8/29 みにくいアヒルの子
小学校で先生が『みにくいアヒルの子』のお話をしていました。
先生の話を子供たちは大人しく聞いています。
「みにくいアヒルの子は……実は白鳥だったのです!」
先生はそう言って話を締めくくりました。
しかし思ったような反応がありません。みんなキョトンとしています。
あれ、伝わってない……先生はもう一度言います。
「みにくいとされていたアヒルの子は、なんとなんと、あの美しい白鳥だったんです! ビックリだよね!」
子供たちは相変わらずポカン顔です。
「あれ……みんな、白鳥は知ってるよね?」
先生は不安になって子供たちに聞きます。
「知ってるよ」
子供のひとりがつまんなそうに言います。
「だからどうしたの、先生?」
「えっ?」
「このお話、何の意味があるの?」
「いや、だから、その、見た目で人を判断してはいけないっていう、そういう意味が込められてるんだよ」
「それおかしくない?」
子供は言います。
「だって、白鳥が評価されるのって結局見た目じゃん」
「え……」
「ルッキズムじゃん」
どこで覚えたの、そんな言葉。
「ルッキズム! ルッキズム!」
「先生は差別主義者なの? がっかり!」
「教育者がこんなことでは困ります!」
子供たちは騒ぎ立てます。
騒ぎはどんどん大きくなって、収拾がつかなくなります。
学級崩壊です。
先生は校長に呼び出され、叱られてしまいます。
「いまは令和なんですよ。差別的な童話には気を付けてください」
そんな……
「どうしてだよ、おかしいよ……」
一週間の謹慎を言い渡された先生は、その晩ストロングゼロの500ml缶を3本空けたそうです。
これが令和という時代なんですね。
くわばらくわばら。