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無職日記  作者: 松茸
90/109

10/1 ガックシ

 ネット小説大賞の結果が発表されてたね。


 私のところには何の連絡も来ていないのでおかしいと思ったが、どうも箸にも棒にもかからなかったようである。私のセンスに問題があるのか、向こうさんのセンスに問題があるのか、そもそも読まれていないのかのいずれかではあるだろうが、結果としては残念無念といった感じである。


 ガックシ。


 ファンタジーものなんてブックマークも評価も少ないものはそもそもが門前払いだろうから、テンプレものがどうしたって有利になる。ファンタジーに文学的な要素を絡めようとしている私のような小説はWEB小説には向いていないのかもしれない。


 『十三魔女と偽りの聖女』……とてもいい小説ですよ。


 最終話までの構想はできてるけどなかなか文章に起こすのが難しい。今年中には終わると思うけどね、あとは完結したあとに読んでくれる人が増えればってところだろうか。


 なんか全然読まれないから、ひょっとしたら面白くないのかもしれない、と不安になることもあったが、何度読み返しても素晴らしい出来だ。私が書いたとは思えないくらいである。キャラクターは活き活きとしているし、それぞれの哲学を持って行動している。重厚な世界観と人間ドラマ。笑いあり涙あり感動ありの大名作ではないか。親子愛や人類愛といった不変のテーマを扱っているところも個人的にはポイント高い。安易な恋愛に逃げず、より大きなくくりである愛を描いている。ただの無職がよくもまあこんなスケールの大きな物語を書けたものだ。


 とまあ、ひとしきり褒めたところで単なる自画自賛である。


 やれやれ、何を寝言を言っているのやら。


 哀れな男よ。


 見るに堪えん。


 そう思われる方々も多いであろう。気持ちはわかる。私も他人がこんなことを言っていたら、能力がなくて売れないやつがなんか言ってるとしか思わない。だがあいにくと私は私のことを誰よりもよく知っている。私は自分の作品だからといって過剰に評価したりはしない。実際にこれまでいくつもの短編を書いたがそのなかに満足いくものは正直ひとつもない。


 短編なんてのは小手先でも書ける。いくらかの人生経験があり、日本語ができれば誰だって短編のひとつやふたつは書ける。努力すればそこそこいいものもできるだろう。『マッチョ売りの少女』や『エビは生きている』なんて悪くない内容だ。でも満足には程遠い。


 そんななかで私が生まれて初めて書いた長編である『十三魔女と偽りの聖女』は本当に素晴らしい出来だ。今年の初めから一心不乱に書き続けた甲斐があった。そろそろ完結しそうというところで私自身も初めて気づいたが、構造的にもとても美しい。愛が円環のように物語を循環している。ダンテの神曲の最後の文章を思い出した。


 昔、舞城王太郎の『煙か土か食い物』のラストで神曲の文章が引用されているのを見たとき、すごく印象に残ったのを覚えている。


 さて我が高き想像はここにいたりて力を欠きたり

 されど我が願いと思いとはさながら一様に動く輪のごとくはや愛にめぐらさる

 日やそのほかのすべての星を動かす愛に


 この、さながら一様に動く輪のごとく、という文章が実にかっこいいよね。

 これのせいか、愛とは円環なんだというイメージが私のなかにある。

 そしてそれは私の小説のなかにも見て取れる。


 私は自分の物語のテーマが自分でもサッパリわかっていなかった。そんなものを決めて書き始めたわけではないからだ。でもいまはなんとなくわかる。これはやっぱり愛の物語なんだと。定められた運命を愛によって乗り越えていく物語なんだと。


 もし少しでも興味を惹かれた方は是非読んでみてほしい。


 最初は少し退屈かもしれないけど……でも第一部を読み終えたときには、もう止まらなくなっているはずだ。やめられない止まらないかっぱえびせん状態になっているはずだ。みんな大好き伏線回収は数えきれないくらい用意されているし、知的好奇心を十分に充たしてくれると思う。


 たぶん。




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