9/23 なんて澄んだスープなんだ
昨日はとても涼しかったので、つい散策をしてしまった。
徘徊老人ならぬ徘徊中年である。
GOATの批評をするためにページを抑えておくクリップを千葉に買いに行ったんだけど、それだけで帰るのもなんだなと思って、そのへんをウロウロしてみることにした。そういえば千葉中央の先に背脂チャッチャ系のこってりラーメンの店があったなと思ってとりあえずはそこを目指して歩いた。
だが途中でラーメンショップに引っかかってしまい、ネギラーメンを食べた。ネギミソラーメンにしようかなと思ったけどネギラーメンが900円に対してネギミソラーメンは1200円もする。味噌入れただけで300円? さすがにそれはやりすぎだろうと思って大人しくネギラーメンにした。無職は無駄遣いはできないのである。
〇化のラーメンショップだったので、麺が浅草開化楼のもので、それが売りらしいんだけど、私はこの麺は固くて細くてラーメンショップのスープには合わない気がするんだよね。麺とスープが喧嘩してしまっているというか、調和していないというか。
失敗したかなあ、と思いながら最初に目指していたラーメン屋の前を通ると、あれ、なんか変わってる、と思った。和風ラーメン……だと? なんだこれは。私は看板を二度見する。表には立て看板が出ており、そこにはいかにも上品で女性ウケのよさそうな澄んだスープの美しいラーメンの写真がある。そんなバカな。ここは油でギトギトの、下品極まる男のためのこってりラーメンを出す店ではなかったのか?
それがまったく真逆のラーメン屋へと変貌を遂げている。
これはどうしたことだ。
こいつ、女性客に魂を売りやがった。
ギトギトでベトベトの本性を隠して、作りたくもない澄んだ黄金色のスープで女性客に媚びを売り始めたのだ。なんと嘆かわしいことだろう。店内にはしっかり女性客の姿があった。目論見は大成功している。しかしいいのか? これでいいのか? おまえの作りたかったものは……本当にこんな澄んだスープなのか?
「うるせえ! 売れりゃあいいんだよ!」
「本当にそれでいいのか?」
「いいんだ……いいんだよ。だってそうするしかねえじゃねえか……他にどうしろっていうんだよ」
「作りたいものを作る……おまえはそのためにラーメン屋になったんじゃないのかよ」
「勝手なことを言うな! おれにだって生活があるんだよ!」
「そのために主義を曲げるのか? こってりラーメンがおまえの生き様だろうが!」
「おれがどんなに頑張ったって……脂じゃ二郎系にはかなわねえんだよ……」
「おまえ……」
「へへ……情けねえだろ。見ろよ……なんて澄んだスープなんだろうな。まるで……まるで、おれの涙みたいだぜ……」
という妄想をしながら私は歩いた。
やがて千葉県庁に辿り着いた。
近くを川が流れていて、ちょっとお堀みたいになってる。川沿いの道を歩くと、スケボーの練習をしている少年がいた。そのまま歩いていくとなんか神社っぽい石階段があったので登っていくとそこは千葉城だった。亥鼻城ともいう。そう言えばこんなところにあったんだったか。
小さな城である。
ビックリするくらい小さい。ホントにおまえ城か?
誰もいない。観光客なんてひとりもいない。カラスが5羽くらいいた。それだけだ。
カラスは地面をウロウロしながら、時々何かをつついた。カーとも鳴かなかった。ただつまらなそうな顔をして、あてもなく辺りをうろついていた。
城は立ち入り禁止だった。
すぐ脇にダイチャリのステーションがあった。
景観も何もあったものではない。
千葉城……おまえはこれでいいのか? 私は尋ねた。
いいんだよ、と千葉城は言った。