10/14 トレパクとは
ここ数日、ネットではイラストレーター江口寿史のトレパク疑惑で盛り上がっていた。
トレパクとは他人の作品や写真をトレース(なぞる)して盗用するという意味である。
いまは米倉涼子の薬物疑惑が騒がれてるけど、毎日毎日いろんなニュースが出るなと思う。毎日誰かしらがどこかでやらかしていて、それがニュースとなってみんなの一時の楽しみになる。結局はどれも私たちにとっては消費するものでしかない。どうせすぐに忘れてしまう。ただ当の本人はそういうわけにはいかない。やらかしの内容によっては一生を左右するようなことにもなりかねない。江口寿史のトレパクもそうなりそうだ。
最初に話題になったのは、商業施設ルミネ荻窪の広告用ポスターのデザインが、インスタの誰かの写真を無断でトレースして書いていたというもの。こういうのは基準がよくわからないのだが、この程度なら別にいいんじゃないかと思ってしまう。女性の横顔なんてそんなに唯一無二というわけでもない。これくらいであれば参考にしたで通ると思ったのだが、その後ボロボロと出てくるものは擁護のしようもないあからさまなトレパク作品であり、ほとんどすべての作品に元ネタが見つかってしまっているという状況だ。逆にいままでよくバレなかったなと感心するレベルである。
トレース自体は悪じゃないよ、という声もある。趣味でやってるならそうだろう。だがトレースしたものを自分の作品として世に出すのはアウトだろう。完全オリジナルみたいな顔をしてそれでお金をもらってるわけだから。そういうのってプロとして失格ではないだろうか。
プロの作品はオリジナルだから価値がある。女性の立ち絵の構図から服装から色使いから、全部トレースして自分の作品ですは通らないだろう。それを明言しているならともかく、隠してやってたのは非常に悪質というか、不誠実な行為だと思う。これだけバレたら二度と仕事は来ないと思うが、これまでやってきたことの報いだから仕方ないだろう。
オリジナルであるということは難しい。あらゆる芸術は模倣から始まると言われているが、最初は誰だって先達の作品を真似て作る。絵だろうが小説だろうが音楽だろうがそれは一緒だ。でもその中で自分らしさを見つけていけなくてはいけない。そうでないと自分が作品を作る意味がなくなってしまう。
パクリかどうかというのは判断が難しいところだ。アイデアに関しては、同じ人間のやることなのだから似通ることはあるだろう。オマージュという言葉もある。これは尊敬する作家や作品に影響を受け、敬意を込めてそのスタイルや要素を参考にしながら、独自の解釈や創造性を加えて新しい作品を作ることであるらしい。呪術廻戦とかはブリーチやハンターハンターのオマージュが多い。こういうのはあえてわかるように描くからそんなに批判されることもない。対してパクリというのはネタ元を隠そうとする意識が働く。だから見つかったときに印象が悪くなる。
江口寿史のは他のイラストレーターのパクリというわけですらない。古い雑誌の写真なんかをバレないようにトレースして使ってるんだから、芸術とも言えない。ある種の工芸作品みたいな感じだ。それならそれで、そういうスタイルなんだと言ってしまえばよかったのに。アンディ・ウォーホルだってマリリン・モンローやスープ缶みたいなのをそのまま書いてアートだと言い張ってるわけだから、売り出し方によっては日本のアンディ・ウォーホルになれる可能性もあったのではないだろうか。
まあ何はともあれ残念な話で、江口寿史のファンはショックだろう。いろんなところで見かけるから、かなりの大御所だったはずなのに、今後は完全に消え去ってしまいそうだ。調べたらもう70歳近いらしい。引退してもいい年齢だろう。これまで何十年もバレないでいたことがすごく幸運なんじゃないかと思う。その幸運を噛みしめて、潔く業界から身を引いた方がいいのではないか。
無職はそう思う。