夫、です。」
ここまで自分の言葉を口にするのに時間がかかったのは初めてだった。恐る恐るレナさんの様子を見る。さっきまで暗かったレナさんの顔は明るくなり、喜びが抑えきれない様子だった。レナさんは「恋人…恋人かぁ…ふふふ。」と小さく笑っていた。そこからなんとか理解が追いついた幹部の人たちに説明をし、どうにか状況を飲み込んでもらった。その後、僕は一旦ドリム王国に帰り、冒険者の仕事を再開することにした。
ドリム王国 王都
シバル「おっ!『漆黒の英雄』さんじゃないか!久しぶりだな。」
冬弥「『漆黒の英雄』…」
その名前は昔に聞いた名前だった。僕が魔王討伐隊に任命された頃、人類の希望だとかなんとかで、その見た目から『漆黒の英雄』と呼ばれていた。
シバル「あちゃー、もう知られてたか。驚かせてやろうと思ったのにな。」
冬弥「まぁ、そうだな。」
シバル「ところで、これから冬弥はどこに行くんだ?」
冬弥「依頼でドラゴン討伐だ。」
シバル「お前…本当にすごいな。」
冬弥「今の状態の腕試し、だな。」
シバル「まぁ頑張れよ!」
冬弥「ああ。」
その後、あっさりドラゴンを討伐し、冒険者協会に戻った、その時受付の人からこんな話を聞いた。
受付「冬弥様、王城から呼び出しがかかっています。早く行ったほうが良いのでは…」
ドラゴンを倒しに行っていた時に呼び出しがかかっていたようで、急いで王城へ向かった。
王城
シーザ「急に呼び出してすまないな、冬弥。」
冬弥「いえ、僕はいつでも暇なので。」
シーザ「それなら助かる。早速本題に入ろう。近頃、ドリム王国の北東に位置するダンジョンからスタンピードの兆しが見られるのだ。」
スタンピード。これが発生した頃の前の等級は銀、だったか。その頃は後衛で弱い魔物を狩っていたが、今回は前線か、と考えていると、一つのことに気づいた。
冬弥「失礼ですが、先に魔物を討伐することはできないのでしょうか。」
シーザ「ふむ、それができれば良いのだが、生憎、スタンピードが発生するまでどれだけ倒しても増え続けるのだ。」
冬弥「そうですか…」
発生する前に解決を狙おうとしたが無駄か。ならば早期決着をつけるべきだな。
冬弥「それで、僕はどこを担当すれば良いのでしょうか。」
シーザ「白金等級は基本、主に前線を任されるのだが、冬弥にはその中の一つ、最前線の部隊で隊長を頼みたいと思っている。部隊の人員はステル、冬弥、グラクだ。」
冬弥「グラクか…」
冬弥は久しぶりに会う聖騎士の男を思い出していた。
その頃、聖騎士団訓練場では、ある男が手紙を握りしめていた。
???「私がいる部隊なのにも関わらず、最近白金等級になったばかりの素人が隊長だと…ふざけるな!必ず奴に私の実力を認めさせてやる!」
次の日
冬弥「また手紙か…」
『冬弥様 聖騎士団長のグラク様が聖騎士団訓練場でお待ちです 聖騎士団 団員』
冬弥「…」
まさかここまで早いとは思わなかった。グラクは実力で人を見極めるタイプで、自分より実力が上だとわかると大人しくなる。恐らく、最近白金等級になったばかりの新人が同じ部隊で隊長になったことが不服なのだろう。早いところ終わらせるべきか。
聖騎士団訓練場
冬弥が聖騎士団の訓練場に向かうと一人の男が槍を壁にかけて奥の壁にもたれかかっていた。
???「貴様が最近白金等級になったらしい冒険者か。」
冬弥「ああ、そうだ。」
男は地面に手を置き、立ち上がった。
グラク「私の名前はグラク。貴様の実力、確かめさせてもらうぞ。」
冬弥「わかった。」
冬弥は『加速』を使い、グラクに急接近し、剣を振った。
グラク「ふっ…甘い!」
しかしグラクはそれをしゃがんで躱し、逆に槍を突き出した。
冬弥「っ…。」
冬弥はそれを間一髪で躱し、距離を取った。
グラク「…貴様、気づいているな。」
冬弥「なんのことだか。」
そう言った後、グラクが持っていた槍が光りだし、弓へと姿を変えた。そう、グラクが持っている聖剣『アポロン』は自由自在に己の姿を変えることができる。そしてグラクはどんな武器も扱うことができる万能型だ。ちなみにこのことを知っている者は少ない。
グラク「『シャイニングアロー』!」
冬弥「『暴風の盾』!」
魔法を使って矢の雨を防いでいる間にグラクが迫る。今度は薙刀だ。
グラク「はあああ!」
グラクはその武器によって戦闘スタイルが変わる。なので、金等級、いや、白金等級の冒険者でも、それを防ぐのは難しいだろう。
冬弥「『エンドレスアロー』。」
冬弥は自身の真上に攻撃を放った。
グラク「自暴自棄にでもなったか!」
グラクの大剣が振り下ろされる。その攻撃を間一髪躱し、距離を取った。しかし、グラクは大剣を足場に、足に力を込め、こちらへ飛んできた。その手にはいつの間にか槍が握られている。
グラク「はああああ‼︎」
冬弥「『カウンター』。」
グラクの攻撃は冬弥の剣に止められた。そして、その一瞬の隙を見逃さず、冬弥は蹴りを入れた。
グラク「ぐあっ…!」
グラクは壁にぶつかりそうになったが、なんとか武器を使い。勢いを抑えた。
冬弥「『テレポート』。」
グラク「奴はどこに…っ!」
冬弥「『七龍斬』!」
冬弥はグラクの背後に周り、剣を振り下ろした。グラクは盾を使い、防いだ。グラクはすぐに距離を取った。
グラク「どういう原理だ…」
冬弥「…グラク、時間切れだ。」
グラク「それはどういう…まさか!」
グラクは急いで上を向いた。そこには避けきれないほどの無数の矢がこちらへ向かっていた。
グラク「そういうことか!」
グラクは盾を上に構えた。恐らくあの時だろう。無数の矢が降り注ぐ。防ぎ切れるか、そう考えてる間もなく、矢が降ってくる。その時、視界の端で黒いものが動いた。考えなくてもグラクにはその正体がわかっていた。
冬弥「『七龍斬』!」
グラク「ぐあああ!」
グラクは勢いよく壁に衝突した。
冬弥「…僕の勝ちだ。」
グラク「…そうだな、お前を強者と認めよう。すまなかった。」
グラクは頭を下げた。
冬弥「大丈夫ですよ。」
冬弥は旧友にそう返した。
この話は次の日にはすでに噂として流れていた。『漆黒の英雄』の噂では、漆黒の英雄は魔族なのでは?というありもしない噂も流れていた。そして、それから一週間後、ついにスタンピードが発生した。
冬弥「金等級以上は前線を維持!それ以外は雑魚狩りに集中しろ!」
魔物達「グゥアアアア!」
冬弥「『ブラックカイザー・マジックモード』。『流星群』!」
魔物達「グアアアアア!」
冬弥「これでも全然減らないな…」
冬弥(レナさんは大丈夫だろうか…)
魔族領地
レナ「『ブラッディアロー』!」
サラマ「『焼却』!」
レナと幹部達の活躍によって、魔物は抑えられていた。
レナ「幹部は私に続いて!」
幹部達「はい!」
サラマ「魔王様、ドリム王国側の平原ですごい爆発があったそうです。」
レナ「それは多分…冬弥かも!」
レナ(私ももっと頑張らなきゃ…!)
ドリム王国
冬弥「魔族達の方の状況が気になるな。」
グラク「スタンピードはボスを倒せば終わる!金等級はボスの捜索をしろ!」
冬弥「ボス…」
そういえばボスを倒せばスタンピードは終わるのか。だったら…
冬弥「グラク!僕がボスを探す!」
グラク「…わかった!無理はするなよ!」
冬弥「ああ!」
冬弥はダンジョンがある広大な森の中へ向かった。
魔族領地
サラマ「魔王様、ヒーリアから、ダンジョンの方角で巨大な魔力反応が見られると報告が…」
レナ「恐らくボスでしょうね。私が行くわ。」
サラマ「お気をつけて。」
レナはダンジョンがある森の中へ向かった。
レナ「…これがボスね。」
レナがボスを見つけるのにさほど時間は掛からなかった。運よくこちら側に向かっていたらしい。レナの目の前には巨大なドラゴンがいた。
レナ「『ブラッディランス』!」
レナは大量の血の槍を飛ばしたが、ドラゴンの鱗には傷一つつかなかった。
レナ「嘘でしょ⁉︎」
今回のドラゴンは普通じゃない。そう直感的に感じるほど、そのドラゴンは強かった。
ドラゴン「グアアアアア‼︎」
レナ「っ…!『ブラッディシールド』!」
ドラゴンはレナ目掛けてブレスを吐いた。
レナ「防ぎ…きれない…!」
レナがドラゴンのブレスを盾で防いでいると、何者かが現れた。
???「『七龍の盾』!」
何者かはドラゴンのブレスを弾いた。レナはその顔に見覚えがあった。
レナ「冬弥!」
冬弥「ふう…危なかったな、レナ。後は僕に任せてくれ。」
レナ「で、でも…」
冬弥「好きな人を守るのが、男の使命だろ?」
レナ「…!」
冬弥「だから、とりあえずレナは他を頼む!」
レナ「……わ、わかった!」
レナは冬弥を背に走り出した。
冬弥「…行ったか。ふぅ…。これで一対一だな。」
ドラゴン「グアアアアアアア‼︎」
冬弥はドラゴンに剣を向けた。
冬弥「好きな人を守るのが、男の使命だろ?」
レナ「…!」
レナ(そ、そんなこと言われたら…)
冬弥「だから、とりあえずレナは他を頼む!」
レナ「……わ、わかった!」
レナの口は笑顔になっていた。
魔族領地 平原
兵士「魔王様!」
レナ「大丈夫?」
レナは怪我をしている兵士の元へ駆け寄った。
兵士「先ほどよりも魔物の勢いが強くなっています!魔王様は前線の維持を!」
レナ「…わかった、ありがとう。サラマ、怪我人をヒーリアのところへ。」
サラマ「了解しました。」
サラマは怪我をした兵士を連れて、魔王城へと向かった。
レナ「『吸血鬼の涙』(ヴァーレ)!」
レナは大量の血を使って、ほとんどの魔物を倒した。
レナ「はぁ…はぁ…。もう少しの辛抱よ!」
レナは自分にそう言い聞かせ、残りの魔物の元へと向かった。
森の中
冬弥「『ヤマタノオロチ・刹那』。」
ドラゴン「グァァァァァ!」
ドラゴンは叫びながら、地面に倒れた。
冬弥「…」
冬弥はこのドラゴンとの戦闘中に大事なことを思い出した。それは前のスタンピードの時。確かその時はドラゴンが突然変異によって凶暴化し、魔王軍、ドリム王国軍どちらも少なくない被害を受けた。という物だった。もしこれで、レナさんが小さくない怪我を負っていた場合、魔狩り令が発令された時、まだレナは完全な力を出せない状態でいたのではないか。それなら、魔狩り令の時と、レナと手合わせした時の力に差が出るのはおかしくない。もしかしたらこのスタンピードは…
冬弥「いや、まだ考えるのは早い。確証を持たないと…」
冬弥はドリム王国へ戻った。
ドリム王国 平原
シバル「魔物たちが消えていく…」
グラク「どうやら終わったようだ。」
ステル「…やったのか、冬弥。」
魔族領地 平原
レナ「終わった…?」
サラマ「はい。どうやら、ボスが倒されたようです。」
レナ「…」
サラマ「魔王様、どうかされましたか?」
レナ「〜終わった!勝ったんだわ!」
サラマ「では、そろそろ国民に伝えましょう。」
レナ「わかってるわ。」
レナは魔族領の王都へ向かい、中央広場に国民を集めた。
レナ「我々は今回のスタンピードによって被害を受けたが、それを乗り越え、勝利した!我々魔王軍は勝利したのだ‼︎」
国民「わああああああ‼︎」
レナが腕を力強く上げると、国民達も力強く腕を上げ歓声が響いた。
ドリム王国 平原
シバル「冬弥、お疲れ。」
冬弥「ああ、シバルもお疲れ。」
シバルと冬弥が平原に座っていると、グラクがこちらに向かってきた。
グラク「お前が討伐したのか。」
冬弥「ああ。ドラゴンだった。恐らく突然変異した個体だろう。」
グラク「そうか。情報提供感謝する。」
グラクはボスの情報を聞いた後、すぐに元の場所に戻った。
ステル「よっ。」
それから少し経ち、冬弥が平原に寝っ転がっているとステルが上から覗き込んできた。
冬弥「…ステルか。」
冬弥は起き上がり、ステルの方へと向き直った。
ステル「今、スタンピードの防衛に成功したからって、祭りやってるぞ。お前は行かなくていいのか?」
冬弥「…そうだな、僕は騒がしいのはあまり好みじゃないからな。」
ステル「そうか。気が変わったらいつでも来いよ。シバルとグラクも楽しんでるぜ。」
そうステルは言いながら、王都へ向かった。
冬弥「やっぱ優しいな。」
冬弥は再び地面に寝っ転がり、橙色に染まった空を眺めた。もうすぐ日も落ちて空は暗闇に包まれるだろう。冬弥は、魔王討伐隊にいた頃を思い出した。あの時はなんやかんや楽しかった。今も彼らは僕を友達だと思ってくれているのだろう。あの頃に戻れたら…
冬弥「っ…!」
冬弥は自分の拳を握りしめた。何を考えているんだ。もう僕は後戻りできない。たとえあの三人を裏切ろうとも、僕はやらなければならない。僕は立ち上がり、王都へ戻った。
そこから二ヶ月はレナが「恋人らしいことを何もしていない。」という理由でデートをしたり、レナの仕事を手伝ったりしていた。その時、レナから「さん付けなんてよそよそしくない?」という理由でさんをつけないようにした。それと並行して僕はスタンピードについての情報収集も行なっていた。
冬弥「…っていうのが僕の知ってる銃って武器なんだけど。」
レナ「何それ!後で作らせようかしら…」
冬弥「流石にそれは…」
その間はとても楽しかった、久しぶりに充実した生活だった気がする。でも、僕は知っている。こんな生活を続けられるのはこれで終わりだということを。
ドリム王国
シーザ「これより、王冠式を行う!」
ついにこの日が来てしまった。『王冠式』。それは現在の王が次の代に王冠を渡す。つまり王位を継承する式だ。ここで王位を継承されるのは、後のドリム王3世、フェイブ。この男が王冠式の一週間後に『魔狩り令』を出す。
シーザ「これからは新たなる王、フェイブがこの国を収める!この男は私が最も信頼できる息子だ!きっと私よりもより良い国にしてくれるに違いない!」
この後あいつが『魔狩り令』を出すとは、誰も予想していなかっただろう。
シーザ「フェイブ。お前にドリム王3世の座を授ける。」
フェイブ「ありがとうございます、父上。」
冬弥「…」
あいつの笑顔を今、まじまじと見つめていた。その笑顔は誰にもバレないように悪意を隠していた。それにさらに僕の怒りは増した。
シバル「どうした、冬弥。あのフェイブって王様が気に食わないのか?」
冬弥「…まぁ、そうだな。」
シバル「そうか。まっ、俺はどっちでもどうでもいいが。」
シバルは顔を向き直し、王冠式を見た。誰も知らない、これからの地獄を思い出しながら、冬弥は情報を整理した。
冬弥「シバル、用事ができた。ちょっと行ってくる。」
シバル「ん?ああ、行ってこい。」
魔王城
レナ「仕事めんどくさ〜い!」
レナは机の上にある大量の書類を見て、項垂れていた。
レナ「また仕事サボろうかしら…」
レナが窓から外の景色を眺めているとコンコンと扉が叩かれた。
サラマ「魔王様、冬弥様が魔王様に用があると。」
レナ「通して。」
そうすると、扉が開かれ、冬弥が入ってきた。
冬弥「すまない、レナ。仕事中なのにも関わらず。」
レナ「いや、全然いいよ。そろそろ気分転換したかったし。」
冬弥「今回は真面目な話がある。」
レナ「…何?」
いつにも増して真剣な冬弥に少し圧倒された。こんな冬弥は見たことがない。一体どんな話なんだと、レナも身構えた。すると、冬弥は口を開いた。
冬弥「これから一週間後、ドリム王国から魔族を全滅させることが目標の『魔狩り令』と呼ばれる命令が出される。」
レナ「…え?」
レナは困惑した。魔族を全滅?『魔狩り令』?そんなバカみたいな命令があるはずがない。きっと嘘だ。そうに違いない。冗談を言っているのだ。そう思い、レナは冬弥の顔を見た。しかし、冬弥の顔は真剣な表情のまま変わらない。この顔を見ると冗談とは思えない。
レナ「それって、本当なの…?」
冬弥「ああ、信じてくれないかもしれないが真実だ。」
レナ「り、理由はあるの?」
冬弥「ああ、その理由は、あのスタンピードにある。あのスタンピードのボスだったドラゴンは突然変異した個体だった。レナなら違和感に気づいていただろう。」
レナ「確かに…」
冬弥「そして、スタンピードの調査をしているうちにある結論に辿り着いた。あのスタンピードは魔族滅死隊と呼ばれる奴らが仕組んだもので、あれの本当の目的は魔族の戦力を削ぐことだった。そして、調査から、魔族滅死隊のリーダーは現在のドリム王であるフェイブであることが確定している。理由としては十分だろう。」
レナ「でも、もしそれが本当だったとして、なんで人間のあなたが私に伝えるの。その令が本当なら、冬弥と私は敵同士のはずでしょ?」
冬弥「それは…僕は魔族の味方をするつもりだからだ。正確にはレナの、だけどな。」
レナは今得た情報を整理していた。王が変わったのなら、全てのことが証明できる。人も魔族も、誰も自分以外の心を読むことはできない。ならば、今の王が無茶な命令を出しても無理はない。客観的に判断するならば可能性は十分ある。
レナ「…分かった。冬弥のこと、信じるからね。」
冬弥「すまない。」
レナ「起きない可能性だってあるんだから、心配しなくてもいいよ。」
そしてこの一週間、魔族は『魔族強化期間』という名目で訓練を重ねた。『魔族強化期間』はレナが発表してくれた。兵士ではない者達も護身術を学ばせた。その間、幹部のみに『魔狩り令』の事を伝え、幹部同士や冬弥と訓練をすることによって、幹部とレナを成長していた。
一週間後 『魔狩り令』 発令
ここから先はひたすら乱戦。ひどい戦いだ。戦力的にも経済的にも圧倒的にこちらが不利だ。
冒険者A「魔族だ!殺せ!」
魔族A「ここから先に通させるな!」
王都の城門は崩壊。そこから無限のように冒険者が入り込んでくる。魔族は『魔族強化期間』のおかげで統率がとれた行動ができるようになっている。それでもギリギリだ。
冬弥「『グランドクロス』!」
冒険者A「ぐあああ!」
魔族A「…あいつは誰だ?」
『魔狩り令』が発表された後、自分が魔王軍に加担していることは秘密にしてある。人間が魔王軍に加担してると知られるのはまずいからな。
しかし、一方では…
魔族B「ぐぁっ!」
グラク「邪魔だ。」
グラク達『魔王討伐隊』によって前線は少しずつ破壊されていった。
2時間後
魔王軍はほぼ全滅。現在「魔王討伐隊」は幹部と交戦している。その時、王の間の扉が開かれた。
グラク「お前が魔王か…」
レナ「待って、まずは話し合いをっ…!」
グラク「問答無用!」
グラクはレナに槍を投げた。
冬弥「はぁ!」
冬弥は飛んできた槍を落下攻撃で弾いた。
グラク「冬弥か。」
シバル「そうか、冬弥は魔王軍についたんだな。」
冬弥「ああ。」
シバル「一応聞いておくが、理由はなんだ。」
冬弥「心に決めた人を守るためだ。」
シバル「そうか。なら…」
シバルは拳を合わせた。
シバル「お前の覚悟を見極める。」
ステル「おもしれぇ事になってんじゃねぇか。」
ステルも遅れて部屋に入ってきた。
ステル「俺も混ぜてくれよっ!」
ステルは冬弥に槍を突き出した。それを冬弥は少し身を引いて避けた。
ステル「マジかよ!」
シバル「ステル!男同士の戦いの邪魔をするな!」
冬弥「僕は二人同時で構わない。」
ステル「冬弥がこう言ってるからいいだろ。」
シバル「そうか。冬弥がそれで構わない。」
冬弥「こうなった以上、話し合いは無理だな。レナ、戦うしかない。この二人は僕が引き受ける。」
レナ「……分かった。」
レナは様々な葛藤と戦いながら、血の鎌を取り出した。
シバル「よそ見かよっ!」
冬弥「っ…」
シバルの攻撃を冬弥は上体を逸らし避けた。
冬弥「ここからは本気で行かせてもらう。」
冬弥は漆黒の剣を取り出した。
一方レナ達は…
レナ「『ブラッディアロー』!」
グラク「遅い遅い!」
レナ「くっ!」
レナはグラクの攻撃を避けるので手一杯だった。
グラク「魔王と言っても大したことないな。」
レナ「っ…!魔王の名は伊達じゃない!」
レナは大量の血を生み出した。
グラク「これからか!」
レナ「我の血は目となり鼻となり耳となり骨となる!我を形作り、我と共に戦え!『ブラッディコピー』!」
レナの周りに霧が出てきた。
グラク「何も見えない…」
霧が晴れると、そこにはレナが二人いた。
グラク「分身か…!」
レナ「『亡者の行進』(デーモンロード)!」
魔王城の地面から大量の屍が出てきた。
グラク「ちっ…思った以上の数だ。」
冬弥「…」
ステル「シバル、俺たちの攻撃、一回も当たってなくねぇか⁉︎」
シバル「予想以上だな…」
二人がかりで攻撃を続けているはずなのに、まるで効いていない。
ステル「俺たちだって成長してんだよ!」
ステルとシバルは交互に攻撃を入れた。しかし…
冬弥「『剣嵐・黒朧』。」
ステル「ぐあっ!」シバル「ぐっ!」
漆黒の渦に弾かれ、シバル達は壁に激突した。
シバル「…お前の気持ちはよく分かった。俺の負けだ…でもな、もう俺達は最初っから負けてるんだ。」
冬弥「どういうことだ。」
ステル「俺達が戦っている間に魔法部隊が特大な魔法を準備してるんだ…」
冬弥「…」
まずい、その魔法の大きさによっては魔王城ごと壊されかねない。しかしそうなると…
冬弥「お前達はどうなる。」
ステル「残念だが、俺たちは巻き添えだ。」
冬弥「!」
冬弥はステルとシバルから視線は外し、レナとグラクを見た。このままじゃ二人とも巻き添えになる。考えろ、考えろ。どうすれば全員を守れる。シールド。いや、おそらく耐えられない。まずは避難を…
冬弥「…。レナ!戦闘はやめだ!避難するぞ!」
今はこの状態から脱却することを目指す!
レナ「え?え?なんで⁉︎」
レナはグラクと戦いながら必死に応答しようとしている。言ったことは伝わっているようだ。
冬弥「もうすぐここに広範囲の魔法が打たれる!今から避難するぞ!」
冬弥がそういうとグラクの手が止まった。グラクはそのまま剣を下ろし、冬弥を見た。
グラク「…シバルとステルが教えたのか。」
冬弥「そうだ。」
レナ「そ、それって、もしかして…」
レナも気づいたのか、グラク達を順番に見る。
レナ「それじゃあ、この人達はどうするの!」
冬弥「一人残らず助けてみせる!『ワープ』!」
冬弥は王の間にいた全員を魔族領地の王都からできるだけ遠くの土地に飛ばした。その頃、ドリム王国の平原では…
魔術師達「…を代償に、我らの願いを聞き届けたまえ!『光神の裁き』!」
魔術師達が呪文を唱え終わると、魔王城の上空に光の柱が現れた。
冬弥「ここまでくれば…」
シバル「おい、なんだあれ…」
シバルが指差した方向を見ると、魔王城の上空に光の柱が見えた。その柱は魔王城を飲み込み、柱がこちらに向かうような錯覚を覚えた。
冬弥「まさか。」
ステル「こっちまで余波が来てるぞ!」
グラク「ここまでとは…」
山も森も村も、何もかもが光に飲み込まれる。ここまで来るのにさほど時間はかからなさそうだ。これより遠くは海だ。もう逃げることはできない。近くにあるのは巨大な岩、草原、崖。どうすれば、どうすれば。
レナ「冬弥、私、ここからどうにかできるかもしれない。」
冬弥「本当か⁉︎」
レナ「うん。ダンジョンを作れば…」
シバル「ダンジョンって作れるものなのか?」
レナ「魔王の力を使えば、多分。」
そういえばこの世界のダンジョンはどんなに強い攻撃でも壊れない性質があるらしい。その性質を使うつもりか。
冬弥「時間がない。やるだけやってみよう。方法は?」
レナ「なんか、魔力をバーってやって、う〜ん。やったことないからな。」
冬弥「そこは俺がサポートする。」
レナ「あっ。でも、最後にダンジョンの主となるボスを自分の体かそれ以外の仲のいい人を生贄として出さないといけないの。」
冬弥「…それは僕がやろう。」
レナ「いいの?」
冬弥「問題ない。」
レナ「とりあえず、全力でやるよ!ほら、合わせて!」
冬弥「分かった。」
僕はレナと巨大な岩に手をかざし、唱えた。
レナ&冬弥「『ダンジョンクラフト』!」
すると、岩に巨大な穴が空き、轟音が響いた。地面が移動する音、壁が作られる音。そんな音が数秒響いた後、まるで僕たちを誘うように、静寂に戻った。
冬弥「早く中に入るぞ!」
冬弥はレナ達を連れ、急いで中に入った。入り口の階段を降りた後、ダンジョンは先が見えない空洞になっていた。偶然なのか、意図的なのか。僕たちは意を決して飛び降りた。
冬弥「着地するぞ!『空雲』!」
冬弥は、地面に激突する寸前に透明な雲を出して、どうにか全員を無事にダンジョンに届けた。その直後、上からダンジョンが作られた時とは比べ物にならない轟音が聞こえた。
冬弥「…!。なんとか、耐えられたか。」
シバル「これで、助かったのか。」
ステル「危なかったぜ。」
グラク「…すまない。」
レナ「みんな無事だね!」
レナは満面の笑みを浮かべた。その後、この先はどうするか、全員で話し合った。グラク、シルバ、ステルは王都へ帰り、これまでのことを報告することにした。魔王と冬弥、ダンジョンのことについては秘密にし、「魔王は討伐した。」と言うことにしてくれた。僕とレナは、ダンジョンに残ることにした。
シバル「それじゃあ冬弥。元気でな。」
ステル「また会おうぜ。」
グラク「じゃあな。」
三人は何かを決意した様子でダンジョンを後にした。三人が別れるとき、なぜかすでにダンジョンは完成していた。魔物はいない様子だった。上層はわからないが。三人と別れた後、少し気まずい雰囲気になったのか、二人は黙り込んだ。
冬弥「…レナ。話が…」レナ「…冬弥。ちょっと話が…」
冬弥「あ、すまない。レナから…」
レナ「いやいや、冬弥も話があるんでしょ?そっちが先でいいよ。」
冬弥「…分かった。僕から話そう。」
レナ「うん。いいよ。」
冬弥「レナ…」
冬弥はレナにひざまづいて、手を差し出した。
冬弥「結婚してくれないか。」
レナ「…ふふ。」
レナは冬弥の言葉に対して微笑んだ。
レナ「もちろん。私の話も同じだったもの。」
レナはあの時と同じ微笑みを返し、冬弥の手を取った。
冬弥「…」
無機質な部屋で目が覚める。隣に愛する妻はいない。僕はすでにダンジョンの主として、悠久の時を得た。それはレナがいなくなった後も変わらず動いている。僕は周りを見る。あの時から何も変わっていない部屋。実質的にここの時は止まっていたようだ。その時、扉の向こうから足音が聞こえる。ここに人が来ることはあの時以来だ。僕の目が覚めるということはこの最下層に挑む相手が来たと言うことだ。相手が誰であろうと、僕はダンジョンの主として剣を向ける。僕は部屋の真ん中で待ち構えた。その時、扉が開かれた。
???「すごいですね。」
一人の青年が扉から来た。それに続いて、マントを着けた男、その男の執事と思われる人物。その他大勢の人物が入ってきた。
???「あの姿、もしや…」
執事が独り言を呟く。
???「グランド、こいつ知ってるのか?」
主はそれに反応し、質問をする。
グランド「はい、恐らく『漆黒の英雄』かと。」
グランドと呼ばれた執事はそう言った。『漆黒の英雄』。久しぶりにその単語を聞いた。一瞬だったが、懐かしい記憶が流れた気がした。ずいぶん久しぶりだったからか、少し頬が緩んだ気がする。
???「それじゃあ最終決戦といきましょう。」
???「ああ!」
マントを着けた男はこちらに殴りかかってきた。悪いが手加減はできない。僕は最小限の動きで避けた。
???「避けられたか!夏月!」
夏月「はい!『ヤマタノオロチ』!」
夏月と呼ばれた少年は八つの方向から攻撃を仕掛けてきた。それを全部防いだが、次から次へと攻撃が来る。氷の弾、竜の爪のような攻撃、それにブラックホールまで。捌き切るのは大変だったが、どうにか捌いた。
冬弥「…」
夏月「クラムさん、作戦があるんですけど…」
クラムと呼ばれたマントを着けた男は何か作戦を聞いているようだった。
クラム「…わかった。それ、面白そうだな。」
作戦を聞き終わったのだろう。少年と男は走り出した。その剣撃は凄まじく、早いのにも関わらず、重い。防ぐだけで手一杯だ。この世界の剣術のレベルが上がったのか。はたまたこの男達が強いだけなのか。それはわからないが、とにかくこの男達は強い。二人の攻撃に耐性が崩れる。
冬弥「っ…!」
それから、隣から剣技が飛んでいくことに気づくのはさほど遅くはなかった。
冬弥「ぐあっ!」
僕は、作戦を立てた少年に腹を貫かれて、この戦いは終わった。
冬弥「これぐらいなら、余裕で合格だな。」
腹を貫かれたのにも関わらず、僕は立っていた。理屈はわからないが、都合がいい。今のうちに情報を聞くとしよう。
冬弥「ふぅ、今はドリム王国何代目だ?」
グランド「今は…15代目ですぞ。」
冬弥「そんなに時間が経ったのか…時の流れってのは早いもんだな。」
本当に早い、確かレナの時は3代目…にしても経ちすぎじゃないか?一人を80年と仮定すると、960年か。70でも840年。すごいな。
冬弥「そうそう。お前らに一つ頼みたいことがあるんだ。」
今のうちに僕の思いを伝えておくか。叶えてくれるかは別問題として。
冬弥「また、魔族と人間が共存できる世界を作ってくれないか。」
クラム「『また』?」
冬弥「それはだな…おっと、時間か。」
冬弥は自分の体が消えていくのを薄々感じていた。時間がない。早く伝えなければ。
冬弥「話せる時間があまりないから端的に言わせてもらう。これは僕の妻の夢なんだ。俺はここから外に出られないから、お前達に任せるしかない。」
これは恐らく人生最後の賭け。これが成功しても、しなくても後悔はない。僕は答えを待った。すると…
クラム「難しいけど、まぁ面白そうだしやってみるか。」
その答えを聞いた瞬間、気が楽になった。もうこのまま、逝ってしまおう。最後に…
冬弥「感謝しよう。そういえば、僕の名前を名乗ってなかったね。僕の名前はと…」
言い切ることができたかどうかはわからない。そういえば、あのクラムという男、魔王の気配がした。順当にいけば彼は15代目か。色んなことを考えていたが、明るい光に包まれ、僕は目が覚めた。そこは、見覚えのある、しかし見たことのない国が広がっていた。
END
こんにちは!作者の灰簾です!今回の作品も楽しんでもらえたでしょうか?今回はどうにか時間を使って、できるだけ早く出しました。ちなみにこのエピソード、個人的に好きな方なので、ぜひ好きになってもらいたいです。これからはまた諸事情で忙しくなると思うので、次は一年後か、早くても半年ぐらいになると思います。次の作品も気長に待ってください!




