墜ちたマリアー飛び去る分身ー
私は、何もかも手に入れたはずだった。
賞賛、羨望、そして完璧な家族の仮面。
でも、その光の裏には、知られざる影があった。
壊れていく子供たちの姿も、愛情の届かない日々も、すべて私の選択の結果だった。
娘は、喋ることが出来なかった。
その代わり、絵で全て伝えてくれていた。
息子は、そんな娘の絵が大好きだった。
もちろん、私も娘の絵が好きだった。
母の日に書いてくれた似顔絵は、今も大事に机の中にしまってある。
私は母親失格だ。大事な大切な子供たちを亡くしてしまったのだから。
愛情を与えられなかった娘。
愛情を持てなかった息子。
2人とも、壊れちゃった。
壊したのは私だけどね。
喋れないのを、ご近所さんに見られたくなくて家から出してあげられなかった娘。
なんでもベラベラ喋っちゃうから、娘のことを言いふらさないように洗脳した息子。
可哀想なことをしたな、とは思うけど仕方が無い。
だって、痛い思いをして産んだのは私だもん。
私が可哀想な目にあうのはおかしいでしょ?
ご近所さんの前では、完璧な母親を演じていたから、
娘の事は
『娘には絵の才能があるから、自由にやらせているの。勉強は主人が教えているわ』
なんて言って、
息子の事は話題にもならなかったけ。
罪悪感はあったわよ。最初は。
でもね、あの感覚を味わったらもう戻れないわよ。
羨望の眼差しで見られるんだもの。優越感に浸っていられるんだから。
娘はどんどん賞をとっていくから、
『天才少女の母親!!』
なんて持て囃されたらもう!
本当に、あの頃は嬉しかったわ…。
毎日幸せだったわ。
今まで精一杯育ててあげたのよ?
自分の自由なんて無かったのよ?
私の幸せのためなのよ。これくらいは許されるわよね?
なんて、酷い言い訳よね。
ごめんね




