9/15 ボクシング
昨晩はボクシングの試合をテレビで観ていた。
ボクシング好きの友人から電話がかかってきて、「松茸さんの家のテレビでLeminoって観れます?」と訊かれた。「なんじゃそりゃ」と私は言った。聞いたことのない名前である。でも調べたらなんか観れるっぽい。それで我が家でボクシング観戦をすることになった。
昔はボクシングの世界戦とかもテレビでやっていたような気がするが、最近はいろんな配信サービスがあって、大きなイベントはそれらに取られている。野球のWBCもネットフリックスでやるらしいね。
「最近の若いやつの家にはもうテレビとかないらしいですよ」
友人が言う。
我々の世代ではとりあえず家にテレビを置くのは当たり前だった。そして何はなくとも、テレビをつけておく。でも若者はすべてスマホで事足りるらしい。あんな小さな画面で動画を観たり、ゲームをしたりするのだ。私には考えられない。私はスマホなどなくても全然生きていける。ほぼほぼ放置している。
我が家のテレビは無職には似つかわしくない75インチの巨大なもの。私も昔はそれなりに裕福な時代もあったのだ。そのときに買ってまだなんとか残っている。映画やゲームなども大画面だと迫力がある。ボクシングも見応えがあった。Lemino自体の画質はそんなによくはなかったが――試合前は画像が粗かったり、しょっちゅう止まったりしていたが――試合中は止まることもなく、それなりの画質で観ることができた。
井上尚弥の試合だった。井上尚弥ぐらい無職でも知っている。とても有名だ。30戦無敗27KOというワケのわからない成績……昨日で31戦無敗になったが。昨日は井上はアウトボクシングに徹していたために相手をダウンさせることはできなかったが、それでも面白い試合だった。井上がとにかく速い。重量級の試合だとあまり動きがないために退屈になることも多いが、バンタム級くらいだとお互いにスピードがあるから見応えがある。
かなり強い相手であったらしいが、井上はまったく危なげなく勝ち切った。ほとんど打たれることもなく、試合後もきれいな顔をしていた。12ラウンドを戦い終えても元気だった。すごい体力だなと思う。まだ32だが、世間ではもう歳だし衰えてきている、という声もある。スポーツ選手の寿命は短い。全盛期はもう過ぎているのかもしれない。だが昨日の試合を観るかぎりでは、まだしばらく負けなそうな気はした。
私はもう44歳。
とっくに全盛期は過ぎているし、あとは衰える一方ではある。
だが歳を取っても新しいことを学ぶことはできる。
伊能忠敬は50歳のときに測量学を学び、56歳から日本地図を作ったという。
であれば、私にも何かができるのかもしれない。
そう思う無職であった。