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無職日記  作者: 松茸
52/110

8/24 ニンバス

 最近またコロナが流行ってるらしい。


 ニンバスとかいう新しい変異株が。


 最大の特徴はカミソリを飲み込んだかのような強烈な喉の痛みです、とテレビで紹介されていたが、いや、カミソリ飲み込んだことあるのか? そのことが気になって情報が全然頭に入ってこなかった。


 いま思えば、コロナは本当にすべてを変えてしまった。


 私のいた薬局業界もコロナで崩壊した。


 問題の本質はコロナではないんだろうけど、きっかけを作ったのは間違いなくコロナだ。外国から原材料が入ってこない影響で薬が入荷しなくなって、薬局なのに薬がないとかいうワケのわからない事態に陥った。でも薬局も製薬会社も本腰入れてその問題を解決しようとはしなかった。卸はコロナと働き方改革を理由に配送の頻度を減らし、毎日2回来ていたのが1回になり、週末はもう対応しなくなった。


 恐ろしいことに薬不足はいまでも続いているという。入れ替わり立ち替わり、あらゆる薬が欠品となってまったく改善される見込みもない。そもそも誰も改善しようとも思っていない。そんな状況が永遠に続くであろうことが我が国の医療業界の悲劇である。


 誰も彼もが自分たちのことしか考えておらず、自分たちの利益を守るためなら患者などどうなっても知ったことではない。それが企業というものの本性なんだよね。普段はきれいごとを言っていても、いざとなったらそんなものは簡単にひっくり返される。それを忘れてはいけないし、そんなことで失望してもいけない。元々そういうものなんだから。


 いまの薬剤師はすごく可哀想だなと思う。


 薬剤師って薬がなければ何にもできないからね。何をするにもまずは薬が確保できてからなんだよ。いろんな選択肢があるからこそ、薬剤師の能力も発揮できるし、存在価値もある。なのに薬を選ぶ選択肢がないのであればもうそれは薬剤師でなくてもいいじゃない。患者もたぶんそう思っているだろう。


 コロナが流行りだした頃はもう遥か昔のような気がする。


 当時は薬を直接家に届けたりとかしてたんだよね。


 私も自転車でキコキコと届けた記憶がある。困ったのがそこが巨大な団地でね。どこの部屋だよ、みたいな。迷子になって、患者さんに電話して、「近くまで来てるんですが……」と言うと、その患者さんはベランダから身を乗り出して手を振ってくれた。いや元気やないかーい! すごいいい笑顔。ホントにコロナかな? 


 あの頃は何もかも手探りだったから、現場は混乱していた。従業員がコロナになったら一週間くらい休まないといけないとか。大変だったよね。人はいないわ、薬はないわで毎日何をやっているのやらという感じだった。ワイもコロナになったら休めるのかなあと思ってたけど結局1回もならなかった。意外と身体が丈夫で困る。


 しばらく耐えたらまた元に戻るのかなと淡い期待を抱いていたが、そんなことはなかった。失われたものは失われたままで、ただそのままだった。コロナはあれだけ大騒ぎして、結局はインフルエンザと同じ扱いになってる。実際はそこまで脅威じゃなかったってことだよね。5類感染症とかいうやつに分類される。これは今年の4月から風邪もそうらしい。つまりコロナは風邪みたいなものということだ。


 にもかかわらず、コロナのせいで変化したことはそのままになっている。


 薬の流通もそうだし、飲食店の営業時間とかもそうだね。昔は飲食店も深夜1時2時くらいまでやってるところが結構あったけどね、そういうところもコロナで22時や23時までに営業時間を変更してしまった。そしてそのままになっている。そのほうが店だって楽だからね。


 なんかみんな免罪符のように使うんだよね。


 コロナだとか、働き方改革だとかを。


 いままで普通にやってきたことをやらないための言い訳として。


 でも昔は「コロナだから」って言われたら「まあしょうがないか」となってたけど、もう化けの皮がはがれちゃってるわけだからね。コロナを理由に下げたクオリティは元に戻すべきなんじゃないかと思う。


 無職はそう思った。




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