8/31 赤ずきん
昔々、赤ずきんはおばあさんのお見舞いに出かけました。
悪いオオカミがやってきました。
「お花をつんできたら」
オオカミは言いました。
「いいわね」
赤ずきんは寄り道をしました。
その間にオオカミはおばあさんを食べてしまいました。
オオカミはおばあさんのふりをして待っていました。
赤ずきんは不思議に思って聞きました。
「おばあちゃんのお耳、どうしてそんなに大きいの?」
「おまえの声を聞くためさ」
「どうしておめめがそんなに大きいの?」
「可愛い顔を見るためさ」
「どうしてお口が大きいの?」
「それはね、おまえを食べるためさ」
ぱくり。
オオカミは赤ずきんを一口で飲み込みました。
そして居眠りを始めました。
猟師が通りかかりました。
「大変だ、誰かがオオカミに食べられた」
猟師はハサミでオオカミのおなかを切りました。
ぴょこん。ぴょこん。
おばあさんと赤ずきんが出てきました。
「もう寄り道はしないわ」
赤ずきんはおばあさんと約束しました。
めでたしめでたし。
☆
いかがだろうか、これが有名な『赤ずきん』のお話である。
動画になっているものを文字に書き起こしてみた。
よくよく考えると、これは相当に変な話である。
どこからツッコめばいいのだろうか。ツッコミどころが多すぎる。
この締め方だと、教訓は「寄り道をしない」ということになるわけだが、そんな話だったのか? お見舞いのための花を摘むのであればそれは称賛されるべき行為のような気がするが、ここではそのやさしさを出したためにおばあさんが食べられてしまうという不条理な展開になっている。
そもそも最初にオオカミに遭遇した時点で赤ずきんはアウトだと思うが。オオカミはその時点で赤ずきんを食べて、そのあとゆっくりおばあさんを食べればよかったのではないだろうか。赤ずきんものんきに会話している場合ではない。「いいわね」じゃないでしょ。仲良しか?
猟師が通りかかりましたも意味がわからない。
おばあさんの家に勝手に入ってきたのか? 不法侵入では? オオカミよりこいつのほうが危険ではないのか? それに猟師のくせになぜハサミを使うのか。丸呑みされてるのに「大変だ、誰かがオオカミに食べられた」ってなんでわかるの? そもそもオオカミは人間を丸呑みしないよね?
このように赤ずきんには謎が多すぎる。
教訓があるとすれば、それは「物語に整合性なんか求めるな」ということだろうか。キッチリ設定を詰める必要などないのだ。なんとなく雰囲気で、勢いで誤魔化してしまえばいい。こういう思いきりのよさが創作者には求められているのではないだろうか。
無職はそう思った。