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無職日記  作者: 松茸
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9/8 モノを売るより人を売れ

 デパートの外商の動画を観ていた。


 外商とは店舗での販売とは異なり、百貨店などが高額商品を頻繁に購入する優良顧客(法人や富裕層)の元を直接訪問し、商品の販売や個別サービスの提供を行う営業活動のことである。


 そのルーツは江戸時代、呉服店が大名や武家屋敷を訪問して行った商いから。現在のデパートは元々は呉服店だったんだよね。いまは知らないひとも多そうだけど。若者はあんまりデパートなんかに興味はないかもしれない。みんなドンキに行く。


 松坂屋の名古屋店の特集の動画を観ていたが、年間売り上げ1269億円の半分を外商が占めているという。デパートは一部の富裕層によって支えられているのだ。僕の売り上げ目標は年間で4~5億です、などと社員が言っている。意味の分からない数字ではあるが、富裕層は我々一般庶民とは金銭感覚が違う。こんな目標も十分達成可能なのだという。


 新人の外商のドキュメンタリーだったが、上司はこんなことを言っていた。


「モノを売るより人を売れ」


 この意味するところは、顧客と信頼関係を築けということだ。どんな商売でもそうかもしれない。信頼できる相手からモノを買いたい、説明してもらいたい、というのがやはりある。この人が勧めるのであれば間違いはないだろう、買って後悔はしないだろう、と思わせなければならないのだ。


 これは私のいた薬剤師の世界でも同じだった。


 患者にアドバイスをするにも、それが信頼できる相手からであるかどうかで受け取り方も変わってくる。同じようなことを言っても、誰が言うかでその効果が違うのだ。だから本当にいい薬剤師になりたければ、患者に信頼される薬剤師を目指さなくてはならない。


 だが残念ながら現実は流れ作業でマニュアル通りの対応しかできない薬剤師ばかりだ。これでは世間で批判されるのも当然だろうと思う。


「今日はどうされたんですか?」


 薬の説明の時にいきなりこう訊く薬剤師がいる。多分ほとんどの薬剤師がそうだ。そう切り出すことに何の疑問も抱いていない。患者は当然こう思う。


「いや、病院で話しただろ。また言うのかよ。おまえ医者か?」


 病気で苦しんでいる患者に向こうから病状をしゃべらせることを当然と考えている薬剤師が多いのは恐ろしいことだ。実に傲慢な態度であり、患者へのいたわりの気持ちや敬意が欠けていると捉えられても文句は言えないだろう。


 薬剤師は薬が適正に処方されているか、処方箋に記載されている薬が病状に合っているかを確認する義務がある。だからこのような物言いになるわけだが、もう少し訊き方を工夫すべきだろうと思う。


 私ならこう訊く。


「今日はこういった効能の薬が処方されています。そういう症状がありますか?」


 これは咳止めですね、咳出ますか? 大変ですね。熱もある? 解熱剤も出てますよ。これは頭痛にも効きますよ。解熱鎮痛剤っていうくらいですからね。熱は必要以上に下げすぎることはないんですよ。痰も絡む? 痰切りは一日三回ですね。いますぐ飲んじゃっていいですよ。水持ってきますか? 次は夕食後に飲んでくださいね……などと会話をしながら説明を加えていく。こうすれば患者もストレスなく説明を受け入れられる。


 だが大抵の薬剤師はそうはしない。


 薬剤師「今日はどうされましたか?」

 患者「今日はこういった症状で……」

 薬剤師「そうですか(PCカタカタ)。では今日の薬の説明をします。この薬は~」

 患者(いや、なんで病気のこと訊いた?)


 こんなんばっかりだ。


 患者に病気の説明をさせるのは薬歴に記載する内容が必要だからであって、ほとんど自分たちの都合なんだよね。処方内容の確認というのは薬剤師の義務なわけだけど、なんかそれを権利みたいに思っているやつが多いから、態度も偉そうになるんだよね。困ったもんだ。


 話がそれてしまったが、外商の新人の子はドキュメンタリーの最後に「日本一の外商になりまぁす!」と目を輝かせて夢を語っていた。


 夢があるのは素晴らしいことだ。

 頑張ってもらいたいと思う。



 今日は無職なのに仕事の話をしてしまった。


 よくないよくない。気を付けよう。




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